12年度予算案 関連支出24%増
【ジャカルタ=野沢康二】高成長を背景に、インドネシア政府が懸案の電力・交通インフラ整備を加速しようとしている。
16日発表の2012年度(12年1~12月)予算案ではインフラ整備を中心とした投資的支出を過去最高の168兆ルピア(約1兆5000億円)とし、前年度の当初予算比で24%増やした。
欧米や中国で景気減速懸念が強まるのをよそに、12年の成長率は6・7%への加速を予想。持続的成長への基盤整備を急ぐ。
12年度予算案の総額は過去最高の1419兆ルピアと、前年度の当初予算に比べ15%増額。税収は同20%増の1019兆ルピアに膨らむ見通し。財政赤字の見込みは126兆ルピア。
赤字額は同1%増だが、国内総生産(GDP)に占める比率は1・8%から1・5%に低下する。インドネシアでは、電力不足や物流インフラの整備の遅れが、海外企業の投資誘致の障害にもなっていた。
政府は今年5月、14年までに民間投資を含めて総額1千兆ルピア超のインフラ整備計画「経済開発加速・拡大マスタープラン」を作成。12年度予算案で同計画を実行に移す。海外企業にとっては事業機会ともなる。
鉄道はジャワ、スマトラ、カリマンタンの各島で延長し、計150キロ延ばす。
道路もジャワ島南部で180キロ分を新設する。ジャカルタ首都圏ではジャカルタ中心部と南部を結ぶ初めての地下鉄建設を急ぐほか、国際空港や港湾の整備・拡充などを手掛ける見込み。
地下鉄建設には日本が協力、既に日本工営が設計を手がけている。設計終了後に円借款を使った第1期工事の入札が実施予定で、一部は日本企業が受注する見通しだ。
電力分野では、発電容量を計1千万キロワット増やす計画を12年度に本格スタートさせる。総額は320億ドル(約2兆5千億円)以上で、数年間で完成をめざす。
うち約半分は独立系発電事業者(IPP)とする。同国でのIPP事業には既に丸紅や伊藤忠商事などが参入。政府は増設分ち海外勢の参加を期待している。インフラ事業を円滑に進めるため、土地収用制度の整備なども急ぐ考えだ。
予算案は11年の実質国内総生産(GDP)の伸び率を6・5%、12年を6・7%と想定。欧米の財政不安や中国、インドの成長減速にもかかわらず、10年実績の6・1%から加速するという強気の予測を立てた。
ユドヨノ大統領は「世界経済に不透明感が漂う中で、投資、輸出、個人消費にけん引されている」と自信を示した。
一方、財政健全化に向け、補助金の抑制に取り組む姿勢もみせた。補助金の合計額は209兆ルピアと前年度の当初予算に比べると11%増えるが、前年度補正予算時と比べると12%減。
燃料価格上昇下でも電力料金を据え置くために投じてきた補助金の急増を防ぐため、12年4月までに電力料金を10%引き上げる方針だ。