逆転感覚

[あらすじ] 亡父の作った地下室が雨漏りする。
二年前、補修工事をした。


天井板を全部剥がし、水の漏れる位置を確認した。
水漏れを修繕した後、それが完全かどうか見極めるまで、
内装は保留することにした。

おかげで、天井板が無い。
コンクリートの筐体のままなのだが、
一部、家の下に繋がっている箇所が有り、
そこの上の部屋の床下が見えている。

床下の何やらジメっとカビ臭いような空気が入って来てしまう。
この部分だけでも天井板を張らねば。
というわけで、自分で張った。

※

薄いベニヤ板を張ったら、半年もしないうちに
カビが生えてきた。

床下の湿った空気にやられたか。

天井板と床下の間に、もう一枚何かをどうにかして、
空気の層を作りたい。

天井板を張るための棒が有るので、板は入らない。
何かシートを入れたら良いのではないか。

※

家のことで困った時は、建築士の友人Мにとっとと相談するが良い。
すると、「布基礎をするときの防湿シートがいいんじゃないかな」
と教えてくれた。

ともかくも、一度見に来てもらった。

※

二人して、脚立に上って天井裏を覗き込む。
天井裏とはつまり、上の部屋の床下である。

二人でああだこうだと相談していたら、頭上の床の上に
「カツカツカツ」と音が聞こえた。

犬の足音だ。

※

頭上の部屋には、犬のトイレがしつらえてある。
足音が止んで直後、
「ターーーーーー」と音が聞こえてきた。
おしっこだ。
「ターーー、ター、タ、タ、タ」
「カツカツカツ…」

ちょっとキレが悪いなあ。

※

自分の頭上に犬のおしっこの音を聞くという経験は初めてだ。
もちろん友人Ｍも初めてだった。
腹を抱えて笑っていたら、また足音がした。
「カツカツカツ」
「……」
「ドス。ドス。トス。」

そうそう。
おしっこが済むと直後にうんちも出るんだよね。はいはい。

※

防湿シートは近くのホームセンターには無く、
ネットで注文するでもない、ということで、
大きいプチプチクッションを買った。
まあ、無いよりはマシだろう。