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会社法295条2項に「取締役会設置会社においては」という条文がありますが、日本の株式会社の大半が取締役会を設置していますので、「ほとんどの株式会社は」と読みかえていただいて結構です。大半の株式会社において「株主総会は、この法律に規定する事項及び定款で定めた事項に限り、決議をすることができる」のです。
法律・定款で決められた会社の基本的な事項に限ってのみ、株主総会は決議できるわけですね。これは、所有と経営の分離のもと、金のある者が出資をするが、経営は上手い人物に任せるため、結局は基本事項だけにしか決定権がないということなのであります。
近代私法の原則からすれば、これは大きな修正といえるでしょう。
株主は、会社を出資の割合に応じて共有している実質的所有者です。所有者ならば、自らの所有物を「煮て食うとも、焼いて食うとも勝手」なはずです。なぜなら、所有権とは、目的物に対して排他的・絶対的な支配権を設定したものだからです。
これが、近代私法の大原則の一つである「所有権絶対の原則」です。所有権の絶対が保障されているからこそ、契約自由の原則と相俟って、私たちは安心して取引ができるのです。こうした私法の原則が、市場経済を支えています。
ところが、会社法上、オーナー会議である株主総会は、役員選任や剰余金配当など、会社の基本的な事項しか決議することができません。要するに、所有権絶対の原則を大きく修正をしているのです。
会社法は、会社の営利目的のために、いかに合理的な組織であるべきかを考えているわけです。もう少しこの点を検討してみましょう。
原則として、会社所有者である株主は、会社事業の経営に知識・経験を有しているといえません。また、株式会社では、多数の株主の参加と大規模団体の形成が可能となるため、株主自ら直接に会社経営にあたることも難しいという事情もあります。このように、業務執行の具体的内容について、すべて株主総会で決議することは、合理的・効率的な会社経営の観点からみて不適当なのです。
そこで、所有と経営を分離して、取締役会設置会社の株主総会の決議事項を基本的事項に限り(会社法295条2項)、それ以外の経営に関する重要事項の決定については,会社経営の専門家である取締役が構成する取締役会に委ねたのです(同法362条)。
(次回へ続く)