ジョン・ハムレ米戦略国際問題研究所所長
John Hamre 50年生まれ。ジョンズ・ホプキンス大博士。クリントン政権で国防次官、国防副長官。00年より現職
以下は、彼からの日本国民に対するエールなのであるが、私は、これを読んで、涙が出た!。
と同時に、
既述の、同級生にして親友のD君が、愛嬢を、彼の様な世界最高級の頭脳をもった人間が博士として居る様な、米国最高の女子大に、送りこんだ事を、人ごとながら(笑)、誇りに思う。
日本人として誇らしく思うのだ。
最後の彼からのエール。
文中黒字化と強調は私。
これらの提言を実現するにはそれなりの時間がかかる。
米国でもスリーマイル島原発事故後、原子力産業が原子炉を安全かつ効率的に運転できるとの信頼をいくらかでも取り戻すまでに3年かかった。
今では米国の電力会社は、世界で最も安全で最も信頼性が高い(そして最も利益率の高い)原子力発電所を運転している。
同じことは日本にもできるし、やるべきである。
日本は今、心に傷を負っている。それは福島の災厄だけが原因ではない。
15年に及ぶ景気低迷の末にこの悲劇が起き、そのうえに政治家が自己破滅的な権力抗争を繰り広げているためでもある。
今日本は苦しい時を迎えている。
だが筆者は日本の人々の内に秘められた強じんさ、そして逆境に直面したときに示される意志の力をよく知っている。
進むべき道はある。
ジョン・ハムレ米戦略国際問題研究所所長
John Hamre 50年生まれ。ジョンズ・ホプキンス大博士。クリントン政権で国防次官、国防副長官。00年より現職
文中黒字化と強調は私。
第二に、新機関の専門的能力を強化する必要がある。
新機関の人事採用には特別の権限を認め、民間より高い給与を保証して最高の人材を採れるようにすべきである。
とはいえ、それには時間がかかる。
当面の措置としては、新機関はIAEAやNRCといった国外の有力機関から専門家を招き、人材不足を埋め合わせてはどうか。
第三に、日本は将来の事故の賠償責任をカバーするために、包括的な法的枠組みを整備する必要がある。
民間企業は無限の賠償責任を負うことはできない。それでは会社は破産し、国民はより不安定な電力供給と高い電力料金という形で、ツケを払うことになるだろう。
包括的な損害賠償スキームでは、原発事業者が 「第1賠償者」として相応の金銭的負担を引き受けるものとし、それを超える大災害の場合には政府が特例として残りの賠償責任を引き受ける形にするのがよいだろう。
民間事業者を第1の賠償者とすることは、事故防止の適切なインセンティブを設けるためにも必要である。
だが民間産業に無制限のコストを負担させることは不可能であり、そんなことをすれば産業自体が成り立たなくなる。
米国では原発事業者が共同で、災害賠償責任専門の保険会社を設立している。
この保険会社はあくまで独立の組織であり、巨額の保険金を払いたくないので、業界の監視に極めて熱心だ。
こうした仕組みのおかけで、全体の適切なバランスがとれている。
第四に、日本は原子力を放棄するのではなく、原発の安全性の面で世界のチャンピオンを目指すべきである。
原発の安全運転で世界の一流を目指すという機運を国内で盛り上げ、卓越した技術に対する評判を取り戻さなければならない。
大学における新たな研究課程や研究センターの設置、安全システムや原子炉設計研究への政府予算の配分に加え、優秀な大学卒業生を政府機関や独立系研究機関に採用するための計画を立案することなどが必要となろう。
…以下続く。
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John Hamre 50年生まれ。ジョンズ・ホプキンス大博士。クリントン政権で国防次官、国防副長官。00年より現職
第一に、日本には原子力の安全運用を監視する機関はあるが、経産省の管轄下に置かれている。
しかも、力のある産業を管理するだけの能力も予算も備わっていない。
この機関を経産省から分離し、国会直属の独立機関とすべきである。
新機関には、電力会社に必要書類を提出させ、検査官の前で証言させるだけの法的権限を与えることが必要だ。
米原子力規制委員会(NRC)がモデルとなろう。
福島の原発事故以降、米国の原子力規制当局と原発事業者はそれぞれ詳しい調査を実施し、米国の原発が学ぶべき教訓を探った。
NRCは調査結果を発表し、米国の原発は安全であるとしながらも、検査手続きを強化する新たな規則や措置の導入を勧告している。
興味深いのは、原子力発電業界も独自に同様の結論に達し、NRCの報告書が公表される前に自主的な取り組みを始めたことだ。
これはまさに、業界と規制当局との間に望まれる建設的な関係といえよう。
業界の動きがすばやかったのは、公の場でNRCから批判される事態を避けたかったからである。
…以下続く。
ジョン・ハムレ米戦略国際問題研究所所長
John Hamre 50年生まれ。ジョンズ・ホプキンス大博士。クリントン政権で国防次官、国防副長官。00年より現職
…前章続き。
文中黒字化と強調は私。
現時点では、この役割を国際原子力機関(IAEA)が担っている。
そして、IAEAで主導的な役割を果たしてきたのは日本と米国である。
両国は、無謀で無責任な原子力利用に乗り出す国をIAEAが確実に取り締まれるよう努力してきた。
もし日本が原子力発電を断念したら、再び推進に転じた米国の原子力政策も打ち切られる可能性がある。
ドイツ、イタリアも脱原発の路線を打ち出した。
責任能力に乏しい国の商用原子力開発には国際的な監視体制が必要だが、日米両国が原子力発電をやめたら、そうした仕組みを形成し主導できる国がなくなってしまう。
日米両国が原子力発電から撤退し、両国の安全思想にくみしない国々が原子力システムの運営責任を担う事態となれば、日本も米国も今よりはるかに安全でなくなるだろう。
日本の人々が原子力産業から手を引きたいと考えるのは理解できる。
だが脱原発は、長い目で見て日本をより安全にするとはいいがたく、大きなリスクを長期的に抱え込む状況につながるだろう。
このジレンマを脱する簡単な方法はない。
唯一現実的な解決策は、原子力産業の監督・管理能力に関して、政府に対する国民の信頼を取り戻すことだ。
長く困難な道のりであるが、それ以外に道はない。
このプロセスをどのように始めるべきかについて、本稿では4つの提言をしたい。
…以下続く。
エネルギー資源乏しい日本の脱原発は誤り
日本が撤退しても新興国の原発推進は不変
民間企業の無限賠償責任の回避へ法整備を
ジョン・ハムレ米戦略国際問題研究所所長
John Hamre 50年生まれ。ジョンズ・ホプキンス大博士。クリントン政権で国防次官、国防副長官。00年より現職
文中黒字化と強調は私。
日本は今年、空前の連鎖的な災厄に見舞われた。
最初に起きたのは大地震である。
地震によってすさまじい津波が発生し、東京電力福島第1原子力発電所の事故につながった。
そしてこれが第4の危機を招いている。
政府に対する信頼感の危機である。
日本は最初の3つの危機からは立ち直りつつあるが、第4の危機が最大の問題になっていると感じる。
一言で言えば、日本国民は政府に対し、原発の炉心溶融の危険から国民を守る能力があるという信頼をもはや抱いていない。
この信頼感の欠如が、日本は原子力産業から撤退すべきだとの見方を一層強めていると考えられる。
筆者がこのほど日本に1週間滞在した際にも、そうした声を頻繁に耳にした。
だが脱原発は大きな誤りとなるだろう。
日本が優れた原子力産業を育成してきたのは十分な理由があってのことである。
日本はエネルギー資源に乏しく、石油、ガス、石炭の埋蔵量が少ない。
このため論理的な帰結として製造業へのエネルギー供給を原子力に頼り、世界に冠たる製造業立国となったのである。
原子力発電で世界のトップクラスになる過程で、日本は原子炉部品供給の面でもグローバル市場で大きなシェアを獲得している。
だが、日本が原子力発電の推進で大きな成功を収めてきたやり方自体が、現在の危機の主因にもなっている。
経済産業省は原子力発電を熱心に推進する一方で、安全な原発運転に関して法的な監督責任を負っている。
これでは、野球チームの監督が審判を兼務するようなものだ。
このような体制は機能しない。
これが日本を襲った第4の危機の根本原因である。
今となっては、日本の原発は安全に運転されているとか、安全に運転を再開できるなどと、誰が言っても信用されない。
東電をはじめとする電力会社は世間の信頼を失った。
経産省も同省の管轄下にある原子力安全・保安院も、それは同じである。
筆者が話を聞いたほぼ全員が、政府は原発を適切に監督していなかったと指摘した。
このことが、多くの日本人が脱原発を唱える理由の一つとなっている。
だが前述したように、それは大きな誤りである。
中国は、原子力発電をやめるつもりはない。
そして改めていうまでもなく、日本は中国の原子炉の風下にある。
インドも原子力発電をやめない意向だし、韓国、南アフリカ、ブラジル、パキスタン、イランもそうだ。
たとえ日本が打ち切っても、世界の多くの国は原子力発電を推進するだろう。
だが原発の建設と運転に関して、しっかりしたグローバルスタンダードを定める役割は、誰が果たすのだろうか。
また、世界の商用原子力発電産業を監督し、「商用運転」を隠れみのに核兵器製造に手を染める行為を防ぐ役割は、誰が果たすのだろうか。
…以下続く。
水力発電に関西の技 事業管理ノウハウも伝授
日経8月5日39面から。 文中黒字化は芥川。
ヤシの木に囲まれたのどかな農村に高床式の木造の家屋が広がり、制服姿の子供たちが学校に向かう。ラオス中部、カムアン州の村を訪れた世界銀行ラオス事務所の三輪桂子カントリーマネジャーは生活の改善ぶりに目を見張った。
世銀が建設支援
世銀が支援したナムトウン2水力発電ダム(カムアン州)建設に伴い、移住してきた人々が暮らす。学校のほか保健所も整備され、「8~9割の人が以前と比べて生活レベルが良くなったと答えている」と、同地区の生活改善プログラムを手掛けてきた三輪氏は安堵の表情を浮かべる。
首都のビエンチャンにある世銀ラオス事務所を率いる三輪氏は神戸市の出身。ラオス勤務は2度目で、10年前に1年間在任していた時にはナムトゥン2ダムの事前計画作成に携わった。
過去5年で平均7・7%の経済成長を遂げ2020年までに最貧国からの脱却を目指すラオスでは大規模な水力発電所の建設が相次ぐ。5年間の建設期間を経て、ナムトゥン2水力発電所が運転を開始したのは10年春 。電力の大半は隣国タイに輸出し、今後25年で20億ドルの歳入をラオス政府にもたらすと期待される。
ラオスはインドシナ半島の内陸国で、国土の過半は山岳地帯だ。メコン川など水源に恵まれ、水力発電が経済成長を支える。環境破壊につながるとの指摘もあるが、「水力発電抜きにはラオスの未来は語れない」と三輪氏は言う。
周辺国への電力の輸出が盛んなことから「東南アジアのバッテリー」とも称されるラオスでは関西電力も水力発電所の建設計画を持つ。同国で日本の電力会社が発電事業に乗り出すのは初めてで、メコン川支流のナムニアップ川に、出力26万キロワットの発電所を建設し、発電した電力のほぼ全量をタイに輸出する。来春にはタイ電力公社などと事業会社を立ち上げる予定だ。
経営資源生かす
日本国内では大型水力発電所を建設する土地は開発され尽くしてほとんど残されていないといわれる。そこで関電は「国内の経営資源と技術を活用する一環」(美濃由明国際部長)として海外にも目を向けた。
1998年、フィリピンのサンロケ水力発電プロジェクトに参加したのを皮切りに台湾でも発電事業に参画。インドネシアでも水力発電所の計画がある。
ナムニアップ水力発電所の予定地は、首都ビエンチャンから北東に150キロメートルほどの所にある。リーマン・ショツク後の不況や資材価格の高騰で、当初予定から3年遅れたが、2012年春の着工を目指し、地質調査などを実施中だ。
「川の水量や雨期と乾期での流れ方の違いなど様々な観点から詳細なデータを集めないといけない。山を切り開いてダムを造るとなると、経験のある電力会社が関わらないとできない」。何度も現地に足を運んでいる玖村深・電力流通事業本部計画グループマネジャーは役割を強調する。
関西の技術が生かされているのは、ハード面だけではない。関電は中部電力と共同でラオスの電力分野における事業管理能力強化プロジェクトを10年10月に受託。送配電網の整備に欠かせない技術基準を事業者に守らせる制度運用のノウハウを伝授する計画だ。ラオスの成長を支える電力事業の一端を関西で育まれた知見や技術が支える。