文明のターンテーブルThe Turntable of Civilization

日本の時間、世界の時間。
The time of Japan, the time of the world

ジョブズ氏は晩年、「きょうが人生最後の日だったら」と自問自答し、重大な決断をしてきたことを明かしている。 

2022年07月06日 17時02分43秒 | 全般

以下は今日の産経新聞に、世界の一流が知る和の本質、と題して掲載された連載コラム「茶聖あり」からである。
本記事を読んだ私は以前に発信した幾つかの章を思い出した。
前章にてそれらの中から数章を発信した。
見出し以外の文中強調は私。 

千利休が大成した茶の湯の精神は海外のビジネス界をも魅了している。
外資系IT企業の日本オラクルは東京・青山の本社ビル最上階に茶室と日本庭園を設置し、精神性を体現する。
茶室「聚想庵(しゅうそうあん)」に続く石畳に足を踏み入れると、騒がしい都心とは別世界の静寂が広がり、手水鉢に落ちる水だけが音を発する。
「アメイジング(素晴らしい)」。
新型コロナウイルスの感染拡大前、茶室では取引先の外国人らが驚きの声を上げていた。

幾度も重要な商談の舞台となり、ビジネスを成功に導いた。
平成20年の自社ビル建設時に、日本文化に造詣が深い米オラクルのラリー・エリソン最高経営責任者(CEO、当時)の意向で設置。
日本オラクルのディレクター、瀬谷一也さんは「社員がおもてなしの心を学ぶ場所としてもフル活用している。庭の天然のコケも常にいい状態を保たせており、箱モノをつくって終りではない」と語る。
「茶室では亭主と客が同じ目線で向き合い、茶を注いだ茶碗を介していろいろな話をする。お互いを尊重しながらいい時間を過ごすことができる」と話すのは、茶室を監修した遠州茶道宗家の小堀宗実(そうじつ)さん。
わびさびの精神に、美しさや明るさ、豊かさを加えた「綺麗さび」を掲げる遠州流は利休没後の江戸初期に誕生。
創始者の小堀遠州は、利休の弟子で武将の古田織部に師事した。
宗実さんは遠州流について「思いやりやもてなしの心を大切にする今日の茶道の基礎となっている」と説明。
庭師でもあった遠州の影響がみられる桂離宮(京都市)を好んだエリソン氏の要請で日本オラクルとの関わりが始まったという。 
米アップル創業者の故スティーブン・ジョブズ氏も茶の湯の精神性に魅せられた。
電話とパソコンを融合したiPhone(アイフォーン)をはじめとするジョブズ氏の生み出した製品は、世界の常識を覆し、生活を変えた。 
「洗練を突き詰めれば簡潔になる」(ジョブズ氏)とは、茶道の精神である禅に通じる。
ジョブズ氏は若き日に禅に出合ったことで自身の哲学や美意識に大きな影響を受け、永平寺(福井県)で出家しようとしたエピソードも残る。 
海外ビジネスマンの心をつかむ茶の湯の本質とは何か。
海外の要人に茶の機会を提供してきた茶道家の竹田理絵さんは著書の中で、茶道の基本精神は「和やかな心、清らかな心、動じない心」を意味する「和敬清寂」で、「茶道の修練によってその教えを心に刻み、人間として成長しようとする日本独特の道」と指摘。
「明日をも知れぬ武将が、茶の湯によって、己と向き合い、邪念を払って心を整えた」とする。
これは生き馬の目を抜くビジネスの世界とも共通しないか。 
竹田さんは利休の教えを踏まえ、「一日一日を大切に生きること。それが茶道の精神の重要な部分だ」とした。
ジョブズ氏は晩年、「きょうが人生最後の日だったら」と自問自答し、重大な決断をしてきたことを明かしている。 
世界を席巻しつつある茶の湯。
歴史家の加来耕三さんは、ロシアによるウクライナ侵攻などで世界が不安に包まれている現在だからこそ、自己を律し、心の平穏をもたらす茶道の精神はさらに広がるとみる。 
その上で、「茶道に対する世界の理解はもっと深い。『点前をやれば外国人は喜ぶ』ではなく、利休の茶の湯が非常に先鋭的だったことを忘れてはならない」と強調。「日本人が茶の湯の本質を理解し、時代に合う形で世界に発信しなければ自国のものでなくなるかもしれない」と警鐘を鳴らす。

 

 

 

 
 
 
 
 


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