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映像作品とクラシック音楽 第103回 『響けユーフォニアム3 』サントラを聴きながら振り返る〜後編

2024-09-07 20:35:00 | アニメ
さて、前回に続いてのユーフォ3期の振り返りとなります。
今年の4月から放送開始したこの作品、出だしこそスロースタートな感じはありましたが、8話くらいから毎回怒涛の展開で、特に10話以降は毎回神回という壮絶さでした。
久美子と麗奈と真由と、北宇治高吹奏楽部の行末を固唾を飲んで見守ったのでした。




物語も中盤になってくると、真由が毎回のようにオーディション辞退しようかと久美子に問いかけることの執拗さに久美子でなくても少しイラッとしてきます。
私たちはユーフォ1期で、当時1年生だった麗奈が実力で3年生の香織先輩を蹴落とし、その麗奈を「命をかけて」と言うとオーバーに聞こえますが、それくらいの覚悟で支持した久美子のことを知っています。
部長である久美子は北宇治吹部が実力至上主義であることに妥協の余地は一切ありません。
麗奈と2人でそういう部に作ってきたのです。
一方でそんな麗奈と2人のソリで最後のコンクールを締めくくりたいという強い思いもありました。
そして、府大会ではトランペットとユーフォのソリは麗奈と久美子で担当したので問題は何もありませんでしたが、関西大会メンバー選出のオーディションでソリのユーフォ担当は久美子でなく真由が選ばれることで、部内に大きな波紋が広がります。

ミドリ→実力に差がないならソリは久美子がやるべき
葉月→部長とか役職に関係なく実力で選んでいるみたいでいいと思う
奏→久美子先輩にソリをやってほしい
修一→久美子でなく真由である理由がわからなくてモヤモヤする
麗奈→滝先生の判断は絶対だ。お前ら黙れ。

みたいに主要キャラでも思いはバラバラ
その一方で真由は真由でまだソリを辞退しようかと久美子に相談する

この不協和音の中で副部長の修一とドラムメジャーの麗奈は喧嘩するし、部内の空気は険悪で最悪。とてもとても関西大会の突破どころか吹部の空中分解すら起こしかねない雰囲気です。
そして久美子はついに友達以上恋人未満くらいの麗奈とすら意見が分かれ、2人の仲すら崩壊します。

全国大会進出も、麗奈との仲も、吹部自体もめちゃめちゃになりかけ、それこそ全てを失う瀬戸際まできたのが第10話です。
ここで久美子は劇場版『誓いのフィナーレ』であすか先輩からもらった「魔法のチケット」を使います。ただの絵葉書ですが、そこに大学生になったあすか先輩の住所が記されているのです。(ユーフォ2期で、模試の成績全国30番だったあすか先輩は多分京大に行ったんだろうなぁ)

あすか先輩の家を訪れてみれば、出迎えたのは香織先輩でした。
そうです。麗奈との公開オーディションで、実力差を認めて、トランペットソロの座を潔く返上した香織先輩です。
「あすかとルームシェアしてるんだ」
いや、この2人の雰囲気はルームシェアなんてものじゃない。同棲だ、同棲。(そういえばユーフォ2期で微妙な雰囲気を醸していた2人)
そして悩みを打ち明けた久美子はあすか先輩からごく簡単な解決策を提示されます。
そう、何も考えずに思ったこと言うわがままさが久美子じゃないか、と!
まっすぐに突っ走り、誰にも全力でぶつかる久美子は自分がやるべきことにはたと気がつくのです!

なんかこの、何もかも失い、完全に終わりなところで先輩2人に助けられる展開
ナックル星人に負けて磔にされた帰ってきたウルトラマンが、初代マンとセブンに助けられる熱い展開に似てますね!(ちがうわ!)

さて、後々語り草となるであろう久美子演説です。

映画において演説とは最も映画的ではない表現の一つです。なぜなら映画演出とはいかにセリフを使わずに映像だけで表現するかが問われるからです。
しかし一方で私たちは映画における演説が数々の名シーンを作ってきたことも知っています。
『独裁者』におけるチャップリンのラストの演説しかり。アル・パチーノ主演作の数々、とくに『狼たちの午後』や『セント・オブ・ウーマン』しかり。『パットン大戦車軍団』オープニングのパットン演説。『ブレイブハート』スターリングの戦いを前にしたウィリアム・ウォレスの演説。『機動戦士ガンダム』のガルマ国葬のギレン演説。
いまそうした数々の演説名シーンに新たな作品が名を連ねることになりました。
『響けユーフォニアム3』の久美子演説です!
チャップリンやアル・パチーノと並べられると久美子(黒沢ともよ)は「いや、そんな…」と居心地悪いあいまい笑いで誤魔化してどっかに行くでしょうが

ともかく久美子は険悪で最悪な空気感のまま関西大会本番を迎えた、その本番直前(10分前)の控え室で部員たちを前に大演説をぶちます。(滝先生、その前になんとかしといてくれよ…と思わなくもないですが)

その久美子演説があまりに素晴らしいので、ここで全文を掲載いたします。

-----
久美子 「部長の黄前です。
(しばらくぶつぶつ独り言、葉月につっこまれて我にかえり、部員たち笑う)
わたし、昔から思っていることを言っちゃうくせがあって…だから…その…
思っていることを話します。
正直に、そのまま。
私は1年生も3年生も同じ土俵で競えあえて、一つの目標に向かって進める北宇治が大好きです。
その北宇治で全国金を取りたい。
2年間ずっと思ってきたけど、でも、どうしてもそこに届かなかった。
ここにいる2年と3年、そしてきっと滝先生も思ってる。
なんでだよって。
だから何かを変えなきゃいけないって幹部でそう考えて、今年はこのオーディション形式を提案しました。
それが間違っていたとは思いません。
より北宇治らしい方法だとも思いました。
ただ、そのことで戸惑いを感じた人がいたことも事実です。
部長としてこの場で謝らせてください。
すみませんでした。
今さら謝られても納得できない人もいると思います。
でも、それでも、わたしは北宇治で全国金をとりたい。
わがままかもしれない。でもここにいるメンバーと不満も戸惑いも全部吹き飛ばす最高の演奏をして全国に行きたいんです。
一年間みんなを見ていて思いました。
こんなに練習しているのに上手くならないはずない。
こんなに真剣に向き合っているのに響かないはずない。
北宇治ならとれる。
私たちならできるはず。
だから自信を持って、今までやってきたことを信じて
だから
えっと
私が伝えたいことは…」

(言葉にならない)

が、久美子の想いは充分に伝わっている
静まり返る控え室の中
ダンダンダンと葉月が足踏みする音
パチパチパチとミドリの拍手の音

葉月「私も全国行きたいぞ!」
ミドリ「ミドリもです!」

堰を切ったように、次々と拍手、全国行こうの声があちこちであがる
(しかし真由だけは拍手をしていない)

麗奈「久美子」

麗奈、久美子にファイトの手振り

久美子「それではご唱和ください!北宇治ファイトォー!」
全員「オーー!」

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てな感じで崩壊寸前だった吹部は久美子演説で一気に一つにまとまりました!
その甲斐あってか、北宇治は関西大会を突破。全国に進みます。
そして全国大会を前に3度目のオーディションとなります。

この演説は素晴らしかった
これは晴香やあすかには言えない
優子や夏樹にも言えない
麗奈や修一も言えない
久美子だから言えた
久美子が部長で良かったと心から思えて、震えるような感動と共に、嗚咽まで漏れてしまうような超感動シーンでした

というところで
ユーフォ3期の記事は2回で終わるつもりだったのに、第10話だけで書きすぎました。でもこの回、最高すぎるんですよ!
しかし、この後の3話がまた立て続けに神回で…
というわけで、後もう一回、響けユーフォニアム3について書こうと思います

そして次の曲が始まるのです
#映像作品とクラシック音楽
#響けユーフォニアム
#ユーフォ3期

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