犬小屋:す~さんの無祿(ブログ)

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草間彌生『クリストファー男娼窟』

2017年08月20日 | よみものみもの
草間に小説作品があるということを知ったのは、自伝『無限の綱』を読んでだ。
1973年に日本に帰国し、しばらくしてから草間は入院した。
日中はアトリエで制作し、病院へ戻ってからは執筆に精を出したようだ。
『クリストファー』は83年の作品だ。
処女作である『マンハッタン自殺未遂常習犯』から読みたかったが、
図書館に有ったこちらから。

短編3作が収まっている。
表題作と、『離人カーテンの囚人』で強く印象に残ったことがある。

物語はしっかりと描かれていくのだが、あるときふと、描写が一転する。
小説が幻覚の世界に引きずり込まれる、という感じだ。
足元の地面が突然泥沼になったかのように、世界が形を変える。

幻覚とは、このように突然襲ってくるものなのか。

そして、共通するのは、死への憧憬といったもののように思えた。
草間は生きている。
88歳を迎えた今も生きている。
作品を作り続けている。

しかし、その一方で、いつも死にたさがつきまとっていたのではないか。
『離人』の最後の一行、線路に身を置いて命を絶ったキーコに、
幻の老婆がささやきかける言葉に、草間の思いが籠もっているように感じる。

「あなたの悲しみは今日で終り」


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