文明のターンテーブルThe Turntable of Civilization

日本の時間、世界の時間。
The time of Japan, the time of the world

科学と技術 江戸の智恵 東照宮五重塔…日経新聞7月31日15面より

2011年08月07日 17時15分16秒 | 日記
東照宮五重塔

五重塔は日本の代表的な木造高層建築物。1818年に再建された日光東照宮五重塔
(全長約35メートル)は心柱(しんばしら)が塔の本体からつり下げられているのが特徴だ。

心柱とは塔の中心に据える柱で、上部の相輪を支えている。東照宮五重塔より古い塔は心柱を地面に埋めて立てたり礎石の上に立てたりした。

つるす理由は雨漏り防止だ。五重塔は木材の収縮と重みによって塔本体が徐々に下がるが、心柱は縮みにくい。

このため、相輪の根元付近と一番上の屋根に隙間が生じる。心柱をつり下げれば本体と一緒に下がり、隙間はあかない。心柱をつるす発想は積年の課題の解決策の1つ。

東照宮五重塔は「いわば木造の五重塔の最終形態」と東照宮の神職、山作良之さんは説明する。
五重塔は地震に強いといわれる。謎解きの研究は今も続くが、似たような建物が登場した。

東京スカイツリーは筒状構造物を中心部に備え、耐震性を持たせたという。。
平成の塔も”江戸の塔”も東日本大震災の揺れに耐えた。

あんな、おんぼろ、脅威になるはずがない 中国 空母保有…週刊朝日8月12日号より

2011年08月07日 16時55分35秒 | 日記
軍事評論家 黒井 文太郎

軍事大国への道をひた走る中国が、7月27日、初めて空母保有を認めた。中国の政府系メディアが「空母保有は中国人の夢だ」などと国威発揚を前面に押し出すのは、高速鉄道事故の批判を封印したいのだろう。

空母は、中国が90年代にウクライナから購入した全長300メートルの旧ソ連製「ワリャーク」を改修したもので、この夏に就役させることは軍事関係者の間で知られていた。

日本政府は翌28日に枝野幸男官房長官が懸念の意を表明したが、今回の中国政府の発表は、何ら驚くべき話ではない。ワリャークの船体は、90年代初頭に旧ソ連が完成度75%の段階で資金難に陥り、長らく放置されていたもの。機関部分や航空機運用関連蟻装、電子機器などがすべて撤去され、スクラップ同然だった。

それを、「テーマパーク兼高級ホテルとして使う」との名目で、マカオの中国系会社が98年に破格の安値2千万ドルで購入し、4年後に中国海軍に転売した。

だが、この分野での中国の技術は未熟で、中国版ワリャークは、旧ソ連版とは程遠い代物なのだ。

空母艦隊を実際に運用するには、空母を守る船(防空・対潜水上艦艇、潜水艦)や兵站を担う船(補給艦、輸送艦)なども必要だ。また、艦載機部隊も編成しなければならない。

艦艇や艦載機には定期的な整備が不可欠だから、最低でも2個艦隊は必要になる。空母艦隊を作るには、大雑把に見積もって、空母建造費が約20億ドル、その他の艦艇の整備運用費が約50億ドル、艦載機整備運用費が約30億ドルと、計100億ドルかかる。

2個艦隊なら200億ドルだ。いくらバブリーな中国軍でも、おいそれと出せる金額ではない。とはいえ、今回のワリヤークで、中国海軍の悲願「空母保有」を達成したのは事実だ。

中国海軍が空母保有を視野に入れたのは85年にオーストラリア海軍の退役空母を購入し、構造研究をしたのが始まり。現在、上海で国産空母2隻を建造中だが、本格的な運用は20年以降とみられる。

空母艦載機は、ロシア製「Suー33」をベースに自主開発中の「殲15」(J-15)戦闘機。開発は進んでいるようだが、性能は米軍の艦載機に比べるとかなり落ちる。

中国が空母を持つのは。
「西太平洋の軍事的覇権を米太平洋艦隊から奪いたいから」(政府関係者)と言われるが、海軍力や技術力から見て、中国が仮に空母艦隊を運用したとしても、少なくとも今後半世紀は米海軍に太刀打ちできない。

仮に中国空母艦隊が実戦配備されたとしても、アメリカと同盟する日本や台湾を脅かす存在には、なりようもないだろう。

7月28日付の中国軍機関紙『解放軍報』は、「国連安保理常任理事国の中で、空母を保有していないのは中国だけ」と言及した。要するに中国の最大のモチベーションは、「大国たるもの、空母を持っていないとカッコがつかない」ということなのだ。

そんな”メンツ”のための中国空母を、いちいち怖がる必要はない。 (寄稿)

「ポスト・マネタリズムの金融政策」翁 邦雄著…日経新聞7月31日19面より

2011年08月07日 15時55分36秒 | 日記
▼おきな・くにお 51年生まれ。東京大卒。74年に日本銀行入行。同金融研究所長などを歴任。現在は京都大教授。著書に『金融政策』などがある。

バブル崩壊後の日銀の苦悩を回想 ≪評≫神戸大学教授 地主敏樹

文中黒字化は芥川。

バブル崩壊後の困難な時期、日本銀行の政策の理論的支柱を提供すべく苦闘したエコノミストによる回想録プラス政策論である。この間の金融政策運営に関心のある人なら、必読だろう。期待に違わず、味読すべき論点が満載である。

書名から惹き付けられる。「今更、マネタリズム?」と訝る人が多いだろうが、著者はシカゴ大学で訓練されたエコノミストである。

一時期の日銀の政策運営がマネタリスト的であると評されたことも想起して頂きたい。著者は当時の内部観察に基づいて、その評判を否定してみせる。

マネタリズムの指導者、ミルトン・フリードマン教授の晩年に関する叙述も興味深い。
しかし、何といっても政策立案に関わった時期の叙述が最大の注目だろう。

バブル崩壊直後の著名な「岩田―翁論争」は、マネタリーベースの調節可能性が焦点となり、「短期では翁氏の不能論、中長期では岩田氏の可能論」という結論に落ち着いたと評者は記憶している。

それについて著者は、金融緩和の過不足という本質論から外れて「議論が矮小化され」たと、惜しんでいる。

バブル形成期については、日本の引き締め不足に原因があるとする海外勢からの批判を、消費税引き上げを無視した粗っぽい議論として退けている。

日本は先進諸国が陥っている低インフレ、デフレ状況に最初に直面し、新たな政策手法を編み出すなど、日銀は「孤高」の戦いを強いられることになった。

クルーグマンなど、世界の名だたる経済学者から提起された日銀批判の論に対しても、著者は粘り強く反論、日銀の立場の堅持に力を尽くした。

その結果、金融政策が経済の撹乱要因となるといったような大過が防げたのは間違いない。ただ、余りに慎重第一の政策運営がインフレ期待の低下につながり、デフレを常態化した面も否めないのではないか。

米国のニューディール政策は個々の政策ではなく、常に挑戦し続けた点こそが高く評価された。翻って日銀の戦いはどうだろう。歴史の中で高く評価されるようになるのだろうか。思索を誘う書物である。

「ヒトラーの最後」 エレーナ・ルジェフスカヤ著…日経新聞7月31日21面より

2011年08月07日 15時39分50秒 | 日記
女性軍事通訳による独ソ戦記録  京都精華大学教授 池田 浩士

映画も小説も各種のドキュメンタリー作品も、同工異曲の「ヒトラーの最期」であふれ返っている。本書の日本語訳にまでこの題名が選ばれたのは、はたして本書にとって幸せだったのだろうか。

なぜなら、「軍事通訳の回想」という地味な原題をもつこの一冊は、』ヒトラーの死と彼の遺骸の行方をめぐる関心などよりも遥かに重く深い内実によって、いたるところで読者をとらえて離さないからだ。

著者は、一九一九年生まれのロシアの女性作家である。ナチス・ドイツがソ連に侵攻したとき、二十三歳の彼女はドイツ語の通訳を任務とする中尉として軍に配属された。敵の指令文書を解読し、捕虜の尋問の通訳をするためである。

敵兵や住人たちについての最初の印象深い記述は、モスクワ攻防戦の帰趨を決する要衝となったルジェフという町を舞台としている。一年半にわたってドイツ軍に占領されていたこの町を、彼女が属するソ連軍部隊が奪還した。それがペルリン進攻への転機となった。ルジェフスカヤという彼女の筆名は、この町の名にちなんでいる。

ついに敵の首都ベルリンに突入した著者は、総統官邸での文字通り歴史的な発見に関わることになる。ゲッベルスの厖大な手書きの日記帳(超一級の歴史資料)が入ったトランクを発見し、自殺後に焼かれたヒトラーの死体の発掘に立ち会うことになったのである。

本書のもっともセンセーショナルな一章は、死体がヒトラーであるという決め手になる顎骨を、著者が上官の命令によって保管し、ヒトラーの侍医だった歯科医の女性助手の証言でそれがヒトラーのものであることが確認されるくだりだろう。

これによって、ヒトラーは密かに脱出して生きている、という神話が生まれる余地がなくなるからだ。
 だが、本書の真価は、むしろそこにあるのではない。

戦争の只中で生きる敵と味方の将兵たちや、戦場となった土地の住民たちの姿が、著者のすぐれた感受性と確かな観察眼によってとらえられ、生彩をもって描かれている。
ドイツ軍には女性将兵はいなかった。本書は、独ソ戦の女性当事者による記録という点でも、比類ない歴史的価値を有している。

「ロボットは友だちになれるか」フレデリック・カプラン著…日経新聞7月31日21面より

2011年08月07日 15時30分55秒 | 日記
人工的生命と人間の違い探る  東京大学教授 金森 修

2部に分かれているが、第1部は比較的普通のロボット開発史だ。本の題名の元となるアイボ型ロボットの開発にも、著者はもちろん触れている。

しかし、普通は極限状況下での作業や工場での活躍を期待されるはずのロボットが、半ば無用な娯楽や愛玩の対象として出現したということの意味が、それほど深く掘り下げられているという印象はない。

邦題との兼ね合いで考えるなら、それは少し残念だ。ただ、アイボを犬がどのようにみたのかというような実験記録が載っており、それはなかなか興味深く読んだ。

ラジコンカー以上、しかし子犬以下の存在。犬もまた、それが同胞なのか否かについて、彼らなりの洞察を発揮するものらしい。

やはり、より面白く読めるのは後半の第2部だろう。だが、それはこの本にとっては危険な拡散でもあったようだ。人工物一般、または人工的生命一般の文化史を語ろうとしているために、話題が幾分拡散しすぎて、全体としては突っ込み方がやや弱いものになったという印象だ。

ともあれ、人工的生命体と普通の人間との違いを探ることは一種の人間論になるわけだし、フランケンシュタインやゴーレムなどの具体例に触れれば触れるほど、われわれ人間にとって、神の創造を疑似体験するということは大切なテーマだったということが分かる。

また、日本のロボット学者が鉄腕アトムにしばしば触発されたというのは、既に有名な話だが、先のアイボにしてもアトムにしても、まさに日本こそが、ロボットという存在様態に予想外の多様性を与える特殊な文化圏なのだという認識を、著者は前面に出している。

日本人の一人として、こそばゆいような感覚が残る。掘り下げ方がやや甘いと先に述べた。だが、逆にいうなら、この本で取り上げられているいろいろな事例を参考にして、興味のある部分を自分で追求するという使い方をするには格好の資料であることは間違いない。

エンジニアには第2部を、文系の人には第1部を特に注意して読んでもらいたい。そうすれば、世界が少し広がったという実感を味わうことができるはずだ。

水の透視画法 辺見庸〈著〉…朝日新聞7月31日12面より

2011年08月07日 15時10分04秒 | 日記
思考は事象の根底へ 自己自身へ

評・後藤 正治 ノンフィクション作家

いま言葉が立ち上がって食い込んでくる稀有の書き手が辺見庸である。3年にわたり共同通信より地方紙に配信されたエッセーがまとめられた。

時事問題も取り上げられてはいるが、それは素材であって、思考は事象の根底へ、そして自己自身へと向かう。箴言と実存の書、あるいは黙示録の趣さえもある。

 ≪黒っぽい「なにか」がやってくるとずっとおもっていた≫というごとく、破局への重い予感が色濃く漂う。

デジタル社会と軌を一にするごとく、世を侵食する「すさみ」は覆うべくもない。詰まるところ、売れるもののみが価値がある。旧ソ連の強制収容所(ラーゲリ)を生き抜いた作家のシャラーモフに言及しつつ、現代は「資本による新たなラーゲリ」ではないかと捉える。

その意味でいえば、いま世界経済を席巻する中国もまた「資本に負けたのだ」と。そして一方、われわれ自身の「主体」の空洞化も覆うべくもない。

深々とした思索や沈黙が消えていった。尊ぶべきものを粗末にしているうちに言葉を失っていったのだった。
≪ことばの主体がすでにむなしいから、ことばの方で耐えきれずに、主体である私たちを見はなすのです≫。ラーゲリの棲み人あった詩人石原吉郎の言である。

連載の最終回は、著者の故郷・東北が未曽有の惨禍に見舞われた直後と重なった。予感は的中したが、しかしこれも序章にすぎない。戦争か、あるいは日々蝕まれゆく「なにか」か。

本書の序文はこう締めくくられている。
≪これは結末ではなく、新たなはじまりの景色ではないのか。未来への予感は依然、本書のなかにひそみ、まだ見たこともないおどろくべき結末をまっているはずだ≫

本書の執筆は「脳出血の後遺症と二つのがん」を抱えつつ成されている。身を削ってつづられた文章だ。言霊がいまもとどまっている。



オポチュニズムと思考の革命…週間朝日8月12日号

2011年08月07日 14時59分38秒 | 日記
辺見庸が3・11後の日本をよむ

…前略。

誤解をおそれずにいえば、いまクーデターが起きてもおかしくない。だって政治がないんだもの。

しかし、クーデターもデモも暴動も起きない。そういうバネを失っている。なにか起きないかなと期待するだけで、自分がはねあがるのは損だと思っている。

率先して、傷ついてもやるという精神が、この国では冷笑される。ドン・キホーテがいない。本当の平和とは違う。オポチュニストだらけの去勢された国なんだよ。

もっと怒り狂わなければ。テレビの“震災美談”はもうたくさんだ。それより、避難所の人びとをすぐ熱波から救わないといけない。

国は避難民のために即刻エアコンを設置すべきだ。国会議員は議員会館から出ていき、震災・原発避難民に施設を提供したほうがいい。なぜそうできないんだ」

…後略。

モールス…週間朝日8月5日号より

2011年08月07日 14時51分55秒 | 日記
隣に越してきた少女の哀しい秘密とは?

雪に閉ざされた田舎町。12歳のオーウェン(コディ・スミット=マクフィ士は母親と二人暮らし。学校ではいじめにあっている孤独な少年。ある日、隣にアビー(クロエ・グレース・モレッツ)が越してくる。

彼女は雪の上でも裸足で、自分の誕生日さえ知らない不思議な少女。二人は何度か会ううちに惹かれあい、壁越しのモールス信号で絆を深めていく。

やがてオーウェンはアビーの哀しくも恐ろしい秘密を知ることになる。

ときを同じくして、町では残酷な猟奇殺人事件が起こり始める。事件を追う刑事は、やがて二人の住む団地へとたどり着くが……。すべてが明らかになったとき、オーウェンが下した衝撃の決断とは?

監督マット・リーヴス

ふたりのヌーヴェルヴァーグ ゴダールとトリュフォー…週刊朝日8月5日号より

2011年08月07日 14時46分16秒 | 日記
音楽家・文筆家 菊地成孔

本作はマニアックな映画ではなく。ヌーヴェル・ヴアーグ初心者”に向けた入門編というべき作品です。“ヌーヴェル・ヴァーグ”という言葉は聞いたことがあって、よく行くカフェにポスターが貼ってあるけど、いまさら「それ何のこと?」とは聞けない。

そんなビギナーにおすすめだし、僕のようなすれっからしが見ても退屈だとは思わない。豊富な映像資料をうまく組み立ててまとめてあります。

1950年代後半のフランス映画界に新しい波を起こしたゴダールとトリュフォー。トリュフォーは「大人は判ってくれない」(59年)でカンヌ映画祭の監督賞を取り、ゴダールは「勝手にしやがれ」(60年)で鮮烈なデビューを飾る。

彼らは時代の推進者だったけど、やがて対立してしまいます。その経緯を私情や主観を入れることなく淡々と端正にまとめ「ヌーヴェル・ヴアーグとはなんだったのか」をわかりやすく教えてくれています。

僕も現代と照らし、改めて 「え? こんなことで二人は決別してしまうのか?」と驚きを感じました。

最近「バスキアのすべて」や 「イヴ・サンローラン」など20世紀の偉人を描いた良質なドキュメンタリー映画が増えています。

ドキュメンタリーというより“20世紀史の勉強映画”と言うべきでしょう。
なぜなら20世紀はもう「古典」だからです。YouTubeなど映像は豊富にあってなんとなくわかった気になっているけど、実際それらはただの羅列でしかなく、一つのことをきちんと知ろうとすると出会いがない。

20世紀はまだまだ咀嚼されていないんです。だからワンテーマを1時間半でうまくまとめるこうした作品は今後もっと需要があると思いますね。 

(聞き手・中村千晶)

「マグロ学 一生泳ぎ続ける理由とそれを可能にする体の仕組み」中村 泉著

2011年08月07日 14時24分37秒 | 日記
半生をマグロにかけた研究ノート
文芸ジャーナリスト重金敦之
…週刊朝日8月5日号

なかむら・いずみ=一九三八年、愛知県生まれ。京都大学助教授での退官までに十五回の調査航海に参加して、世界の海でマクロ、カジキの調査に従事。

今やマグロの美味しさは日本だけでなく、世界中に知れ渡っている。天然クロマグロ(ホンマグロ)のトロともなれば、生でも冷凍であっても、きわめて「高価な」魚だ。天然と断つたからには、養殖もあるが、値段も決して劣らない。

したがって、現在は世界中のマグロが日本を目指して、航空便で運ばれる。「成田漁港」とまで揶揄されるほど、まさに「空飛ぶマグロ」だ。

しかし、その生態となるとほとんど知られていない。マグロは口を開けたまま泳ぎ、入ってきた海水を鰓の上に通して海水から酸素を得る。

持続的に高速で回遊できるように魚体は紡錘形となり、強力な尾びれが発達した。内部の血管や筋肉の組織も進化し、曲線美を誇る完璧な「流体抵抗減少マシン」を作り上げた。

その結果、生涯を一時も寝ないで泳ぎ続けなければならない。もし一たび休んだら呼吸ができずに死んでしまう。水族館のマグロを観察すると、二十四時間止まらない。夜間は泳ぐスピードが遅く日中は速い。代謝を控えめにして、ゆっくりと回遊する夜間が睡眠に当たるのだろう。

高速で回遊を続けるには、エネルギー源となる餌を食べなくてはならない。大きなマイワシの群れに遭遇すると、弧を描いて海面近くに押し上げる。マイワシが大きな球になると、海面にジャンプして上から襲う派と下から追いつめる派に分かれ、効率的な食事ができる。

マグロの群れでは、サル山のボスのようなリーダーは存在しない。同じ程度の遊泳能力を持つマグロが集まって群れを作り回遊するのが、何かにつけて有効なのだろう。

著者は、マグロの分類を研究しているうちに、マグロの魅力に取りつかれた。北杜夫の『どくとるマンボウ航海記』で知られる水産庁の調査船「照洋丸」などにも乗船し、七つの海でマグロの群れを追いかけてきた。

著者が研究に取り組み始めた一九六〇年代前半は、まだ分類も正確にはできていなかった。
デパートやスーパーに並ぶマグロに「養殖」という品質表示を見ることがある。これは幼魚を大きな生け簑の中で餌を与えて肥育させたものだ。

正確にいうなら、「蓄養」という言葉がふさわしい。オーストラリアのミナミマグロが最初といわれ、今では、日本、メキシコ、アメリカ、カナダなどのほか、地中海諸国がクロマグロの蓄養に積極的だ。

それに対して「完全養殖」という言葉がある。天然幼魚を育てた成魚から卵を採取、ふ化させて育った親魚から、さらに「二代目」の稚魚を得て成魚になるまで育てるのだ。

近畿大学水産研究所大島分室が三十二年の長い歳月を掛けて成功させ、商品として流通するまでになった。まだ世界中でどこの国も試みていない。

著者の筆は食文化の領域にまで及び、マグロのおいしさは醤油なしには考えられない、と説く。江戸時代後期から、マグロを醤油に漬けて保存する「ヅケ」なる技法が生まれた。

しかし昭和初期までトロは好まれなかったと言い切るのには、いささか疑問が残る。大正九年に志賀直哉が発表した「小僧の神様」には、すし屋で「好きな鮪の脂身が食べられる頃」という表現がすでにある。近ごろ第二次大戦前はトロが好まれず戦後にもてはやされたという意見が多いのは、納得できない。ネット情報の増幅作用ではあるまいか。

本書は「マグロ大好き民族」の日本人なら、当然に知っておきたいマグロの分類、漁法、流通、旬などの濫蓄を得ることができる。食べ物についての濫蓄はひけらかすと折角の美味を損ねることにもなるが、節度を持って食卓の話題とすれば、食べ物の旨味も層倍に増すはずだ。

著者は、眠りに就くとき、「君たちマグロは寝ないで、泳ぎ続けているのだね。申し訳ない」と考えることもあるそうだ。まさに半生をマグロ研究にかけた「マグロ学者」の貴重な研究ノートである。

NHKBSの「周恩来特集」を観て、

2011年08月07日 12時40分46秒 | 日記

「周恩来なかりせば、今の中国は無かったんじゃないか」、とまで、思うとは、予想外だった。

武田信玄に於ける山本勘助という位置付けと決め込んでいたというか、周恩来なかりせば、毛沢東もなし、と思っていたのだが。

周恩来が一族に課した使命感は、中国人ではなく、日本人のdecencyに近い。周恩来の一族でありながら、誰一人、役職や、重要ポストに着いていた者はいない、どころか、本当に普通の労働者なのである。

今の中国に、この様な人物は一人も居ないだろう事は言うまでもないほど、空前絶後、と言っても良い位の、人物、本当の国士、実に、見事な国士だったのであった。

彼が居なければ、中国は、瓦解していたと思うのは私一人ではあるまい。


時に、我が国のマスコミは、一体、何をしているのだろう。

即刻、クビにすべき者が、そこに居るのに。

それをしないで、何を言った所で、貴方がたの言葉には、何も無い。


クラウド発想は15年前 グーグル エリック・シュミット会長独占インタビュー

2011年08月07日 11時54分45秒 | 日記
グーグル会長で、「クラウドの名付け親」と言われるエリック・シュミット氏が、
アエラのインタビューに応じた。語ったのは、携帯電話の最終目標と、インターネットの未来。
…AERA8月15日号より

文中黒字化は芥川。

薄っすらと浮かべた笑みからは、「余裕」すら感じられた。
米国の調査機関が7月11日に発表した、米国のスマートフォン利用者の35%がグーグルの携帯端末用OS「Android(アンドロイド)」搭載機種を使っているという結果について尋ねると、エリック・シュミット会長は。

「数字は追っていないから、詳しくはわからないんです」と言いつつ、こう続けた。
「1つだけ言えるのは、世界中で1日当たり55万個のアンドロイド搭載デバイスが売れているということですね。ここまでの伸びは予測できていませんでした。うれしい驚きですよ」

 アンドロイドで決済

モバイル市場の将来はアジア地域にかかっている、と指摘する。人口は多いのにスマホの普及が遅れているインドネシアやフィリピンなどに、特に注目しているという。日本には、別の意味で一目置いている。

「携帯電話の最終的な目標は、決済を含めて一台で何もかもできるということ。日本はiモードなどでモバイル・インターネットが普及した国。電話や通信の利用時間が長く、携帯電話決済の環境も充実しているので、グローバルに見ても日本のユーザーは洗練されています」

「ガラパゴス」と呼ばれた日本の携帯電話の特徴でもある「おサイフケータイ」。今後は、近距離無線通信「NFC」に対応した決済機能をアンドロイドに加える予定だ。

まだサン・マイクロシステムズに勤務していた14年前、「インターネットの将来」というテーマで朝日新聞のインタビューに答えている。

「あの頃からクラウドコンピューテイングの概念を説いてきました。あれから約15年経ちましたが、ワイヤレスの革新や携帯の機能向上が必要でしたから、これくらいはかかるものです。早ぐも遅くもない」

 もっと自由でなければ

今年4月、量局経営責任者(CEO)をグーグル共同創業者のラリー・ペイジ氏に譲り、会長職に専念している。

「ラリーは自分の部屋からいろんなことを指示してくれていて安心だ。むしろ、私も会長になれたことで、アンドロイドのよさをアジアなどで講演する機会が増えた。新しい体制は、間違いなく機能しています」

社内はペイジ氏が取り仕切り、シュミット会長は外に出て、各国の要人と面会する。
「まだインターネットが政府当局の取り締まりの対象になっている国がある。解消するには、こちらからも動く必要があります。中国のような検閲は許せない。もっと自由でなければ」

「自由」は、インターネットやグーグルという企業にとって、空気のようなものだ。
東日本大震災が起きた3月11日、グーグルは発生から2時間後に、被災者の消息を確認できるサイト「パーソンファインダー」を立ち上げた。震災関連の情報を網羅したサイトも作った。

グーグルには勤務時間の20%を好きなことに費やしてよいという「20%ルール」がある。これが迅速な対応を可能にしたのかと尋ねると、ゆっくり「イエス」とうなずき、こう続けた。

「社員それぞれが『やってみたい』と感じる場所でイノベーションが生まれる。あのスピードでサイトを立ち上げられたのも、そういう文化があってこそだと思っています」 


編集部井上和典

ベンチャー精神 どう取り戻す?オムロン社長 …日経新聞8月7日5面より

2011年08月07日 11時32分58秒 | 日記
原点の工場自動化に力 オムロン社長 山田義仁氏

オムロンが2020年度に連結売上高を1兆円以上にする計画を策定した。10年度の6割増という高い目標だ。自動改札機や現金自動支払機を世界に先駆けて開発した同社は京都系ベンチャー企業の先駆けだが、今では売上高で日本電産などの後塵を拝している。どう成長力を取り戻すのか、山田義仁社長に聞いた。

--かつては高い成長率を誇ったが。

「過去10年の売上高成長率は4%にとどまっている。『堅実経営』 『安定感はあるが成長力が少ない』。こんなオムロンの企業イメージを聞く機会が増えた。

ある意味で当たっていると思うが、それでいいとは思っていない。作田久男前社長ら前経営陣が3年前に変革を決意し、戦略の練り直しを進めてきた」

ーーどのように売上高を1兆円以上にするのか。

「台湾の競合メーカー、デルタはファクトリーオートメーション(FA)などの売上高で約4500億円を稼ぎ、オムロンを大きく上回っている。

工場自動化だけで約2倍の7000億円にしたい。営業利益率15%以上という目標も設定したが、欧米の大手に対抗するにはこの程度の収益力が必要だからだ」

「強いFAや電子部品に経営資源を集中する。今後10年を見据えたとき、新興国の成長とともに一番伸びる可能性かおるからだ。失われたベンチャー精神はオムロンの得意な生産自動化の分野で発揮したい。
特に中国では人件費が高騰し、工場の自動化需要が高まっている。生産効率化にとどまらず、安全性の向上や省電力などを提案して需要を取り込む」

 
ー-新興国は独シーメンスなど欧米の強豪も狙っている。どう戦うのか。

「新興国で戦える価格帯や仕様を標準にして新製品を開発する体制に変える。これまで日本市場をベースに商品開発し、新興国向けは機能を下げた製品を販売してきたが、これでは現地のニーズに十分に応えられない。

11~13年度の研究開発費は従来比21%増の約1500億円を投じる。新興国の販路開拓につながる企業買収なども検討する」

「新興国ではどうすれば低コストで生産自動化できるか、顧客に助言しながら販売することも重要。日本の生産現場はノウハウの蓄積があり、自動化のための制御機器を単品で販売しているが、中国は急成長したためノウハウが不足している。

単品で購入しても使いこなせないからだ。9月に上海で販売支援拠点を新設するなどし、13年にシステムエンジニア(SE)を世界で現在の3倍の600人に増やす計画だ」

 聞き手から一言

 反転攻勢狙い 若さに賭ける

オムロン創業者の故立石一真氏は、起業して間もない日本電産の永守重信社長ら京都のベンチャー経営者を物心両面で支援した。かつての「教え子」に売上高や株式時価総額で追い越されたことに、じくじたる思いを持つオムロンの社員は少なくない。

創業家の立石義雄名誉会長らは再び成長軌道に乗せるべく、非主流のヘルスケア部門出身で49歳の山田氏を社長に抜てき。25人の執行役員のうち10人を50歳以下にした。大胆な経営体制刷新が活力を生むか、注目される。  

(堀江耕平)

中国企業 先進国ブランド買収加速…日経新聞8月7日4面より

2011年08月07日 11時20分27秒 | 日記
米社の南米エアコン事業
家電大手が買収


【広州=桑原健】中国の白物家電大手、広東美的電器(広東省)は6日、米エアコン大手のキヤリアの南米事業を買収すると発表した。キャリアのブランドカや販売網を生かし、南米で販売拡大を狙う。

中国の家電大手では海爾集団(ハイアール、山東省)による三洋電機の事業買収が明らかになったばかり。中国企業はブランドカのある先進国企業の事業買収でグローバル展開を急ぐ姿勢を鮮明にしている。

中国では政府が景気対策として導入した農村部の家電購入支援策や自動車購入向けの減税の縮小を進めており、現地メーカーは従来以上に海外に目を向けざるを得なくなっている。弱点であるブランドカと海外販売網を狙った先進国企業の買収は今後も続きそうだ。

美的はキャリアの親会社、ユナイテッド・テクノロジーズが設立する南米事業の持ち株会社の株式の51%を取得。キャリアが実質的に管理してきたブラジル、アルゼンチン、チリ3力国のエアコン生産・販売6社を持ち株会社の傘下に置く。

美的とキャリアの両ブランドの製品を販売するもよう。美的の買収総額は2億2330万ドル(約175億円)となる。

美的はエアコンや冷蔵庫、洗濯機を主力事業とし、エアコンでは珠海格力電器(広東省)に続く中国2位につける。

2010年に前年比58%増の746億元(約9300億円)だった売上高のうち、海外比率は27%。今回の買収を「グローバル化の重要な一歩」と位置付け、新興国を中心に海外事業の拡大を目指す。

キャリアはダイキン工業が10年度に空調事業で世界首位となるまでトップの座を維持。南米3カ国の10年の売上高は6億ドルを超えた。美的はキャリアの築いた知名度やブランドカを生かし、自社ブランド製品の販売も伸ばす考え。

両社は中国ではキャリアブランドの製品を合弁生産する協力関係にある。
中国企業ではハイアールが7月末、パナソニック傘下の三洋からの事業買収を発表。

洗濯機、冷蔵庫の両事業や東南アジアの販売網を取得し、東南アジアでは三洋ブランドでの商品販売も認められた。

苦悩するアメリカ 富めるアップルの陰で…日経新聞8月7日4面より

2011年08月07日 10時56分34秒 | 日記
成長の果実 国内素通り

「店舗貸します」。米アップル本社のあるカリフォルニア州クパティーノ市から車で30分ち走ると、トヨタ自動車と米ゼネラル・モーターズ(GM)の合弁エ場があったフリーモント市に着く。

工場閉鎖から1年余。市内には空き店舗や空き家が目立つ。業績が好調なIT(情報技術)企業が集まるシリコンバレーの一角とは思えない光景だ。

スマートフォン(高機能携帯電話)「iPhone (アイフォーン)」などを次々とヒットさせ快進撃するアップル。15年前は身売り交渉をしていた企業が、スティーブ・ジョブズ氏の経営トップ復帰を機に復活。

株式時価総額は5日時点で3463億ドル(約27兆円)と、米国首位の石油大手エクソンモービルに迫る。
 業績も4~6月期の純利益が前年同期の2・2倍の73億ドル(約5700億円)と絶好調。

さぞや地元経済は潤っていると思いきや、実はさほどでもない。

 雇用も販売も海外
 
もちろん、本社周辺では新本社建設などを当て込んで賃貸物件の家賃が急上昇しているが、そうした地域はごく一部。クパティーノ市が属するサンタクララ郡の失業率(6月、原数値)は10・3%と全米の9・3%(同)より悪い。なぜ、こんなことが起こるのか。


それは、海外頼みのアップルの事業構造に理由がある。まずは生産が海外頼みだ。人気製品の生産は台湾の受託製造サービス(EMS)大手に任せ、米本社は戦略立案や設計、ソフト開発に特化している。

そして販売。全社売上局に占める海外の割合は前年が52%だったが、今回は62%を突破。直営店の新規出店も海外中心だ。結果的に雇用も海外で増える。アップルは昨年10月時点で約4万9000人の従業員を抱えるが、半数以上が直営店勤務。米国内で雇用が増える余地は小さい。

本社でも技術者を中心に外国人社員が増えた。あるソフト開発エンジニアは 「優秀な外国人が増えた。難点は彼らの英語が分かりにくいこと」と苦笑する。

 政府より“金持ち” 

米政府よりアップルの方が“金持ち”-。債務上限引き上げ法案で米議会が紛糾した7月末、インターネット上では、アップルの手元資金と、米財務省が毎日発表する現金残高の比較が話題となった。

アップルの6月末時点の手元資金は761億ドル(約6兆円)で、米政府の現金残高を上回る。しかし、その潤沢な資金も米国内では使われない。アップルが海外で稼いだ現金は6割が米国に送金されずに海外に残っている。

これはアップルだけではなく、米国のIT企業に共通する。米ムーディーズ・インベスターズ・サービスは6月、米IT大手11社が海外に保有する現金が向こう3年で現在の2倍にあたる2380億ドル(約18兆6500億円)に膨らむと予測した。

IT企業が好業績に沸いても、地元経済が潤わない構図がここにある。

米主要500社の4~6月期決算は純利益が前年同期に比べ10%増と7四半期連続の増益だが、米国の失業率は9%台と高止まりが続く。海外で稼ぐ大企業が潤っても米国経済を支える力は乏しくなっている。

(シリコンバレー=岡田信行)