犬小屋:す~さんの無祿(ブログ)

ゲゲゲの調布発信
犬のこと、人の心身のこと、音楽や自作のいろいろなものについて

りんご箱

2020年05月13日 | 日々
[あらまし] 同居母87歳パーキンソン病ヤール4要介護5認知症状少々。

居間と和室の間に段差が有る。
和室が母の居室になっていたが、2年前から
和室には入らないというおやくそくにした。
この段差で転倒の危険が有るからだ。
理学療法士さんやケアマネージャーさんや福祉用具さんなど
皆の意見の一致した結果だ。

そこで、居間に介護ベッドを移動した。
同時に、着替えや介護用品をベッド近くに置けるように、棚を用意した。

その棚を、壁際に置いた。
ただ、そこには作り付けの戸棚が有る。
有るけれど、私が幼い頃のおもちゃなどが入っていて、
手前に電話台を置くなどして、開けられなくなっている。

引き続き開けられなくていいや、ってんで、
その戸棚の前に棚を置いた。



ちょいと将棋盤を使いたい。
あの戸棚の中に在るんではないか。
そう思って、手前の電話台と棚をずらして、戸棚を開けてみた。

高さと幅と各90㎝くらいの、戸棚を開く。
内部はもう少し高さが有る。

開くと目の前に、箱が棚状に積んであり、
古いおもちゃなどが入っている。
そこに探し物は無い。
では、この箱の奥か。

箱は3つ積んである。
一番上の箱は、戸棚の入り口よりも高さが有る。
だから、一番上の箱をちょいと持ち上げているうちに
真ん中の箱を抜いて出さねばならない。

中身が入ったままやろうと思ったが、無理だ。
箱は粗い木材で作られた丈夫な箱だ。
摩擦が強いので、しっかり持ち上げないとずれもしない。
箱だけでもけっこうな重さが有る。

中身を一旦外に出して、一番上の箱を持ち上げて、
真ん中の箱を引き出す。
なんとか出してみたら、りんご箱だった。



側面に「國光」「紅玉」と大きく印字してある。
昔懐かしいりんご箱だ。

箱の蓋は、板が釘で打ってあったように記憶しているが、
どうだったろう。
バールを使ってその蓋を外すのだ。

箱の中には一杯に籾殻(もみがら)が入っている。
ちくちくと手に痛い籾殻の中から、りんごを探し出すのが
とても楽しかった。

りんごのすずしい香りとともに思い出す。



りんご箱2つを出してみると、戸棚の奥には棚が入れてあった。
引き出し5段の、木製の頑丈な、古くさい棚だ。

何が入っているのかと、引き出しを引いてみる。
重い。
重いが、滑りは悪くない。
古いが作りの良い引き出しだ。

引き出しの中には、カードが一杯に詰まっていた。



母の人生で、大きな仕事は3つほど有ったと思う。
一番最近のものは
角川の「古典基礎語辞典」、恩師の大野晋先生のもとで
執筆者の一人として働いた。

その前がまったく自分の仕事で、えーと
「和泉式部集(正続)用語修辞総索引」。
和歌で使っている言葉をとにかく調べるヤツ。(分かっていない人の説明だなこりゃ)
修辞総索引というから、全ての言い回しが調べられるヤツ。(ちょっとマシ

私が幼い頃は、
「奄美方言分類辞典」にかかりきりだった。
奄美出身の長田須磨さんを話者かつ編纂の中心人物として、辞典を作った。

当時は録音機も使っていなかったのか、
何度も長田さんの家に通い詰めていた。
私はよく連れて行かれて、何かして遊んで待っていた。



この「奄美方言分類辞典」の語彙カードが、
5段の引き出し一杯に詰まっていたのだ。

そりゃあ重いわ。



引き出しの棚の上に載っている段ボール箱には、
「隆志の机の引き出しの中の雑貨」と書いてある。
遺品がここにも有ったか。
「1987年ここに」と書いてある。
それ以来置いてある、引き出しも同様だろう。



30年しまいっぱなしだったし、これはもう惜しんでもいられない。
ちょうど明日は古紙回収の日だ。
紙袋にカードを詰め替えた。

引き出しの一番下の段は諦めた。
また今度にしよう。
空いた引き出しの中に、りんご箱に入っていた物を片付けた。
りんご箱二つが空になり、戸棚の中にずいぶんスペースができた。

りんご箱一つはまた戸棚の中に戻し、
重ねて入れるのが一人では難しいので、一つは外に出した。
すばらしく丈夫な箱だが、さてどうする。

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« アリヂゴク地獄 | トップ | いろは »

コメントを投稿

日々」カテゴリの最新記事