高山正之は硬骨漢であると私は書いた。
その彼の本を友人が勧めてくれた。
習近平よ「反日」は朝日を見倣え 高山正之、新潮社1400円
以下は、117ページから120ページまでからである。
朝日が言う“コスタリカに倣え”の嘘
朝日新聞の嘘は吉田清治だけではない。
周りの碌でもない国が拉致とか領土侵害とか深刻な悪さをする。
いかに身を守るかを考えていたら、朝日は小国コスタリカを見倣えと言い出した。
「この国は憲法で軍隊放棄を規定し、その分を教育に投資し、おかげで中南米では最も安定した国の一つになった」「隣国にも働きかけて今ではパナマも軍隊を廃止した」
憲法九条は決して間違っていない。
ドナルド・キーンの言うように「日本の誇り」だと。
だから中国朝鮮をたしなめようなんて思ってはいけない。
むしろコスタリカと同じに平和外交に生きるのが望ましいとか。
この「コスタリカを手本に」がそっくり嘘なのだ。
その嘘を吉田清治のケースと同じに藤森研や伊藤千尋など代々の特派員が20年近く書き継いできた。
彼らは日本に戻ると各地の「九条の会」から講演を依頼され、小金を貯め、退職後は専修大教授になって教壇でまた同じ嘘を垂れる。
吉田清治の嘘を支えた清田治史が帝塚山学院大教授になったように朝日では嘘書き記者の老後保障は確立されている。
彼らの話は「1949年に内戦を収めたフィゲレスが自ら率いた軍隊を解散し、憲法にその廃止を定めた。民主主義に軍隊は不要だからだ」で始まる。
それが嘘なのだ。
例えばホメイニ師はイラン国軍が服従したのでイスラム革命を成就させることができた。
政権を握った彼がまずやったことがその国軍の粛清だった。なぜなら軍はクーデターを起こせる。
政権を握る者にとって最も危険な存在だからだ。
フィゲレスも同じ考えだった。
次の誰かが自分にクーデターを起こさないよう、軍を廃止したというのが正解だ。
あの辺は米国の裏庭。
よその国が国境を侵犯したら米国が許さない。
そういう状況を見込んだ小国の悪知恵と言える。
では軍を廃したら治安はどうなるか。
「僅か1万人余の警官がそれにあたる」と藤森は書く。
「僅か」が嘘だ。
人囗比率でみれば警官の数は日本の自衛官の倍近い頭数になる。
おまけに攻撃ヘリにロケット砲、ミサイルまで装備する。 有事には徴兵もできるから国際戦略研究所(IISS)は「準軍隊」と表現する。
つまり「クーデターを起こすには今一歩の車隊」という意味だ。
もっと笑わせる嘘が「近隣の国々にも軍隊の不保持を訴え、パナマなどいくつかの国でそれを実現した」という部分。
パナマはブッシュ親父の時代の1989年に米軍が奇襲をかけてきて、占領されてしまった。
奇襲の目的はCIAで昔働いていて米国の秘密を知る実力者ノリエガ将軍の拉致だった。
米軍は将軍を捕まえると、パナマがこの不作法な米国の侵攻に怒って武力報復に出ないよう、パナマ国軍そのものを解体してしまった。
広島長崎の報復権を留保する日本から軍隊を取り上げたのと同じだ。
それを藤森はコスタリカの平和外交の成果に仕立ててしまう。
憲法九条はそういう嘘でしか補強できないということだろう。
この稿続く。