自主映画制作工房Stud!o Yunfat 改め ALIQOUI film 映評のページ

映画作りの糧とすべく劇場鑑賞作品中心にネタバレ徹底分析
映画ブロガーら有志23名による「10年代映画ベストテン」発表!

まぼろし [フランソワ・オゾン&シャーロット・ランプリング]

2005-07-05 00:46:56 | ビデオ・DVD・テレビ放映での鑑賞
飲み会の時間まで5時間。暇だった。松本でやってる映画はだいたい観ていた。
DVDでも観るか・・・
で、「まぼろし」を再見

***************(以下完全ネタバレ。未見の人は読まないでくださいな)**********
すでに二・三度観た映画だったので、カット割りとかカメラワークとかに気をつけて観ようと思った。

冒頭のテンポのいい展開。別荘に向かう初老の夫婦。
ワンシーンにつき1~3カットだが、シーンが細かく短い。
別荘につき、夫のみのシーンでは、割とカットが細かい。神経質な感じを表現しているのだろうか?

問題の海岸のシーン
青い海と手前には枯れ草の草原。生のイメージと死のイメージが1カットに収められ、そして枯れ草の草原から海を眺めるシャーロット・ランプリング。美しい。これから起こる事件を暗示するショットなのだ。

海岸で居眠りする妻が、ふと気がつくと夫の姿が見えない。
近くにいるのは全裸のカップル(若さと生の象徴?)
あわてて救助隊員を呼ぶ妻。ヘリまで出動するが夫は見つからない。とりあえず夫の捜索願を出す妻

そしてシーンが変わると、妻はドレスを着て友人たちとディナー。ディナーの席で彼女は夫の話題を出す。夫が存在しているかのように。だが帰宅してみると家に夫の気配はない。だが、夫が音も無く現れ、妻と会話する。幽霊とは一言も言わないが、そうとしか思えない演出。決して家から出ない夫。暗がりの中で虚ろな、でも優しさと慈しみにあふれた眼差しを向ける夫。

*************************
フランソワ・オゾンはこの映画を「男がいなくなり、女が立ち直る話」と語る(「8人の女たち」の映像特典・監督インタビューより)
だが、立ち直る話ではないと思う。立ち直り始める話なのだと思う。
妻は頑に、夫が失踪したことを認めようとしない。
夫が鬱病で悩んでいたことを知る。それまで知らなかったその事実を、夫の母親は知っていた事に強いショックを受ける。だが彼女は夫への愛を捨てない。
妻は友人の勧めで知り合った一人の男と仲良くなり、その男に抱かれる。
だが彼女はあくまでその行為を「不倫」と呼ぶ。寂しさを紛らわすために抱かれたのではない、「不倫」と定義することで夫との関係が続いていることになるから。実際には夫は失踪し、恐らくは生きていない。それでもあくまで「不倫」であると定義する。
だが妻は、夫が消えたという事実を認めなくてはならないと、薄々思い始めていたのだろう。
男との情事も「不倫」ではなく、普通の恋愛と思うべきだとも。
その辺の妻の心情を象徴するのが、彼女の見る淫美な夢だ。
男二人分の手(4本の手)に体をまさぐられる。
2本は夫の、2本は「不倫相手」の、
夫への申し訳ない気持ち、男への心を開きたい気持ち、その狭間で揺れる心

しかし、彼女は後に「不倫相手」をきっぱりと拒絶する。やはり夫ほどのシンパシーを感じられないのだ。
このままではいけないと思ったのか、立ち直るために、全てを吹っ切るため、死体検分に向かう。
だが・・・やはり夫の死を認める事はできない。

*************************

そして、夫が消えた海岸。
ラストシーンを海にするってのは、あまりに使い古されたドラマの常套手段だが・・・妻にとって事件の発端となった海岸にもどることは必要だった。そこが終わりの始まりとなった場所であると信じるために
妻は海岸でむせび泣く。彼女の迷走はまだ終わらない。
そしてあまりに美しいラストショット
遠くにたたずむ男性。夫か?そうかも知れない。きっとそうだ。しかしはっきりとは写らない。
その男性に向かい駆けていく妻
20~30年連れ添ったであろう夫は、彼女の一部となっている。終わりにし忘れることなどできないほどに
何故?何故?とやり場の無い問いかけを続けながら、彼女は自らの心の中を迷走していく

*************************
カット割りやカメラワークに気をつけようなどと思っていたのに、後半は完全にストーリーのとりこになってしまった。
書いてることもただのストーリー解説じゃないか・・・
やっぱ名作という他ないんだな。何回観ても話と映像に引き込まれる映画が名作と言えるのだ。

続けて「8人の女たち」を観たのであった
フランソワ・オゾン祭りとなった。
「8人の女たち」はがらりと趣きの異なる、楽しいミュージカル&推理劇。すごいねオゾン。
現代フランス映画をリードする若き巨匠とでも呼ぼうか。

オゾンの映画は他に「焼け石に水」を観ている。これだけ劇場で観た。
去年「スイミング・プール」を見そこねた。観たくなった。

シャーロット・ランプリングに惚れた。「まぼろし」は彼女の最高傑作だ。
DVDのキャスト紹介見たら、1946年生まれだって・・・・2005年現在で59才・・・
「まぼろし」が2001年か2002年だから・・・
いいババアに惚れちまった。魔性のババア。怖いぜ。しかもエロいぜ。まいった。

↓面白かったらクリックしてね
人気blogランキング

自主映画撮ってます。松本自主映画製作工房 スタジオゆんふぁのHP
コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 宇宙戦争 [トムから半径50m以... | トップ | 洋画の邦題についてウダウダ... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

ビデオ・DVD・テレビ放映での鑑賞」カテゴリの最新記事