間違いだらけの日本無宗教論 序

2018-05-17 12:16:42 | 宗教分析

タデ=T  マイヅル=M

 

T
あー、「灰羽連盟」めっちゃおもしろかったわー。ただ個人の救済だけじゃなくて、関係性とかコミュニティに組み込まれた中での葛藤や救いが描かれていたのが秀逸だったね。

 

M
うむ。いまだに色褪せぬ作品よ。ところでお主、何か宗教を信じているか?

 

T
ノン。お前は。

 

M
Me too.

 

T
だよな。てゆうかどうしたのいきなり?

 

M
周りを見てもまあ同じような感じだからさ、それを一般化できるかちょっと調べてみたんよ。そしたらこげな感じらしい。

 

 

T
ほほう、やっぱ無宗教が多いのね。

 

M
そゆこと。ちなみに引用元は石井研士『データブック 現代日本人の宗教 増補改訂版』 新曜社  2007の4ページから。 じゃあまず日本人の無宗教について考える際の確認。「多くの意識調査から、現在の日本人は自分を無宗教と認識している者が大半だ、と結論づけることができる」。これスタートラインな。

 

T
なんか話がどんどん進んでるんだけどwじゃあ乗っかるだけだと面白くないんで反論すると、「日本人は実は仏教徒ないし神道の氏子なんだけど、自分を無宗教だと思っている、ないしは思い込んでいる」説はどうだい?

 

M
たまにそういう発言を見るけどさ、正直強弁にしか聞こえないわ。仮にその論点に立つのなら、「特定の宗教に属しているはずなのに、そう思わない理由」ってヤツを自ら説得的に語ってほしいところだね。それがないなら「個人の感想です」「お前の中ではそうなんだろうな」でしゅーりょーwwwあんた人の宗教を勝手に規定するってどこの何様だよって話さw日本の無宗教に関して生産的な議論をしようと思うなら、「(仏式の葬式もやるし手も合わせるのに)なぜそれでも帰属意識を持たないのか?」といった問いを立てるべきだわい。

 

T
まあ確かに実感としてはそれでいいんだけどさ。何か仏教教団とか神道の人たちの自己申告によると仏教・神道で併せて2億人程信徒はいるらしいよ。

 

M
HAHAHAHA!Japaneseもなかなかに秀逸なjokeをかましてくれるじゃあないかw

 

T
まあ日本の人口より多いしねw

 

M
それもあるけど、大体いつそんな人数を抱えたっつー話よ。

 

T
まあ向こうさんとしては葬式を仏式でやってっからとか、初詣に来てるからとか、あるいは地域の出身=氏子だからってことじゃないの?

 

M
ご冗談でしょうファインマンさん?「イベントに来たら自動的に会員」システムとか腹がよじれて死にそうだわwじゃあ、よく考えてみてほしいんだけどさ。たとえば〇〇大学のオープンキャンパス行ったんであなたは〇〇大学の学生ですって言われたら、どう思うよ。言われた側って「あ、俺って〇〇大学の生徒なんだ!」って反応するか?

 

T
まあ詐欺か既知外のどっちかだと思うねw

 

M
やろ?で、〇〇大学に対しては「ああ、この大学ダメだわwww」って笑いとも哀れみともつかぬ感情を持つんじゃないかなw次に地域性の件だけど、「あなたは△△に住んでるから△△銀行の社員です」とか言われたら?

 

T
[同上]ですな。

 

M
てゆうことさ。別の例で考えてみるとすぐにおかしさがわかる。なんか日本の伝統宗教だから許されるとか思ってんじゃねーよってくらいの欺瞞だよね。まあだからそっぽ向かれるんだろうけどwwwただ、一応マジメに返答しておくと、そういう「個々人の宗教意識と教団の認識の乖離」って案件は日本人の宗教状況を歴史的・考現学的に考える上で極めて重要だとは思うけどね。ついでに言うと、キリスト教の洗礼とかイスラームの信仰告白のような明確な入信の基準が仏教・神道ともないことが悪用されている感もある。

 

T
まあ一応彼らの立場で反論を試みると、「大学とか会社のような自由選択的組織と違って、宗教は精神性とか伝統に基づいたもので同列に扱えない」ってなところでどうでしょ?

 

M
それは「信教の自由」って日本語をご存知ですか?って尋ねれば一瞬で終わる案件だと思うけど。少なくともそういう規定がある社会において、ある人の宗教が外的かつ勝手に決められるなんて思考様式はちょっと苦隷自慰としか言いようがないねえwwwまあピンと来ない人はアーミッシュの話とか調べてみなっせ、てことで。

 

T
でもアーミッシュにもラムスプリンガがあるやん。

 

M
Richtig!つまり選択の自由が一応あるってことな。なるほど江戸時代みたいに、「宗門改帳で自動的に仏教徒として登録されてるシステムで、そこからはじかれる=無宿人として生きることを意味したのでデメリットが非常に大きく実質拒絶の選択肢はなかったも同然」という状況ならまだしも、今日では閉鎖的かつ同調圧力の強い社会ですら、これもんなわけさ。

 

T
無宿人ね。そういやこないだ行った佐渡金山で労働力として動員されてたって話があったな。ともあれ、アーミッシュについては選択の余地をあえて残しておくことで、「自分で選んだのだ」と信徒に認識させ、これを以てむしろよりいっそう強固な信仰共同体を維持する」という方策ではないか、と俺は推測するけどもね。

 

M
それはまあ可能性としてありえるね。さて話を本筋に戻すと、こうして別の事例を元に考えると、「あるところに生まれたから自動的に~教徒となる。そこに本人の意識は全く関係ない」って発想がまるっきりイカれてることはすぐにわかると思うわけ。

 

T
「強い帰属意識はないけど周りが~教徒だからまあ何となく自分も信じてるしその儀式に参加もしてるし、その意味では〇〇教徒ってことになるのかな・・・」っていうケースはよくあるんじゃない?

 

M
それは遍く世界にしばしば見受けられることだしよくわかる。二世・三世問題にも関わってくるしね。ただ、繰り返し言うけど、日本って無宗教だと自己認識する人が大半の状況なわけよ。それに対して、「いや、俺たちは無宗教と思い込んでいるだけで実は〇〇教徒なんだよ」と言ってその状況を否定というか論破できたかのように考えてるんだとしたらそれは全く意味がわからん、という話。まあ一応言っておくと、この話って「〇〇教徒」がたとえば「アーリア人種」に置き換えられるような気もしていて、「実は無宗教の話を掘り下げるとナショナリズム問題が絡んでくるのかも・・・」「だからこの話ってすぐ何か変な方向に行くんじゃねーかな?」と推測してもいるけどね。

 

T
うーん、やっぱ擁護無理だわ(゚∀゚)アヒャ本当にそうやね。明治で近代化して列強の仲間入りするために血道を上げた努力をしていた折にヒロフミとかコワッシーが頑張って「神権政治やってるわけじゃないっすよー!ちゃんと憲法もあるし近代国家の体を整えてますよー!!」て頑張ったのにさw仮に「伝統」がどうこうとか言うのなら、その辺もちゃんと総括してからにしていただきたいよな。

 

M
せやね。ただ、国民国家化と近代化に伴う政府の諸政策が宗教意識に与えた影響そのものは慎重に見ていかねばらなんよな。あと、さっき出てきた「地域性」というかコミュニティの話は極めて重要だと思うんで、次回はちょっとその方向で話を進めてみましょか。

 

T
あ゛い゛

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