2013年4月12日、auのニュースサイト EZニュースフラッシュ増刊号
「今日のニュースに一言」で
ジャーナリスト・二木啓孝氏の記事
「二木啓孝が語る、悩ましい〝ネット選挙活動解禁〟」
を聞き書きしました。
7月の参院選挙に向けて、インターネットを使った選挙運動を解禁する公職選挙法(公選法)の改正案が昨日、衆院の委員会で可決された。衆参の本会議を経て、7月にはネット解禁になる予定だ。
公選法の改正は、これまで何度も行われてきたが、今回ほど予測がつきにくい改正もない。インターネットという、瞬時に世界を駆け巡り、誰が発信したかもわかりにくいこのツールでは、様々な不安がある。
一つは、基本的に、良識に頼るしかない、ということだ。法案では、「なりすまし」を防御するため、メールでの投票呼びかけは候補者と政党のみで、有権者は禁止とし、メールに氏名の表示を義務付ける。ウェブサイトにもメールアドレスなどの連絡先の表示を義務付ける。また、誹謗中傷をブロックするため、選挙期間中もHP上で反論可能にする。不正アクセスについては刑事罰を科す。
だが、すでにほかの犯罪でも明らかなように、「技術開発とテクニックのいたちごっこ」がネットの社会である。なりすましや偽ブログ、不正アクセスをブロックするといっても、立ち上げて瞬時に姿をくらませてしまったり、サーバーをいくつか介してなりすました場合には、摘発が難しい。さらに、「炎上」という集団的誹謗中傷もブロックすることは難しい。要するに、ネットの利用者の良識にかかっているということだ。
もう一つは、ネットの利用率が中央と地方では大きな差があるということだ。例えば、東京でのインターネット利用率が84.1%に対し、青森では65.7%。都市部と地方部では概ね20%前後の利用率の差がある。公選法では、有権者に公平に情報がわたることを前提にしているが、ネットのツール普及率によっては、この前提が崩れるかもしれない。
そうはいっても、ネット社会のなかで選挙だけが紙と肉声だけに頼るというのは限界である、というのも事実だ。ネット選挙の解禁は、悩ましい問題を抱えながらスタートすることになる。