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海を飛ぶ夢 [生きるとは運命に抗うこと・・・好きな台詞はありました?]

2005-04-26 09:40:33 | 映評 2003~2005
「君との1mの距離。普通の人にはわずかの距離だが、僕にとっては無限だ。だから」
ま、ちょっとうろ覚えですけど、これが彼の全てなんだ。多分

一人の人間が自殺を決意してから実行するまでの映画・・・
非常に重々しく、生きることの意味を問いかける

難しいね。
観ながら頭をかすめた映画「みなさん、さようなら」・・・この主人公はあきらめとそれを上回る満ち足りた感慨があった。
介護する人間の苦悩を描いた「アカシアの道」。
「海を飛ぶ夢」の場合、介護される人間の苦悩だけど。

ラモンは正しいのか?と言われると、間違ってると言わねばならない。ほとんどの人間はそう言わねばならない義務があり、そのような立場にいる。家族や恋人や友人が四肢麻痺になり死を願ったからといって、どうしてその考えに賛同できよう。
だが、体が動かなくたって、生きることは素晴らしい・・・なんて周りの人間がいくらほざいた所で、本人の苦しみは、そのほんの一部だって理解はできない。
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引き合いに出すのもナンだが、メル・ギブソンの「ブレイブハート」でメルはこんなことを言う。「奴等は我々から国を奪い、家を奪い、命を奪った。だが一つだけ絶対に奪えないものがある。それは自由だ!!」「ウォォォォ!!!」
・・・・しかし、ラモン・サンペドロの場合、その自由すら奪われたのである。彼は歩くことはもちろん、自らの命を絶つ自由すら失った。女性を彼が望むように愛することもできない。望みとは肉体的な愛し方だ。時間の止まった暗黒の人生。
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映画として残念というわけでもないが、別の視点からも見てみたかったのはラモンとフリアの関係だ。魂を持ち肉体を失った男と、次第に魂を失っていく女。この関係性をクローズアップするともっとラブストーリーっぽい体裁が整ったのではないだろうか?
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ところで、この映画では「海」が象徴的に使われている。
ラモン自身が「海から生まれ、海で死ぬ」みたいなことを言っていた。僕はこの映画の海は「神」を表しているのだと思う。生殺与奪の全権を持った非情な神。万物の創造主。開放された魂が向かう場所。
ラモンが霊魂を信じていなく、教会の教えも拒絶するのは、神=海が彼の人生を奪い、自由を奪ったむごい仕打ちのためではないだろうか?あるいは聖書よりもっと強く直接的に、絶大な力を感じたからかもしれない。
彼は神=海によって二十数年の人生を奪われたが、自らの意思によって神=海の与えた運命を拒絶したのである。
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ラモンを演じたハビエル・バルデム。まだ35歳。メイクの力もあるにせよ初老の男がはまり役・・・スペインの笠智衆?(笠智衆なら「よかったよかった」とか言ってニコニコ演じそうだが)
そして、アレハンドロ・アメナーバル33歳!!。どうしてこんな達観した映画が撮れるんだろう?才気走った、テクニカルな映画を撮る奴だと思ってたが・・・たいした奴だ。若い時から「死の哲学」ばかり考えてるとは、将来が不安です。
スペインの若い二人が作り上げた、問いかけの映画。心して観よ。

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11 コメント

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TBありがとうございました。 (blue)
2005-04-26 10:56:36
TBありがとうございました。

私、まだ観てないんですよ・・・

なかなか評判のよい映画ですね。

楽しみにしています。
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原作本を読んで (tetutell)
2005-04-28 22:00:21
初めまして。僕も11日に観て来ました。ラモン・サンペドロ・カメランさんの原作本を、映画を見て直ぐ読んで見ました。殆んどが、友人や恋人?ジャーナリスト、国王などに、宛てた手紙で、「詩」が多いです。そして、最期に家族に宛てた「別れの手紙」が、凄く、感動的でした。(原文=ガリシア語で書かれてますが、口でペンを咥えて書かれた字とは思えない、端正な文字でした。)

少しだけ、引用させて貰うと・・・。



 死ぬということは、長い夢を見るようなものです。

 中略

 ぼくは精一杯あなたたちを愛しました。あなたたちも同じように、ぼくを愛してくれました。そのお返しに、ぼくは死にます。これがぼくにできるただひとつのことです。そして、あなたたちにできることは、ぼくの意思を尊重することなのです。



 事実にもとずいた、物語の持つ力を、感じました。より、善く活きる為の本、そんな深い内容の物でした。
返信する
お返事 (しん)
2005-05-03 09:12:13
>blueさま

実は、個人的には「大絶賛」というほどの映画ではないんすが、観た後いつまでも色々考えてしまう映画ではあります。



>tetutellさま

アメナーバルが「善く活きる為の本」として使ってくれるといいんだけど・・・

なんかあの監督、芥川とか太宰みたく若いうちに自殺しそうで心配

死に方を探してそうで・・・
返信する
TBありがとうございます。 (あかん隊)
2005-05-10 03:00:45
基本的には、「辛い映画」の部類に入ります。

私が映画を観る目的の一つに「泣いてやる~」みたいなものがあります。普段、そう簡単に泣けない(具体的な意味で)ので、映画を観て人目はばからず「亡く」のが好きです。

この映画では、ハンカチではなくタオルを持って行くべきでした。



思い出しては、いろいろ考えてしまうと思います。
返信する
「亡く」→「泣く」 (あかん隊)
2005-05-10 03:02:55
ごめんなさい。思いっきり間違えました。

お手数ですが、修正していただけるならお願いします。申し訳ありません。
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すいません、削除できないっぽいです (しん)
2005-05-10 03:24:24
コメント削除はできるんですが、修正はできないっぽいです。

でもその・・面白いからそのままでいいのでは?



>人目はばからず「亡く」のが好きです

・・・って、それは、ラモン・サンペドロさんですからぁ!!残念!!!



「涙は心をきれいにする」という台詞がありました。

(「グリマーマン」のスティーブン・セガールだけど)

泣きたくても泣けない現実において、泣ける映画の存在は宝物であり、人目はばからずわんわん泣けるのは映画の特権であります。



私の泣いた映画TOP10という記事が本ブログにあります。興味があれば、一読くださいまし



あ、どうしてもと言うなら、削除しますが?

ま、別にいいんでは? 
返信する
いいことにします。 (あかん隊)
2005-05-10 17:49:10
すみませんでした。以後十分に注意します。

慌て者だということは、周知のことなので、「ま、別にいいんでは」ということにします。

ありがとうございました。
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こんにちは (NOV)
2005-05-13 08:05:00
トラックバックありがとうございます.

とても難しい映画です.その理由は多くの人が死というものを忌避しているからでしょうね.そして,ラモンを演じたハビエル・バルデムやアレハンドロ・アメナーバル監督の力量には確かに驚くものがあると感じました.
返信する
視点 (sin)
2005-05-15 02:31:32
ラモンとフリア、障害の対比としてもう少し描いて欲しかったですね。体と脳、どちらが壊れていく方が怖いか。自分は記憶が失われていくフリアのほうが残酷に感じてしまいました。
返信する
コメント&TB ありがとうございました♪ (とんとん)
2005-06-01 15:25:55
アメナーバル監督って、若いのにほんと凄いですね!

劇中のオペラやケルト音楽が絵にマッチしていて、

本当によかった☆

もう1度観たいです。。。
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