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シェイプ・オブ・ウォーター

2018-12-26 22:31:13 | 映評 2013~
「シェイプ・オブ・ウォーター」

初公開時は見逃してしまったのだが、飯田橋ギンレイホールという、日本最高の弐番館で後追い鑑賞できた。
なんか映画業界最前線的なシネコンで見るより、飯田橋ギンレイで観る方がしっくりくるような、どこか場末感のある素晴らしいバケモノ映画だった。

それにしても
こんなバケモノ映画がアカデミー賞作品賞を取るとは…
かつて「エイリアン」や「トレマーズ」を最高と言ってアホじゃねー的な目で見られていた経験のある自分としては、こんなただのバケモノ映画がアカデミー賞を取るところに、隔世の感あり、中学の頃こんな世界だったら俺たちの運命はもっと変わっていたのでは…などといろんな思いがよぎる。

自分としては、ソ連のスパイが半魚人を逃がすために、情け容赦なく警備兵を殺す描写がとても好きだ。
警備兵は何も悪くないのに。でも、そんな甘い事言ってられるほど、アメリカのトップシークレットを脱走させるのは優しいミッションではないのだ。殺したソ連のスパイもそのあとキチンと報いを受けてるし、あれはただのお花畑ファンタジーではなく、登場人物皆が本気で取り組んでいる戦争なんだと背筋を伸ばして鑑賞させる力を映画に与えていた。

反面で、私がこの映画をデルトロの最高傑作と感涙して叫べないのは、もっととても単純な好みの問題で、半魚人とのラブシーンで水浸しとなる部屋がものすごく不衛生そうで、ましてトイレまで冠水している状態では、私ならどんなに愛する人とでもセックスする気にはなれないと思った…というただその一点だけである。
どんなに半魚人のスーパーパワーかなんかで、除菌されるのだとしても、ちょっとどうかねー?

だからブレイド2はセックス無しでバンパイアとの愛を描いていたし、パンズラビリンスではセックスは婉曲的比喩的なものでしかなかったし、パシフィックリムでセックスを感じるのは相当変態だしで、デルトロは愛の描写としてセックスを取り入れるのはあまり向かないのではないかと思ったのだ。
なんか異物感あって、素直にキュンと来ないのだ。けれど本質的にキュンとくるポイントが一般人とズレまくってるに決まってるデルトロが、彼の感性に正直にセックスを描いた作品としては評価に値すると思ってる。

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話は変わるが、音楽のアレクサンドル・デスプラについて。
気がつけばこの人は近年のアカデミー賞がらみの作品の多くに貢献している。
「英国王のスピーチ」も「アルゴ」もこの人だ。
ウェス・アンダーソンはそんなこんなで人気の出たデスプラを映画に箔をつけるために起用してるのかと思ったが、割と初期から、デスプラがさほど人気のない頃からずっと起用していて、だからこそデスプラの初めてのアカデミー賞作曲賞受賞がウェス・アンダーソンの「グランド・ブダペスト・ホテル」であるというのは、非常に良い話であると思う。

そしてこの、「シェイプ・オブ・ウォーター」でデスプラは2回目のオスカーを手にした。
アカデミー賞作曲賞を2回というのはなかなかハードルが高い。
ジェリー・ゴールドスミスやジェームズ・ホーナーやハンス・ジマーでさえ1回しか取ってないし、トーマス・ニューマンやアラン・シルベストリやダニー・エルフマンは未だにオスカーを手にしていない。
そんな中でぽっと出のデスプラが早くも2回の受賞をしてしまった。しかし、本作のデスプラの音楽は受賞も当然という、映像や、登場人物の感情と完璧に一体化した音楽だった。
こんなお伽話的な夢物語にぴったり寄り添える音楽をかけるのは現代ではほかにジョン・ウィリアムズくらいしかいないだろう。
しかもデスプラにはジョン・ウィリアムズにはない、いい意味での品の悪さがある。
超一流面しているが、匂い立つようなB級感も同時にまとっているのだ。

パシフィックリムの音楽は(名曲だが)Bに寄りすぎ、ブレイド2のマルコ・ベルトラミはBすぎるし(ハートロッカーの音楽最高だったけど)、パンズラビリンスのハビエル・ナバレッティは逆に高級すぎてデルトロの下品さにあっていなかった。
色んな作曲家をつまみ食いしていたデルトロがついに生涯の伴侶に行き着いたのではないかと思うくらいに、デスプラの音楽はハマっていたと思う。次の二人のコラボが楽しみだが…ひねくれ者のデルトロはまた、別の人を使うかもしれないなー
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