菅原貴与志の書庫

A Lawyer's Library

講義録:株式会社の基本構造(8) ~株式の自由譲渡性(前編)

2012-08-01 00:00:00 | 会社法学への誘い

 株式会社では、出資の払戻しを原則として認めていません。有限責任しか負わない株主に出資の払戻しを認めると、会社財産がその分目減りします。もしそうなれば、会社財産を唯一の担保としている債権者としては、債権回収が図れなくなるおそれがあり、大きな不利益を被ってしまいます。そこで、株主の会社に対する出資の払戻しを原則的に禁じたのです(直接的な投下資本の回収禁止)。

 株主は、会社の儲けに応じて利益の還元を受けますが、このような利益還元を待てない場合もあり得ます。しかし、株式会社では出資の払戻しを原則的に認めていません。会社の側からいえば、出資分は会社財産を構成するという理由で、いわば「ぼったくる」わけです。このままでは、一般大衆から資金を集めることも難しくなってしまいます。では、どうすべきでしょうか。

 そのような株主の利益を守るためには、いったん投下した資本を回収できる制度が別に必要になります。そこで、会社法は、株式譲渡の自由を保障しました。

     

 会社法127条は、「株主は、その有する株式を譲渡することができる」と定めています。会社が出資を払い戻すことは原則認めませんが、横にパスして売ることによって、自分が投下した資本は回収できる道をつくったのです。

(次回に続く)



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