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砂漠の音楽

本と音楽について淡々と思いをぶつけるブログ。

夏の曲特集

2018-07-24 10:27:00 | 日本の音楽


暑い、暑すぎる!!(さいたま名物「十万石饅頭」のノリで)
あまりの暑さにぐったりして更新が滞っておりました。
我が家の観葉植物ボディくん↑(インドボダイジュ)も、この熱気でぐったりしています、悲しい。
もう一人のモンちゃん(モンステラ)はすこぶる元気なんだけどな、どうしてこうなった。



こう暑いと、夏の曲とか聴きたくなりますよね。ビールも飲みたくなりますよね。
夏の曲を聴きながらビールを飲みたくなりますよね。
というわけで本日は夏の曲特集、すべて日本語の曲どす。


なつやすみ(終)/ザ・なつやすみバンド


夏と言えば彼ら。以前もこのブログで紹介しました。
これは1stの1曲目、毎年夏になると聴きたくなる。途中の笛、マンドリンが好きです。
今年の秋頃に新譜を出すとのこと、またライブに行きたいな。


Summer Soul/cero


東京のシティポップは俺たちだ、cero。
PV見てて思うんだけど、ハー本当にオシャレ!荒内さんが運転する姿が格好いい。
こういう音楽聴いてたらモテそうだよな~と思って聴いてたけど全然モテませんでした、完。


サマージャム ‘95/スチャダラパー


20年過ぎても色あせない名曲。最近誰かがカバーしてましたね。
心地よいビートに乗って語られる、夏の日常的な歌詞。ANIのおちゃらけが好き。
「"この曲好き"なんて言われちゃう感じね(笑)」とか「そーなるってことはもーあれだ、熱めのお茶だ」とか。
そこはかとなく嬉しそうに言うのがまたかわいらしい。


ワイルドサマー/ビートでゴーゴー/Flipper’s Guitar


彼らの中でも1、2位を争うふざけた曲。
マッチョマンに対する熱い風評被害、気持ちはわからんでもない。
昼の海辺ではしゃぎながら聴きたい。


甲州街道はもう夏なのさ/Lantern Parade


ソロの人、根暗な七尾旅人って感じ。根暗かつセンチメンタル、好き。
何度も「もう夏なのさ」と言っておきつつもフルート、シンセがどこか涼しげな雰囲気。
夜にぼんやり散歩している時に聴くと心地よい。


Sunset/AIR


元spiral life、AIRことくるまたにいさん。一時期オーストラリアに行ってて、その頃に出したものだったと思う。
彼の夏ソングは「夏の色を探しに」もあるんだけど、こっちの方が好き。
ダサさと格好よさが7:4くらい、絶妙なバランスで曲を作る人だと思う。


クレイジーサマー/キリンジ


「スウィートソウルEP」に収録されているヤスの曲。シンプルで気だるく、美しいメロディ。
キリンジはベタに季節を感じさせる曲が少ない気がする。
浜辺で夕焼けを見ながら聴きたい、ラムコークとか飲みつつ。


あの夏へ/久石譲


日本語…?
それは置いといて、映画「千と千尋の神隠し」のメインテーマです。
これ聴くとすごく胸が締め付けられるような気がする。やっぱり夏に聴きたい曲。
関係ないけどいつかジブリを映画館で再上映してくれないかな、千と千尋は10回くらい観に行きたい。


そんなわけで暑すぎるから記事も短め。もう何もやる気が起きません。毎年この時期になると、夏休みの宿題をヒイヒイ言いながら9月1日にやっていたのを思い出します。今年もだらだらしているうちに過ぎていってしまうんだろうな。でもこうやってぼんやりしている時間も人生には必要なのだよな、と自分に言い聞かせつつ、時にはセンチメンタルにもなりつつ。
余談ですけど、夏が切ないのはどうしてなんでしょうね。人の一生を四季に例えると、夏が青年期ということになるんでしょう。でもそんな夏も気づけばあっという間に終わってしまう。そう考えると「人の一生が刹那的」ということを、どこかで感じさせるからなのかな。まあそんなこと考えても仕方ないから、今夜は熱の余韻に浸りながらビアでも飲もうか。

cero「Poly Life Multi Soul」ツアー

2018-06-19 22:49:13 | 日本の音楽

色んなことが終わってないけどいいや!
初めてのライブレポ、いっくぞー!!!


昨日雨の中、ceroのライブに行きました。新作『Poly Life Multi Soul』のツアー、千秋楽。場所はZepp Diver City、お台場ですね。この会場には初めて行きました。道のりがちょっとオシャレだったので蒸発しそうになりましたが。事前に銀だこでたこ焼きを食べて、いざライブへ。
思ったより会場は広くないな、という印象。昨年Trafficのイベントで行ったStudio Coastの方が横に広かった気がする。人が多かったし歳が歳なので、私はPAさんの近くの位置でのんびり聴いておりました。

ceroのライブに行くのは4回目になります。今回が最高とは言わないよ、きっともっといいライブをやってくれると信じているからね(何様)。
そんなわけでたくさん踊りました。ダンスのセンスは皆無なのですが、たくさんステップを踏みました。やはり今作はライブで映える曲が多かった。それから高城さん(Vo)の声の伸びがすごかった、途中でちょっとかすれていたけど、前より格段にうまくなった気がする。あっでもMCのぐだぐだ感は相変わらずでした(笑)


ゲヘヘヘ、おじさんはTシャツも買ってしまったよ。

曲の方はというと、アルバムに収録されている曲はほとんどやっていました。3枚目の『Obscure Ride』からも何曲かやっていたかな。逆に言うと1枚目と2枚目からは1曲ずつって感じでしたね。新譜出してのライブだから仕方ないけど、昔の曲ももっと聴きたかったな。このメンバーでの「マイ・ロスト・シティ」とか「ロープウェー」とかさ。

すごく良かったのは「Driftin’」と「薄闇の花」、それからアンコールの「街の知らせ」。もちろんタイトルトラックの「Poly Life Multi Soul」もすごくよかった。それにサポートメンバーの古川麦氏のトランペット、随所でいい味だしていたな。霧のくすぶる遠い街の風景を思い起こさせるような、切ないメロディを吹いていました。ガットギターも上手かった。
ちょっと残念だったのは「ベッテン・フォールズ」(ギターのハイトーンが少し強すぎた)、「Double Exposure」(シンセの音がなんか違う感じ)。あと全体的にドラムのハイハットがクリアに聞こえなかった気がします。いろんな音が鳴っていたので、どこかで音域的にぶつかっていたのかな。まあでもそれは個人の問題なので、他の皆さんがどうかはわかりません。

一番良かったのは「大停電の夜に」です。演奏はもちろんのこと、橋本さん(Gt)のコーラスがとても良かった。さすが平成のスナフキン。この曲が収録されているアルバムは2011年1月リリースだからまったく関係ないけど、やはりこの曲を聴くと東日本大震災のことを連想してしまう。だって不思議なくらい歌詞があの頃とマッチしているから。不謹慎な話かもしれないけど、先日の大阪の地震もあって、ライブ中に3.11のことを思い出してしまった、不覚にも少し泣いてしまった。あの日のこと、あの地震があってからの日々。

大停電の夜に
君は手紙書く手をとめ
窓を開けて目を閉じ
街のざわざわに聞き入る


2011年3月11日、私は後輩のライブに出るために、レッド・ツェッペリンのコピーをやっている時期でした、ひたすら「Achilles Last Stand」を聴いていたな。地震があった時刻はコンビニにいて、目が合った黒人にIt’s earthquake!!と言ったら「地震だね、でかいね」と普通に日本語で返されました。自宅まで帰れずに、ばったり会った友達の家に泊まったっけ。当時付き合っていた女の子とは別れてしまったな。

普通の会話を愛している
手を振る友達 淋しそう


直接被災された方の痛みが、そんな生易しいものでないことは重々承知です。でもこうやってあの地震が生み出した悲しみ、さみしさ、そういったものを時々思い出すことで、誰かにもう少し優しくなれる気もしたのです。


また絶対ライブ行こう。ライブがあるたびに行きたいバンド、そんなバンドと同じ時代に生きているのは嬉しい限りです。東日本の震災でも今回の地震でも、被災された方々のご無事や、亡くなられた方のご冥福をお祈りしております。自分が特別なにかできるわけではないけれども、自分ができることを日々積み重ねて生きております。

KIRINJI「愛をあるだけ、すべて」

2018-06-16 23:54:55 | 日本の音楽

時間がないのでブログを書きます。

梅雨入りしてしばらく経ちました。関東は雨が降ったり止んだりを繰り返しております。この頃忙しくてものをじっくり考える時間がありません。まったくないと言えば嘘になりますが、酒を飲んだり音楽を聴いたり、些末なことですぐに空白が埋められていく。
休日に昼寝したらとうに夕暮れの闇に包まれていたような、「今日も何も為さなかった」と身を焼かれる喪失感。それはとても恐ろしいことです、少なくとも私にとっては。そんな話はまあいいか。



久しぶりに何か書きたくなりました。
というわけで今回はKIRINJIの最新作、『愛をあるだけ、すべて』。梅雨入りした直後の、6月13日にリリースされたばかり。早速聴きこみましたので、その感想を少しばかり。

率直に言ってすごくいいアルバムですよね。耳触りがとても良い。ダンス、ヒップホップの要素が色濃く表れつつも、ポップなメロディやクオリティの高い演奏。曲単位でも、アルバム全体でもまとまりが良い。途中で入る弓木さんヴォーカルの曲も胸がキュンとするし、千ヶ崎さん作曲の「悪夢を見るチーズ」(M6)もコミカルというかシュールで、うまい具合に変化球を入れている。
今までの彼らにないジャンルの要素を貪欲に取り入れて、なおかつ今までのポップセンスをうまく融合させている。まだまだ野心を感じさせるような一枚ではないかと思います。M2「AIの逃避行」やM8「ペーパープレーン」の、相変わらずのカッティングギターも好きです。


本作の特徴。
今までの作品に比べて、KIRINJIのほぼ全ての作詞作曲を担っている堀込高樹氏の気持ちが見え隠れしているのではないかな。例えばM4「時間がない」は、タイトルはもちろんそうだけど、曲中にいくつか気になるフレーズが出てきます。

あと何回、君と会えるか
あと何曲、曲作れるか
あと何回、食事できるか


さりげなく挟まれていますが「あと何曲、曲作れるか」という歌詞は、紛れもなく高樹氏の本音ではないでしょうか。普通の人はそんなこと思わないもの。それから

サヨナラなんて「なんとなくだね」
遠い花火も色褪せる
大切なものを見失ってしまいそうさ
僕が見てきたすべてを話して聞かせたい


というサビの歌詞、とても好きなフレーズ。ここにも年齢を重ねた「焦り」がほのかに感じられます。サヨナラなんて「なんとなくだね」というのは、もしかしたら弟の泰行氏が離反したこと、あるいは昨年12月にメンバーのコトリンゴ氏が脱退したことも影響しているのかもしれません。

KIRINJI「時間がない」Teaser

一応曲を貼っておきます。短いものしかないけど。ちゃんと買ってね。

今作で一番好きなのはM3「非ゼロ和ゲーム」。
4つ打ちですごくポップな曲ですが、「非ゼロ和ゲーム」というゲーム理論の用語(確か)をずっと説明しています。「誰かの利益は必ずしも他の誰かの不利益に結びつくのではなく、誰かの利益にもなりえる」という意味のようです(たぶん)。
今までも妙な言葉を使うことにある種の執着を見せていた高樹氏ですが(「過払い金が戻ったから(雲呑ガール)」「それ個別的自衛権で対応できるでしょ(絶対に晴れてほしい日)」とか)、ここまで全面的に押し出してきたのは初めて。曲中でずっと意味を解説しているし、「ぐぐれよ」とか「わかんない」と歌っている。笑っていいのかしら。

とはいえ、どこか博愛主義に聞こえなくもない曲。「一枚のピザ、みんなでシェアすれば誰も泣かない、それがいいに決まってる」とか、「利他的に」という歌詞が出てくる。かつてないほどに優しい高樹氏がいるのです。

それから、彼はこうも歌っています。

欲張りなやつは寂しがり いつだって何かに怯えてるよ


たんに欲深い金持ちのことを歌っているように受け取れますが、高樹氏にもこういった面があるのでは、と思います。
今までにない「いいもの」を作りたい。そう思うのはアーティストの性(さが)です。でもきっと高樹氏は、そういう思いが人一倍強い気がします。だからこそ、上述したように新しい音楽の要素を貪欲に取り入れているし、すごく計算して作曲している。この歌詞は、高樹氏自身をよく表しているのではないでしょうか。
今作ではリズムマシーンを使ったり、バスドラをサンプリングしたりして、ドラムの楠さんはスネアやタムだけ叩く曲もあったようです。弓木さんの歌声が入るタイミングも、きっと計算されているのでしょう。いい作品を作るために―言い方は悪いけれど―メンバーをパーツのように利用している。見方によってはそう考えることも出来るかと。

少年漫画によく出てくる「目的のためなら手段を問わないキャラ」っていますよね。
私は高樹氏がそういう人なんじゃないか、と思う。そうやって、弟やコトリンゴ氏のように離れていった人もいる。それがまったく寂しくないと言えば、嘘になるでしょう。歳を取ってそういった後悔もあるのかな、なんて思ったりします。だからなのかな。明るい曲、思わず体が動き出すようなポップな曲が多いけれど、アルバム全体を通して聴くと何故か「悲しい」気持ちに捉われてしまいます。

高樹氏は来年で50歳になります。
漱石が胃潰瘍で亡くなったのも50歳でした。若い頃の漱石は「とにかくやめたきは教師、やりたきは創作」と友人の高浜虚子に書いていました。そういった焦りみたいなものを、高樹氏も感じているのではないか。だからこそ、このアルバムを通して聴くとなんだかさみしいというか、悲しい気持ちにもなるのかな。でもすごくいいアルバムだった、悲しいけどいいアルバムだった。もちろん、私の考えすぎなのかもしれませんが。


あと何曲、彼らの曲を聴けるんだろう。
ブログを書いていたらそんなことを考えてますます悲しくなってしまった。でも私は彼らの音楽が、高樹氏の目指す音楽が本当に好きなんだな、と思う一枚でした。興味を持った方はぜひ手に取ってみてください。

cero「Poly Life Multi Soul」

2018-05-23 14:36:03 | 日本の音楽


男もすなるブログというものを、男である私もしてみんとてするなり。
今回紹介する作品は全然わからないなり、それでもわからないなりに書こうとするなり。



本日は先週発売されたceroの4枚目『Poly Life Multi Soul』を。
以前にも彼らのことは紹介しましたね、その時の記事はこちら

今作、皆さんはどう感じましたか?
私は最初に聴いた時、正直「さっぱりわからん…」と思いました。もちろんM2「魚の骨 鳥の羽」は前から聞いていたし、M3「ベッテン・フォールズ」やM8「Double Exposure」はすぐビビっときました。でもなんだか途中でレイモンド・カーヴァーの短編「夜になると鮭は…」の朗読が入るし、全体的にリズムは複雑だし、前作までに比べてキャッチーな曲が少ないようにも感じられたのです。

いや、これは私の理解が浅いせいに違いない。
繰り返していくうちにきっと良さがわかるはず!!
そう思って1週間、何度も繰り返し聴きました。
そして一つの結論に到達したのです。



さっぱりわからん…!!

ん?身も蓋もない?本当は考えてないんじゃないかって?やかましいわ!
このアルバムのタイトル『Poly Life Multi Soul』が物語っているように、おそらく無数の生命や魂のことを曲にして歌っているわけで、そんなに簡単にわかるものじゃないってことなんです。
え?こじつけ?そうやって人のことばかって言った人がばかなんですー!な、泣いてねーし!


さて前作は「砂漠」がひとつのキーワードでしたが、今回は「川」のようです。歌詞に「川」「水」といった単語が何度も出現するし、夜になると鮭は川を出て街にやって来るし、「遡行」や「Water」というタイトルの曲もあります。では彼らは、この言葉で何を表現しようとしているのでしょう?

川には絶えず「流れ」があります。いくつか小さな支流が集まって、大きな「流れ」を形成する。その点で人とも共通しています。家族や友人などの小さな集団があり、考え方や価値観を共有する大きな集団があり、それが「流れ」を形成しています。時間の流れであったり、社会の流れであったり。人はみな、大きな流れのなかで生きています。

また、「川」は人が定住する最初の場所でした。世界史で習った四大文明は、常に大きな川の側で発展しました。いいかえれば、川は「生活」や「文化」の源でもあるのでしょう。人々の営みが芽生える場所だったのです。そしてその営みが脈々と続き、今の私たちの生活があると言えます。

そういうこともあって、歌詞の中では「Modern Step」とか「ナトリウムランプ」とか近代的な言葉も出てくるんだけど、どこか「神話」や「おとぎ話」を歌っているようにも感じます。それはM9「レテの子」がギリシャ神話に出てくる「忘却の川 Lethe」に由来することや、M3「ベッテン・フォールズ」が日本神話に出てくる「別天つ神(コトアマツカミ)」を連想させるからでしょうか。M2「魚の骨 鳥の羽」でも

私たちのなかを せわしく蠢く何か

と繰り返し歌っている。もしかしたら、地下水脈のごとく続いている人間の神話的、無意識的な面を歌っているのかな、ユング派の語る「集合的無意識」のような。ちょっとこじつけかもしれませんが。


ずいぶん頭でっかちな話になってしまった。
ここらで音楽について。

前作からその片鱗は見えていましたが、アルバム全体を通してリズムが非常に複雑です。1つの曲の中で4/4拍子や6/8拍子が切り替わったり、バイテンになったり。ベースやドラムが裏拍で入ることも多いし、リズム隊が敢えてカッチリ合わせていない、それぞれが別のタイミングで別のことをしているからか、多層的な作りになっています。このへんもまさにアルバムタイトルっぽい。

サポートメンバーが変わったのも大きく影響しているのでしょう。女性コーラスが入ったこともあって、アルバム全体を通して艶めかしさがあります、ウェットな感じがにじみ出ている。それから耳を凝らすと、いろんなところでいろんな音(パーカッション、コーラス、シンセ)が聴こえてきて、隠し味になっている。ラーメンにコショウを入れた時みたいに、結構大きな役割を果たしているんじゃなかろうか。


ここまでを読むと「歌詞が難しくて、リズムが複雑なのとかぶっちゃけ好きじゃなぃ。マヂ無理…チャゲアス聴こ…」と思う方もいるかもしれません。とはいえ美しい曲、ノリの良い曲、思わずステップを踏みたくなる曲も多いのです。
個人的に好きなのはM3の「ベッテン・フォールズ」、M4「薄闇の花」、ここは曲間のつながりもすごく好きです。それからかわいらしいシンセで始まるM8「Duble Exposure」はAメロディが綺麗だし、タイトルトラックのM12「Poly Life Multi Soul」は、鍵盤の音が儚く、寂しい感じがしていいですね。ドラムが刻むリズムも素敵。
時折繰り返される謎のフレーズも好きです、「このテンポでこのテンポで 踊ろうよさあ踊ろうよさあ」とか「はるか川上の光を見よ」とか。
残念ながらYouTubeには「魚の骨 鳥の羽」しか音源がありませんが、我こそは「わからん!」と思いたい方は、ぜひ手に取ってみてください。


本作の率直な感想を書くと、「これもいいけど、なんか違う」です。Radioheadの『Hail to the Thief』を初めて聴いた時と似ている。
自分が好きなミュージシャンだからと言って、すぐ☆5をつけるように、無理に理想化して褒めあげたくはない。それに本作が10年20年経っても聴き継がれる名盤かどうかと言われると、自分のなかではうーんって感じです。ハードル高すぎるかな、前作がよかったのもありますし、途中で出したシングル「街の知らせ/ロープウェー」がすごく好きだったのもある。あの路線なのかな~、と思ってたら良くも悪くも期待を裏切られたというか。

でもひとまず6月に彼らのライブに行く予定なので、それに行くまで判断は保留です。どうやってライブで表現するのか、彼らの生み出す「流れ」がとても楽しみです。

toe「For Long Tomorrow」

2018-05-13 07:39:01 | 日本の音楽

日曜の朝になぜ私はブログを書いていますか?


これから午前にお勉強的な用事があり、午後と夜には勉強会があります。私は何のために生きていますか?
さて本日はtoeの2ndアルバムをご紹介。「トー」と読みます。日本のポストロックバンドです。
ポストロックっていったい何?という方に説明しますと、郵便ポストを楽器で取り入れたバンドのことです。
あの赤いポストを叩いたり撫でたり、お葉書出したり。それが案外いい音がして。
冗談です、今3秒で考えた嘘です。

そんな激寒な茶番はおいといて。
「post(~以後の)」という言葉が表すように、従来のロックのコード進行とかリズムとかに捉われない、新たな音楽のジャンルのことらしいです。しかし「ポストロック」という言葉自体は結構前から使われていたみたいで(初出は1990年代)、もうあまりポストって感じではないんですよね。そのへんは古くなっても新幹線と言われているのにも似てます、いったいいつまで新しいつもりなんだお前は、と。
若干話がそれましたが、「ポストロック」は、今ではしっかり固有のジャンルとして定着しておるのです。

日本にもポストロックのバンドが結構いますよね、LITEとかmouse on the keysとか、どれも格好いい、そして海外でも人気があったりする。でも自分が一番好きなのは彼らtoeなのですね。なぜかというと自分でも良く分からないんですけど、聴いていると頭の中が真っ白になっていく感覚が生じて、とても心地よいのです。まるで音の波に攫われていくような。それはあなたが疲れてるからじゃないの?と言われるとあまり自信が持てないんですが。


さてこの『For Long Tomorrow』、2009年リリースです。前のフルアルバム『the book about my idle plot on a vague anxiety』から4年後の作品になります。しかしこのタイトル、めっちゃオシャレじゃない?「vague anxiety」って、ポストモダンだよな。ポストモダンの不安だよな。相対化が進み過ぎて自分の輪郭がどんどん失われていく。自分の存在が茫漠としたものになっている。
え?安直に自己投影しすぎ?やかまわしいわ。
そうやって自分の解釈によって己という存在を確かめたり、拡張したりしていくのが現代だから。
デリダもそう言ってるでしょ!(言ってない)

本作に話を戻すと、前作と随分雰囲気が異なっています。非常に聴きやすいんですよね。聞き流すこともできるというか。50分あるのにあっという間に終わってしまう。もともとポストロックのジャンル自体があまり歌を伴わない、というか歌を楽器の一種として取り入れているところがあるので、言葉の意味が押しつけがましくないのもいいのです。言葉の意味にとらわれないから、彼らは海外でも人気があったりします。

さっくり曲紹介。
M4「エソテリック」
Toe - エソテリック (Esoteric)


調べたところエソテリックという高級オーディオメーカーがありますが、このことを意味しているかはわかりません。
イントロのギターが非常にクール。そしてドラムが格好良いのは言わずもがなですが、そこに絡んでくるベースが有機的で、気持ちいいです。

M6「two moons」
Toe - Two Moons

ガットギターの音色がとても美しい曲、随所で入ってくるハーモニクスも良い。
2つの月、というタイトルはどういう意味なんでしょうね。どうしても村上春樹の『1Q84』を思い浮かべてしまうけど。
拍子が4/4だったり6/8だったり細かく変わるのに、慌ただしさが感じられない、しっとりしたいい曲です。雨の日に良い。

M10「グッドバイ」
TOE - グッドバイ


音源はライブのもの。アルバムでもそうですがゲストボーカルに土岐麻子が参加しています。
本作の前に出していたepの「グッドバイ」もいいけれど、こっちはこっちでいいな、と。
土岐麻子の声は好きなんだけど、自信持って歌ってる感じがして「また次の不安か umm...」と歌ってても微妙に説得力がないというか...いやいやその声は自信持っていいですよ、と言いたくなる。余計なお世話か。
一方山嵜さん(Gt)が歌っていると、無骨だけどそれでいて儚げで、大の大人が「また次の不安か umm...」とか歌ってるのが母性本能をくすぐりますよね、マジかわいい。

これより前に出していたEPよりも、全体的に丸みのあるサウンドな気がする。
EP版もかっちょいいです、ドラムが入ってきた後のハイハットの「スタスタスッター」て部分は、ドラえもんが歩いている時の効果音みたいにも聞こえますよね。なんでもないです。

一応EP版の音源も貼っておきます。
toe - グッドバイ PV / "Goodbye" Music Video


3:20頃のドラムが好きです。こっちの方が好き勝手やっている感じがする。

彼らの演奏について。
音自体はクールというか、打ち込みだったりシンセだったり無機質なものも多用しているし、どこか冷たいトーンなんだけど、非常に「生きている感じ」がして好きです。
それは単にドラムの手数が多いとか、演奏が上手く絡み合っているとかではなくて。
うまく言葉にならないんだけど、作り手の息遣いが聞こえてくるような、そういう演奏なのだと感じています。
そういうお前はちゃんと生きているのか、と問われるとvagueなanxietyが襲い掛かってくるわけですが。

あ、もうこんな時間だ。午前の用事に行かなくては。
また次の用事か umm...


余談
長いこと迷った末に、遂にapple musicを契約しました。これむちゃくちゃ便利ですよね、やばい。便利すぎて鼻血が出そうになってしまった。the pale fountainsの音源とかもすぐ手に入れられてやばいし、あー今これ聴きたいけど手元に音源ないなーってなってもすぐ聴けて鼻血が出ます、失血死しそう。もちろん無い音源もありますけどね、念仏とかね。

これからは田舎でも音楽に苦労しなくなるんだろうな、どんどん便利な世の中になっていく。それはそれで、どこか悲しい気もする。それは「昔はカセットにダビングしてね」とか「レコードがね」とか「蓄音機でね」と言っていた人が抱く感傷と同じなのでしょう。何かを得るということは何かを失うことなのですね、きっと。逆もまた然り。昔田舎のCDショップでToolとかNumber GirlのCDを取り寄せていたのが懐かしい。

しかしapple musicには一つ問題点がありまして。自分は携帯で音楽を聴く時、ONKYOのアプリで聴いていて(その方がイコライジングが細かくできる)、ダウンロードした音源はそっちで再生できないみたいなので、かなりがっかりです。iPhoneのがっかりイコライジングでtoeを聴きたくないよなぁ、じゃあちゃんとCD買うしかないんだよなぁ...(ステマ)