菅原貴与志の書庫

A Lawyer's Library

講義録:株式会社の基本構造(8) ~株式の自由譲渡性(後編)

2012-09-01 00:00:00 | 会社法学への誘い

 より具体的には、株式を自由に売買できる場を設けて、株主の投下資本の回収を可能にしたのです。いわゆる証券市場(stock market)がこれです。このように、株式譲渡自由の原則は、株主の利益保護にとってきわめて重要な意味をもつこととなります。

 株式の譲渡自由性を原則どおりに採用する企業形態の典型が、株式上場企業や店頭上場企業です。突然ですが、皆様はサントリーとアサヒのどちらがお好きでしょうか。いえ、別にビールの好みお聞きしているわけではありません。アサヒビール株式会社は、東京・大阪の両証券取引所に上場していますが、同じく大規模企業でありながら、サントリー株式会社の株式は上場されておりません。このように、株式の流通度合い、株主の流動性の高低によって、会社のあり方が異なってきます。

 会社法においても、この株主の流動性の高低によって、「公開会社」と「公開会社でない株式会社」とに区分し、その規制内容を別にしていています(会社法2条5号・109条2項等)。また、上場会社や店頭上場会社では、証券市場における株式の売買を通じて、株主が常時変動しています。このため、会社情報を開示(disclosure)し、証券市場を健全かつ活発な状態に保つことが、会社のみならず、株主や投資家にとっても重要です。
 何よりも出資者である投資家が安心して投資できるような基盤がなくてはなりません。金融商品取引法は、こうした投資家の保護を担っています。ちなみに、金融商品取引法では、投資家のことを「投資者」と呼びます。したがって、金融商品取引法は、上場会社にとって、会社法とともに重要かつ基本的な法律ということになるわけです。

(次回に続く)


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