ジャーナリスト活動記録・佐々木奎一

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エイプリルフール報道にみる日本と欧米の違い

2013年04月30日 | Weblog

2013年4月8日、auのニュースサイト EZニュースフラッシュ増刊号
 
「朝刊ピックアップ」で記事 
 
「エイプリルフール報道にみる日本と欧米の違い」
 
を企画、取材、執筆しました。
 
 

 6日付の産経新聞に「『都現代美術館が閉館』→美術誌謝罪 エイプリルフール『しゃれにならない」という記事がある。これによると、4月1日発売の美術誌「月刊ギャラリー」(ギャラリーステーション刊)の記事で騒動が勃発したという。

 それは美術ジャーナリスト・名古屋覚氏の書いた「評論の眼」という記事のなかの次の一文。「東京都現代美術館を閉鎖し、主に都内在住作家による最新のアニメとゲームと、書や工芸などわが国の伝統美術を同時に紹介する『クールトーキョーフォーラム』を同館建物内に新設する方針を、東京都はこのほど固めた」

 この号が発売されると、ネットで驚きや戸惑いの声が上がり、美術館や都に問い合わせが相次ぎ、美術館側は3日に公式ホームページで「全くの事実無根」と否定し、同誌編集部に抗議。同誌は翌4日、公式ホームページ上でお詫びを掲載し、謝罪。雑誌側はエイプリルフールのジョークのつもりだったというが、関係者は「洒落になっていない」とあきれているという。

 なお、新聞社では、東京新聞が4月1日にウソ記事を流していた。内容は、野球の発祥の地は、実はアメリカではなく日本だった、というもの。記事には、鳥獣戯画に似た動物たちが、バットとボールをもっている絵が岡山県玉野市で発見された、とある。そして、野球を国技としたいアメリカは、日本の野球関連の古文書を持ち去って証拠隠蔽していたという内容。

 記事のすぐ下には、「今日はエイプリルフールです」「この記事はウソです」という趣旨の囲みの一文が出ていた。

 ちなみに、4月2日付のTBSラジオ番組「荒川強啓 デイ・キャッチ!」で国際ジャーナリストの小西克哉氏は、海外メディアのエイプリルフール報道を紹介していた。それによると「英国のヴァージン・アトランティック航空では、フロアがガラス張りの飛行機を飛ばします」という報道や、「『匂い検索』といって、検索した言葉の香りが出ることになった」という記事や、「クイーンのボーカリストだったフレディ・マーキュリーが、ダイアナ妃を男装させてオカマバーに忍び込ませていた」といった虚報で賑わったという。

 小西氏は「エイプリルフールは向こうの文化だが、洒落心としてはおもしろいと思う。つまり、どのくらい寛容な心なのか試される。日本と海外で一番違うところは、欧米でも抗議は来るんですよ。そのとき、メディアは謝る。謝る覚悟をしながらやっている。そして、謝ったら、刑事事件に発展することはない。それに比べて、日本の場合は、例えば筑紫哲也さんがエープリルフールをすると、抗議がガンガンきて翌年できなくなってしまう。東京新聞も昔は、『今日はエイプリルフールです』という一文は小さく載せていたが、今年は大きく書いていた。なぜなら、『これはギャグですよ、ジョークですよ』と伝えないと、ものすごいお叱りがくる。エイプリルフールは、世の中、杓子定規になっていることのメルクマール(指標)になっている観がありますね」。

 ちなみに、エイプリルフールの起源には諸説ある。「imidas」(集英社刊)によると、「1564年にフランスのシャルル9世がグレゴリオ暦を採用し、新年のはじまりを4月1日から1月1日に定めたが、一部の人々はわざと4月1日に新年の贈り物をしたり、新年の訪問をして楽しんだ」ことからきているという。その他にも「ギリシャ神話や旧約聖書に由来する」といった説があるという。

 また、「デジタル大辞泉」(小学館刊)によると、エイプリルフールは西洋、もしくはインドに始まる風習で、日本には江戸時代に中国から伝わり、大正時代に「エープリルフール」という言葉が定着したという。

 このように日本でも古くから伝わるのに浸透しないのは、日本の生真面目な国民性にそぐわないからかもしれない。それでも洒落のめすメディアは、謝罪しつつも懲りずに来年も続ける“覚悟”をもつ必要がありそうだ。(佐々木奎一)

 
 写真は、月刊ギャラリー。(MSN産経ニュースより)


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