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映画ブロガーら有志23名による「10年代映画ベストテン」発表!

カーテンコール [善意と誠意と優しさ・・・だけ]

2005-11-29 00:01:04 | 映評 2003~2005
水準より少し上くらいの、まあまあ泣ける映画。
ファーストショットの工夫も何もないのっぺりとした映像に、え~~っと少し落胆させられる。撮影監督が故篠田昇氏だったら、いきなり観客の心つかむ映像にしただろうなあ・・・
けれど、そこからの展開は超特急で進む。スクープ、恋人との関係、スクープが悲劇を呼び、博多への事実上左遷、幕間芸人に関する投稿はがき、取材のため上司を説得・・・わずか5分くらい。おもしろくもなんともない説明シークエンス。いや面白くもなんともないところだから超特急で進めたのか。
そんで本題のみなと劇場とかつてそこで上映と上映の間に、ちょっとした芸をやっていた芸人の話。
みなと座の廊下にさりげなく"チルソクの夏"(佐々部清監督)のポスターが貼ってあるのが微笑ましい。
映画館の内装も映像も、どこかノスタルジーを喚起させる美しさがある。
幕間芸人の回想シーンはモノクロ映像で描かれる。回想シーンの常套手段。当たり前すぎるが、まあ効果的。
藤井隆は好演。最初の勝新のまねなんかは絶品だったが、後は直立不動で歌うだけで人気が落ちるのも分かる。「所詮アマチュアの芸だったのよ」という彼を評した台詞が笑える。
後半になって、多分監督が一番力を入れたかったであろう、在日韓国人に対する差別がポツリポツリと語られ始める。
「そういう言い方、無意識でも差別してることになるんだよ」と父親をたしなめる伊藤歩。佐々部監督の力のこもったメッセージ。
ただしこのテーマが出てくるのが、少々唐突な感じがしなくもない。

一番疑問に感じるのが、クライマックスのラストショーとそれに続く斉州島での父娘再開シーン。すぐ次にもってくるくらいなら、なぜショーの時再会させてやらなかったのか?満員の場内に立ち込める熱気と再会がかぶさっていいシーンになったろうに。そのまま再会させずに家族断絶の深さを描くんならわかんなくも無いが直後のシーンで結局再会。
どうせそうするなら、もう少し脚本をひねってほしかった。
たとえば主人公(伊藤歩)がもう一度斉州島に行くと言うシーンをはさんで、斉州島のシーンに移り、タクシーを降りる女の足、父の吹くハモニカ、父が歩いてくる女に気づくとカメラがぐいんと引いて女の全身、主人公でなく娘。それくらいのサプライズを用意してもよかったのでは・・・と思う。
だいたい、"断絶していた父と娘の再会"というものを描く場合、いつどこで再会したか?・・・ってことより、なぜ娘は再会しようと思ったか?・・・の方が重要なのでは。
そういえば、なぜ父が娘を捨てたのか?・・・も全く語っていないし、心理よりイベントを重視した脚本なのだなあ・・・

どこを切っても、55~60点くらいの、まあまあでそこそこ映画。しかし、善意と誠意と人の優しさを信じぬく作品の空気は心地よい。だが善意と誠意と優しさだけでは、映画は作れないのだ。

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