ジャーナリスト活動記録・佐々木奎一

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路上喫煙禁止条例、マナー推奨の裏に潜む加害性

2013年05月01日 | Weblog

 

2013年4月12日、auのニュースサイト EZニュースフラッシュ増刊号
 
「朝刊ピックアップ」で記事 
 
「路上喫煙禁止条例、マナー推奨の裏に潜む加害性」
 
を企画、取材、執筆しました。
 
 

 けさの産経新聞に「路上喫煙やめて、新人職員らPR」という記事がある。これによると、今から11年前、全国で初めて路上喫煙を罰則付きで禁止する条例を施行した東京都千代田区が、区長や新人職員を動員して、通行人に喫煙防止を啓発するティッシュペーパーを1万個配布して「喫煙マナーの向上」を訴えているという。

 同条例は違反者に2千円の罰金を徴収し、昨年度末までに延べ約7万4千人が処分を受け、過料総額は約1億2千万円になるという。

 ちなみに、この条例は、あくまでも吸殻などのゴミのポイ捨てを防ぎ、マナーを守ることを目的としている。条例施行の02年当時は、受動喫煙の有害性が今ほど認識されていなかったこともあるが、今は時代背景が違う。

 人込みの千代田区内で路上喫煙するということは、必然的に、その煙を他者が吸い込んでしまう。ぜんそく持ちの人間のなかには、そのわずかな煙で咳込み、肺の調子が悪くなる人もいるのである。要するに、路上喫煙は、単なるマナーではなく、加害行為になっているケースもあるのだ。

 千代田区の条例施行後、全国の自治体でも路上喫煙防止条例が相次いでいるが、その目的は、千代田区を踏襲して「マナーを守ろう」という観点が多い。なかには受動喫煙防止をうたう自治体もあるが、肝心の罰則を付けていないケースもある。例えば、繁華街・歌舞伎町のある東京都新宿区では、条例で受動喫煙をさせないよう求めているが、罰則はない。これでは効果は疑問である。

 この風潮は、JT(日本たばこ産業)の広告にも表れている。JTでは「あなたが気づけばマナーが変わる」と銘打ち、電車の吊り革広告やCM、新聞、雑誌の広告などで、マナー向上を呼び掛けている。

 例えば、「ひろえば街が好きになる運動」と題して、吸い殻などを拾う運動を推進したり、受動喫煙についても「人ごみで吸っていた。そこだけすいていた。」「歩く私は、前の人より後ろの人に、煙を吹きかけていた。」「私に手を振る人がいた。煙を払う仕草だった。」「肩がぶつかったら謝るのに、煙がぶつかっても謝らなかった。」といった広告などで、路上喫煙をあくまでもマナーの問題で片付けている。

 それによって結果的に、路上喫煙の有害性、加害性、悪質性を矮小化する効果をはたいているのではないか。路上喫煙をマナーで片付けるのは、11年前の時代認識。今の時代に合わせた新しい条例が必要ではないだろうか?(佐々木奎一)


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