以下は、日本が知るべき米国の対中強硬姿勢、と題して、今週号の週刊新潮に掲載された、櫻井よしこさんの論文からである。
櫻井よしこさんは最澄が定義した国宝である。
国民栄誉賞は彼女にこそ与えられなければならない賞である。
以下は前章の続きである。
打つ手がない
香港金融市場が中国経済に持つ意味が限りなく大きいのは周知のとおりだ。
2019年1~8月の統計では外資による対中投資の70%が香港経由で行われた。
18年には中国企業は香港金融市場で1000億ドル(10兆8000億円)の資金を調達した。
香港金融市場の締め上げは米企業にとっても痛手だが、米政府は敢えてそこに踏み込んだ。
対中取引から得る現在の利益よりも、中・長期的視点に立った国益を重視した。
この米政府の政策を日本も十分、勘案しなければ米国市場で日本企業は生きていけなくなりかねない。
7月8日、ポンペオ氏は尖閣諸島に具体的に言及して「世界は中国の弱い者苛めを受け入れない」と断言した。
世界中で進行中の領土紛争に関して、アメリカが初めて中国の主張を否定し、非難した。
中国の領有権の主張は国際法の根拠を欠き、事実関係においても間違っているとして、日本を含めて中国の侵略を受けている国々の側に立った。
7月24日には米ヒューストンの総領事館が閉鎖され、8月6日にはトランプ大統領が中国系動画アプリ「TikTOk」を運営するバイトダンスとの取引を45日後から禁止すると発表した。
13日にはファーウェイなど中国のハイテク企業5社の製品を扱う企業を、米政府調達から外すと発表した。
これら中国のハイテク企業は19年に米政府調達から外されていたが、今回は民間企業にも中国製品の排除を迫り、米国政府か中国企業かと選択を迫った。
8月9日には厚生長官のアザー氏が台湾を訪れ、蔡英文氏を大統領と呼び、台湾を独立国として扱った。
米国はどこまでもやる気である。
対して中国は反撃らしい反撃をしていない。
中国政府から発信される対米メッセージはひたすら対話の呼びかけである。
彼らには当面打つ手がないのである。
日本は米国と共に、自由世界の中心軸を目指し、中国が私たちの価値観を受け入れざるを得ないところまで頑張るのだ。
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