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【映評】サード・パーソン [監督:ポール・ハギス]

2014-11-18 08:13:45 | 映評 2013~
85点(100点満点)
2014年7月20日 池袋シネマロサで鑑賞

『ミリオンダラー・ベイビー』『父親たちの星条旗』の脚本家であり、監督デビュー作『クラッシュ』がオスカー作品賞を受賞。その後も『告発のとき』など良質な作品を作り続けて瞬く間に巨匠の仲間入りした感のあるポール・ハギス。(彼の手がけた『007』は全く評価しないが)
『クラッシュ』も『告発のとき』もいかにもリベラル映画人的な社会性のあるテーマにどこか反権力の香り、それを巧みな構成で一級のドラマに仕立ててきたので社会派作家として地位を固めた印象がある。
ところが本作『サード・パーソン』は社会性は極めて薄く、純粋にドラマとして、ポール・ハギスの脚本家のテクニカルな面と、彼独特の情感を楽しむことができる。

やっぱりポール・ハギスは監督というより脚本家だ。
本作のパリ、ローマ、ニューヨークの三つの場所での三組の男女の物語を同時並行で描きながら、ところどころで交錯するはずのない物語を交錯させていくミステリアスな展開のうまさはどうだろう。
そして影・裏・秘密を抱えた登場人物たちの孤独感、失ったものを取り戻そうとしてあがく焦燥感などが作品に深みを与えている。
このキャラクターたちの葛藤こそポール・ハギス脚本の魅力だ。

映像面からも脚本重視の映画作家であることがわかる。
カメラは被写界深度の浅いレンズで、登場人物にフォーカスを合わせて背景をボケ気味にする一般的な絵作りである。

脚本で語る映画作家が映像に求めるものは脚本の中のキャラクターを演じる役者たちの演技である。脚本と演技によって作られる映像には映らないココロを描きたいのだと思う。

タイトルのサード・パーソンとは、各エピソードに登場する予想外の第三者であり、そしてそんなサード・パーソンたちの正体が明かされるラスト。
ここにも「脚本家」としてのポール・ハギスの創作者に対する深い愛情を感じる。

ポール・ハギスの社会性抜きの内面を垣間見れるような小品ながらも味わい深い佳作。

---
エイドリアン・ブロディの、弱そうで強そうで、無欲そうでエロそうで、いいヤツそうでちょっとワルそうな、どうとでも転べる役者の資質がもっとも活かされた映画という気もした。
「キングコング」のように善人に振れるし、「グランドブダペストホテル」のように悪人にも振れるけど、彼は自分の居場所がわからなくてフワフワウロウロしている感じがいいのだ。
本作ではアパレル業界のやり手営業マンかと思いきや実はデザインを盗む小悪党。女のために何でもするようでいてちょっとこずるいキャラがよい。
影のある2人がようやく距離を縮めてお互いの傷を舐め合うようにベッドをともにする場面のヒリヒリ感。ココロが締め付けられるように切ないラブシーンでした。

そんな彼が劇中のカフェアメリカーノなる酒場でのむリモンチェッロなるお酒が今年の我が家のヒット商品です。


『サード・パーソン』
監督・脚本:ポール・ハギス
撮影:ジャンフィリッポ・コルティチェッリ
音楽:ダリオ・マリアネッリ
出演:リーアム・ニーソン、エイドリアン・ブロディ、ミラ・クニス、オリヴィア・ワイルド


---以下、感情直後のTwitterフラッシュ映評---
「サード・パーソン」面白かった。後悔、許し、待つこと、秘密、信じること。秘密は降り積もって悲しみとなり心をかき乱す。そんな映画。でも何より推理作家としてのポール・ハギスの安定感。外さない映画作家になってきました。007の脚本では批判してゴメン

「サード・パーソン」ミラ・クニスがとてもよい。


このシーン一番ひりひりしたというか、心の底にしまっていたものを見せられた気がした。エイドリアン・ブロディっていい奴だよな。適度にエロくて、適度にかっこよくて、適度に弱い


偶然にも今日観た「サード・パーソン」と「her 世界でひとつの彼女」の両方に、オリビア・ワイルドが出演していて、顔を覚えてしまった。アンジェリーナ・ジョリーをかわいくした感じ。「サード・パーソン」の全裸でホテルを走り回るシーン最高


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自主映画制作団体 ALIQOUI FILM
最新作「チクタクレス」

 小坂本町一丁目映画祭Vol.12 入選
 日本芸術センター映像グランプリ ノミネート

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