運命と出会う瞬間

映画・小説・音楽・・なんでもありの気ままな感想

『人生は奇跡の詩』です。

2006年12月28日 08時18分38秒 | Weblog
ロベルト・ベリーニの『人生は奇跡の詩』を観て来ました。
一年の締めくくりに観た映画がこの映画だったことを感謝したい。
そして、年末にそんな想いになりたい方にはおススメします。
シャンテ・シネにて上映中。トム・ウェイツの歌と姿付き!
なぜ、原題が『Snow&Tiger』なのかわかったとき、人生の美しさ、素晴らしさ、この世に生まれていることの限りない奇跡を、あなたも知ることでしょう。
そして、言葉のもつ力を信じて生きていくことの素晴らしさも。
あ、出かける時間です。詳しくはまた!

カポーティーを観ました。

2006年12月06日 08時50分15秒 | Weblog
観てきました。念願の『カポーティー』。恵比寿ガーデンシネマにてまだ公開中。
 秀逸でした。そして、ショックですらありました。素材をここまで昇華させることのできる俳優の素晴らしさに、脚本の確かさに、編集の巧さに、音の流れ方に、久々に、100パーセント安心して、映画館でスクリーンを観る事のできる幸せをカット、カットに再確認していました。

 ・・・カポーティーよりもカポーティーだった?フィリップ・シーモア・ホフマンは、事件の犯人である青年ペリーが連行されて来る姿を群集の中でひとめ見た瞬間に『運命に出逢った』ことを全身で、表情を越えた表情で表現しきっていました。
本当なら、この世界では生きていけない魂をもった”仲間”をもうひとりみつけた瞬間。
自らももてあます感性の苦しさを小説家という世界に逃げ込むことで生きていけている自分と、もてあました先を爆発的に周囲に向け、遂には或る一家の皆殺しをして捕らえられたペリー。
『彼と僕は、かつて同じ家に住んでいたが、僕は表の玄関から出て行き、彼は裏口から出て行った』と、トルーマン・カポーティーは表現しています。
その、もうひとりの自分であるペリーへの愛着、共感、が次第に、罪あるまま生きながらえたい、助かりたいと考えるエゴを見せ付けられる苦しさに変遷していき、やがて、ペリーの生と抹消を同時に願う自分に気づき葛藤し、最後には絞首刑で死んでいったペリーの処刑現場を見届けます。
そして彼は『立ち直れないと思う』と、自ら言ったとおり、生涯、真に心の平和を得ることないままでした。カポーティーには、その強さはなかった・・・

だけど、この『カポーティー』は映画全体で、画面で、語っているのでした。
すべての、彼の矛盾は、『冷血』になどなり得ない、彼の存在そのものの、繊細さ、弱さ、やさしさが生み出したものだと。
 他者の、瞬間垣間見せる、孤独や苦しみの僅かな表出を一瞬で深く感じ、読み取り、理解して気持ちを寄り添わせる共感能力こそカポーティのカポーティーであるゆえんだった。その敏感さが苦しさの源ともなったのでしょう。
なんだか、『ベルリン・天使の詩』の、あの現実界においては無力な中年の男の天使を思い出しました。カポーティが、もし、そんな天使?だったのなら、彼の他界こそは『叶えられた祈り』だったのかもしれないなと、またまたひとりよがりに、帰り道、そんな考えにとりつかれながら秋の空をみました・・素晴らしい作品に感謝。