ジャーナリスト活動記録・佐々木奎一

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“残業代ゼロ”法案が今国会提出へ

2015年02月18日 | Weblog

 平成二十七年二月十六日付、auの「朝刊ピックアップ」で記事 
 
「“残業代ゼロ”法案が今国会提出へ」
 
を企画、取材、執筆しました。


  14日の各紙朝刊が一斉に「『残業代ゼロ』法案提出へ 厚労省、来春の実施めざす」(朝日新聞)、「『脱時間給』制へ最終報告 年収1075万円以上 今国会に法案提出」(読売新聞)、「脱時間給、金融・商社が意欲」(日本経済新聞)、「労政審 成果賃金導入の報告書」(毎日新聞)という記事を報じている。

 それによると、厚労省は13日、労働制度改革についての最終報告書をまとめた。この報告書をもとに労基法の改正案を今国会に提出し、来年4月に施行するつもりだという。その報告書の骨子は、年収1075万円以上の専門職を対象に、本人の同意を条件として、何時間働いても残業代や深夜、休日手当が支払われなくなるというもの。

 これは「働いた時間ではなく、成果に応じ賃金を決める『脱時間給』(高度プロフェッショナル)制度」というもので、その目指すところは「労働生産性の向上」で「日本は長時間労働がはびこり、欧米に比べると生産性が低い」ので、「ムダな残業をなくして効率よく成果を出す」のだという(日本経済新聞より)

 なお、この改正法案について弁護士の棗(なつめ)一郎氏は「新制度では、労災の過労死認定基準である毎月80時間以上の時間外労働を命じても合法です。対象者が働きすぎで過労死しても、使用者の責任を問えないことになってしまいます」と指摘。(朝日新聞)

 さらに棗氏は「働いた時間と関係なく成果に応じた賃金のみを支払うことで、ダラダラ残業が減り、皆早く家に帰れるようになって、長時間労働がなくなる、というようなことはありえません。残業の一番の原因は、所定労働時間内では終わらない過大な業務命令やノルマです。(略)わざと所定時間内に仕事を終わらせないで、残業代を稼ごうとする不良労働者がいるなら、所定時間内で終わらせるように命じればよいだけです。規制を外す根拠になりません。今でも多くの企業が成果主義賃金制度を導入しています。それなのに、残業はなくならないし、長時間労働もなくなっていないではありませんか。年収1千万円以上の労働者であれば、長時間労働による過労死や過労自殺をしても仕方がないということにはなりません。新制度では本人の同意が必要とされています。しかし、成果主義賃金体系のもとで新制度の適用を断ったら、賃金は上がらないし、昇進もできなくなるでしょう。拒否できるわけありません。(略)新制度は、日本で働く労働者の命と健康を脅かす危険なものであり、過労死を助長する“過労死推進法”です」と述べている。

 なお、ブラック企業被害対策弁護団HPに、漫画家の佐藤秀峰氏のイラストを使った「ブラック法案によろしく」という漫画が載っている。その注釈には「ブラック企業は元々残業代を支払いません。たくさんの方々がサービス残業をさせられています。その結果、長時間労働がこの国に蔓延しているのです。残業代が無くなれば、今の違法状態が適法になるだけです。ブラック企業は大喜びでしょう」「今のところ年収1075万円以上の方になる想定のようです。しかし、これは絶対に後で広げられます。現に、派遣法について、最初は対象者を限定していたのに、徐々に対象を広げ、ついには原則と例外が逆転してしまった、(略)『小さく産んで,大きく育てる』。国民の抵抗を受けやすい法律を作る際に使われる常套手段です」と指摘している。

 かつて天下の悪法といわれた治安維持法は、普通選挙法と同時に生まれた。この両法案は、“アメとムチ”にたとえられる。今年1月1日には、「過労死等防止対策推進法」が施行された。これは“アメ”で、今回の残業ゼロの法改正は“ムチ”に当たる、といえないだろうか?(佐々木奎一)


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