感想:近藤恒一 『ペトラルカ 生涯と文学』

2005-12-26 21:19:09 | 本関係
ゲーム「サフィズムの舷窓」の影響で、イタリアの詩に興味を持つようになった。そこから、詩の原型を作ったペトラルカについての本を読んでみるとにした。ルネサンスの流れを作った人物という程度のことしか知らなかったので、基礎知識を学ぶ上でも非常に読み易い本だった。

ペトラルカ個人については、彼が写本収集・作成に向けた多大な努力に感心し、また感謝した。こういった人々の尽力が現在の歴史学その他にもたらした恩恵は計り知れない。また彼の言う「都市生活」や「孤独生活」といった観念は、現代の私達にとっても得るところが大きいと思う。特に、「孤独」が人里離れたところで暮らすことで得られるものではなく、内省に基づく内面的な平穏によってしか到達できないとする考えは、隠遁を理想化したり、俗世間から離れて「真理」を追求する者こそ正しいというような、脱社会や脱社会的神秘主義に対する薄っぺらな憧れを非難するものとなり得るだろう。もっとも、神という基軸が自明のものとして(あるいは強く)意識されていたこの時代の「孤独」観を現代にそのまま適応しようとするのは馬鹿げている言わざるをえないが。

作品は書簡、詩ともに掲載されていたのだが、詩が予想に反して面白かったのは嬉しい誤算だった。というのも、翻訳されている以上、魅力が半減することを覚悟していて、雰囲気さえ味わえればいいと思っていたのだ。良いものは翻訳程度ではサビつかないということか。

次はボッカチオの『デカメロン』かメディチ家関連の本を読みたい。てゆうか未だにそれらを読んでなかった自分が恥ずかしいが…orz

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