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砂漠の音楽

本と音楽について淡々と思いをぶつけるブログ。

東京事変「大人」

2019-02-14 10:42:19 | 日本の音楽


むわぃにちむわぁいにち僕らは職場の
デスクに座って いやんなっちゃうよ
ある朝 僕は仕事の合間に
ブログの記事を 書きだしたのさ…(ダメ野郎)


そんなわけでブログ書きます、約1ヶ月ぶり。皆さんお元気ですか?私は元気じゃないです、どうもありがとうございます。えっ、急にそんな大金受け取れません!あっ強引に財布の中にお金を突っ込まないで!!なんとその札束も!!!いわんやスーツケースの中までいただけるんですか!!???これでもう週に6日も働かなくてすむぞ!!!!!!
…とか考えて生きてます、生きるのって楽しいね、ハハハ。


さて今日は東京事変の『大人』。彼らの作品ではこれが最高傑作だと思います。なんと言っても作品のまとまりがすごい。1曲目からラストまでの44分間、ほとんどテンションをキープして聴ける。その理由は、『大人』というタイトルだけあって、シリアスな曲が多いからなのでしょう。
前作『教育』も次作『娯楽』も好きなんだけど、ちょいちょいコミカルな曲が入ってきますよね、「母国情緒」「黒猫道」とか。嫌いじゃないけど、「入水願い」や「金魚の箱」のようなアグレッシブな曲とのギャップがあるので、聴いているときに気持ちを切り替えるのがやや難しいのです。でもこの作品は一貫してシリアス。「修羅場」や「雪国」はもちろん、「透明人間」のギターフレーズやBメロの歌い方は軽快だけれど、歌詞が伝えてくる世界は真剣そのものです。

曲と曲のつながりも良い。特に好きなのはM1「秘密」~M5「修羅場」までの流れ、これはもうほとんど完璧といってもいいくらいだし、M7「歌舞伎」~M8「ブラックアウト」も、アルバムのハイライトに向けて盛り上がっていく感じがあって好きです。その後「黄昏泣き」で一度トーンダウンして、屈指の名曲「透明人間」と続く。どうですかこれ。名盤ですよ奥さん。お宅にもおひとついかがです?
もちろんほとんどの曲が好きなんだけど、いくつか選んでさっくり紹介。

M3「化粧直し」
お洒落コードを使ったりトライアングルが鳴ったり、ボサノバ調のお口直し的な曲。でも「あなたに会って孤独を知った だけど失った今 私は初めて本当の一人」というサビのフレーズやメロディが好き、流れるような鍵盤もいい味出してる。後半ブレイクビーツっぽくなるのも格好良い。

東京事變 化粧直し



M9「ブラックアウト」
停電の意味もあるんだけれど、おそらく飲酒しすぎて意識や記憶が消失する現象のことを指すのだろう。そう思うととても身近に感じる、おや何故だろう。
「素面になってしまいそう」「もっと酔って居たい」と歌われていて、やけっぱちというか、破滅的な感じの曲。やはりこういう歌を歌わせたら椎名林檎って本当にうまいなと思う。サビの進行が一気にラテンというかサウダーデを感じるノリになって、歌詞は破壊的なのに曲調がポップ、でもうまく馴染んでいるのがすごい。そういえば前作の「お祭り騒ぎ」もサビはラテン系でしたね。アウトロのチェンバロっぽい音が好きなんだけど、ハンドクラップは蛇足だと思う。亀田さん好きだよな、ハンドクラップ入れるの。

Tokyo Jihen - Blackout (Domestic Virgin Line)



M11「透明人間」
4枚目の「能動的三分間」と並ぶ、事変の最高傑作といってもいいのではないか。最近何かのCMに使われてるみたいですね。サビのベースラインが好き。事変で弾いていて楽しい曲第2位(私調べ。1位は『娯楽』の「キラーチューン」)
サビのピアノはきらきらしてるし、全体的にドラムとベースの絡みがすごく良いし、ギターは何やってるかよくわかんないし。聴いていて耳が喜ぶ。耳が欣喜雀躍して歓天喜地した挙句に跳梁跋扈する。嘘です。
それから。なんと言っても歌詞が素晴らしい。正確なところはわからないが、勝手にいじめとか、仲間外れにされている人の歌だと解釈している。なんだか希望をもらえる不思議な歌詞。いくつか共感できるところがあって、例えば2回目のAメロ

何かを悪いというのはとても難しい
僕には簡単じゃないことだよ


何気ないこのフレーズがとても好き。シンプルな歌詞なのになぜかぐっときます。実際、何かを本当に悪いと思ったり、心の底から憎んだりすることって難しいですよね。感情的になることもあるけど、少し時間を置いたり、相手の立場も考えたりすると、真剣に憎むのって本当に難しい。もちろん憎んでしまった方が、仮想敵を作ってしまった方が楽だけど。それでいいのかなっていう。
この歌の「僕」が、心根の優しい透き通った人間であることを表しているように思う。できれば自分もそういう人間でありたい、そう思わせる曲です。

Tokyo Jihen - 透明人間 (Invisible Man) from 'Adult' (2006)



最後の曲の「手紙」も好きです。「血管」のことを「けつかん」と言っていて、ん?と思うけど。

大人になった私たちは今すぐ答えが欲しいよね

という歌詞も素敵だし、実際その通りだなと思う。でも現実にはすぐ答えの出ない問題ってたくさんあるし、あれこれ迷うのってとても大事です。私はそれを「無駄」とは言い捨てられない。でも世の中はスピーディに、効率的になり、無駄のないものがどんどん求められる世界になっているわけで。そんなこと言い出したら我々が生きてるのなんて全部無駄だと思うけどね。数億年後には地球はまるごと太陽に飲み込まれるのだし。無駄無駄無駄ァァ(燃えるゴミは月・水・金)。
利益を求める戦略としては大事だと思うけど、それはあくまでビジネスモデルであって、そのモデルを拡充して自分の生き方に当てはめていったら本末転倒になりません?という気もする。あれ、そう思うとなんで週に6日も働いているんだろう???自我がブラックアウトしそう????

話を戻します。紹介した曲以外にも「喧嘩上等」のドラムのスティック叩くところとか、「修羅場」のハイハットのリズムとか、ちょいちょい歌メロにベース、鍵盤、ギターがユニゾンする演出とか、このアルバムの好きなところを挙げていくと限がないです。今聴いても色褪せない名盤だと思う。椎名林檎の歌い方も全体的に情感がこもっていて良い、「修羅場」とか「雪国」とか殺されそうな感じすらするもの。


何かを「悪い」というのは難しいけど、「良い」「美しい」というのはもう少し簡単なんですよね。そういう言葉を使って生きていきたい。そしてこのアルバムは本当に「良い」です。久しぶりに聴いたらやっぱり感動して欣喜雀躍して(ry

サカナクション「新宝島」

2019-01-11 17:04:10 | 日本の音楽

あけましておめでとうございます。は?何がめでてえんだよ!!(謎ギレ)
今回は久しぶりに単曲の紹介。ハッピーニューイヤーということで、「新宝島」です。えっ、強引…?仕事に戻ったアナフィラキシーショックで疲れているんです、堪忍してクレペリン…。



さて今日はサカナクションの「新宝島」。最近はDeep PurpleとAC/DC、そしてこの曲ばかり聴いてました。余談ですが、みなさんは気に入った曲をリピートする派ですか?それともアルバムを通して聴く派ですか?私としては、リピートすると飽きちゃいそうであんまりやりません。だいたいアルバム通して聴きます。でも今回珍しくリピートしています。そのくらい曲が良い、飽きがこない。

この曲について。彼らにしては珍しくギターソロ、それも歌メロをなぞる比較的ベタなソロがあります、私はソロ前のギターがしゃかしゃかコード弾いてる部分の方が好きだけど。あとベースが地味です。目立つのは最後のサビ前くらいでしょうか。サカナクションと言えば渋くて程よいベースラインが大きな特徴なんですけど(「Yes No」とか「ナイトフィッシングイズグッド」もそうだよね)、この曲は裏方に徹しています。ギターもベースも、メロディの良さを生かそうとしているのかな。

最大の特徴。この曲ではイントロの後半からAメロ、サビにかけてシンセ(?)なのか打ち込みなのか、「トッタットッタ タッタッタッ タタタ」という音がずっと流れています。バスドラはほとんど四つ打ちなんだけど、途中でこのリズムに重なるところがあってそれが最高に気持ちいい。こういう特定のフレーズをこれでもかと入れてくる演出、最近珍しいなと思います。ぱっと思いつくのはくるりの「ロックンロール」で、こちらもギターがイントロからサビまでずっと同じフレーズを弾いている、苦行かな?よほど慈悲の心を持っていないとこんなこと引き受けられませんよ…恐るべし大村達身…。
彼らは他にも「ばらの花」のピアノ、「ハイウェイ」「Go Back To Chine」のギターでおんなじようなことをやっていますし、キリンジは「きもだめし」で、□□□は「デート」で似たことをやってます。こういう演出、好きなんですよね。「あれ!?イントロで使われたフレーズがAメロでも!サビでも!!しかも違うコード進行に馴染んでる!!!」と気づく瞬間、最高に気持ちいい。なんだか興奮してきた。

もっと他のアーティストもやっていると思うんだけど、なかなか思いつきません。でも絶対先駆者がいると思う、このブログの由来になっているスティーブ・ライヒとか最たる例なんだけど、Beatlesとかもやってそう。あっ、そういえばラヴェルのボレロとかもそうじゃん、興奮してきた。

といったところで一度曲紹介。愉快なPV、結構好き。
サカナクション / 新宝島 -BEST ALBUM「魚図鑑」(3/28release)-


曲の作りは彼らにしては珍しい面が多いのですが、安心してください、歌詞は相変わらず変です。この変な感じがいいんだよな。なんだよ「丁寧丁寧丁寧に」っていうサビ、引っ越し業者かよ。
ものすごく素朴に歌詞を解釈するのであれば、「私にとっての宝は、そう、あなたなのです」ってことなのでしょうか。「揺れたり震えたり」っていう意味が、描く行為にも歌う行為にも通じているのが面白い。彼らにしてはとても前向き、まぁシングルだしタイアップもあったからか。

あとカップリングで入っている「聴きたかったダンスミュージック、リキッドルームに」もいい曲だし、「新宝島」のインストverが入っているのも良いです。サビのコーラスがどんな具合かじっくり聴けるので。気になった方は是非どうぞ。仕事の疲れが取れたり、曲の作りに興奮したりできるかもしれません。


余談
私の家族では、兄と母が延々同じ曲をリピートする派でした。何か病院に行って私が車のなかで待っているあいだ、そんなに長くならないはずが2時間くらい待たされたことがありました。その際桑田佳祐の「白い恋人たち」がずっとずーっと流れていて、それで曲を嫌いになった記憶があります。時計仕掛けのオレンジかよ。どうだ、お前もトルチョックしてやろうか!!(アナフィラキシーショックで疲れてます)

「ゼルダの伝説 ブレスオブザワイルド」

2018-11-19 17:52:18 | 日本の音楽

初めて作った雑コラ

完全にブログの更新が停滞していました。
仕事が忙しかったのか?ネタが切れたのか?
いいえ、これもひとえにゼルダのせいです。

というわけで本日は平成最後の時間泥棒こと、「ゼルダの伝説 ブレスオブザワイルド(通称、BotW)」について。2017年3月に任天堂から発売。本シリーズ初のオープンワールドを謳っています。オープンワールドって何?という方にざっくり説明すると「へぇ、ずいぶん広いんだぁ…ゼルダのマップ...///」ってことです。わかるかい?(正確に言うと、細かいマップ移動を挟まずに広大なフィールドを駆け巡ることが可能な世界のことです。わかるかい?)

このゲームについて。端的に言ってめちゃくちゃ面白いです。従来のゼルダと同じく、謎解きメインのアクションRPGですが、アクションや謎解きが苦手な人でも色々抜け道が用意されていて、その作り込みがすごい。初ゼルダの人でも十分楽しめるのではないかな。
「こんなに真剣にゲームしたのいつ以来だろう」そう思うくらいのめりこんでしまいました。いや実際、こんなに熱中したのは私としてはFF7以来でした。熱中のあまり夜更かしし過ぎて、仕事に1回遅刻しました(ダメ人間)。


本作を手に取ったのは10月の上旬。以前ここでも紹介したUndertaleをクリアして、次何をやろうかなと某ヨドバシを徘徊していたところ、このソフトを発見。長らくやっていなかったゼルダ、今更だけど久しぶりにやってみようかな、と思って買って帰りました。気づいたら日付が変わっていました。
もうね、面白すぎた。発見と達成がこまめに繰り返されて、もっと次が気になる、この次はいったいどうなるんだろう?そう思わせるギミックが多く、やめるタイミングがわからない(だから遅刻したんですが)。

それからの1ヶ月半、およそゼルダのことを考えて生きていました。用事のない休みの日は朝から晩までゼルダをやるし、平日も時間に余裕がある時はゼルダをやって、空いている時間の大半を費やしたと思います。なんならゼルダの合間に生活していました。
そんな生活をしている人が、まともな精神を保てるはずがないですよね。だんだん頭がおかしくなってきて、壁を見たら「登れそうだな…」とか、虫が飛んでると「素材になるかな…」と自然に考えるようになってしまって。祠はたくさん見つけたけれど、現実をかなり見失っていました。最近ようやく正気を取り戻し、走っているときにスタミナ管理を考えなくなりました。

とにかくものすごく面白かったので、興味がある人はぜひどうぞ。その際、ある程度の時間を確保できる状況でプレイすることをお勧めします。そうじゃないと本当に大変なことになります。仕事に遅刻して怒られます。空気が読めないことに定評がある私も、「ちょっとゼルダが面白すぎて…」とはさすがに言えませんでした。


一応音楽のブログなので、ということで今日は本作の音楽について書きますね。え?取って付けたようだって?はーもうゼルダのことで頭がいっぱいで何も聞こえまえせーん!!!

今作は音楽が挿入的だったり、後ろで薄く流れたりする場面が多く、普通にプレイしている分にはあまり意識することがないのでは、と思います。よく耳にするのはフィールド曲、村、祠くらいでしょうか。ゲームオーバーの効果音はよく聞いたけど!以下結構いいな~と思った曲。

通常戦闘曲。比較的強い敵でも同じ曲なのですが、後半になるにつれて盛り上がっていくのがいいですね。雑魚敵だとすぐに終わるけれど、強敵だと長引くことを演出しているのでしょう。

【ゼルダの伝説BotW】戦闘曲 BGM


砂漠の中ボスとの戦闘曲。低音の弦楽器が細かく刻んでいるからか、疾走感があります。そして攻撃を当てたタイミングで急に1分28秒以降の曲調に変わります。このシリーズが以前取り入れたインタラクティブなBGMというやつですね。この盛り上がりが実に格好いい。

【ゼルダの伝説BotW】モルドラジーク戦【OST】


ラストダンジョンの曲。ここでメインテーマが流れる演出も憎い。今まで全然流れてなかったから「お、今作では流れないのかな?」と思っていたら、最後の最後に持ってくるという。しかも微妙に不協和音を入れたり、リズムを外したりして不気味さを表現しています。こういうの、嫌いじゃないよ。

【ゼルダの伝説BotW】ハイラル城【OST】



全体的にBGMは薄味。でもそれが気にならないくらい、探索だったり謎解きだったり、他に注意を向けるべきところが沢山あります。だからこそ、敢えて邪魔にならない程度にしたのかな。なんていうか、肉に下味付けるために塩コショウを振るのと似ている。その味がメインではないけれど、あるかないかで全然違うという具合に。手抜きってわけじゃないんだよ、最高級の下味がついているんです。


余談
1ヶ月かけてクリアしたのですが、エンディングもさっぱりしていてよかったです。ストーリーが薄い、という評判も目にしましたが、あまり詰め込むとテンポが悪くなるのであれぐらいの方がいいのでは、と個人的に思います。ただでさえワープの際のロードの時間が長いので。それがもう少し短かったらもっと快適だったかな。あ、でもそうなるとますますやめるタイミングがわからなくなって、遅刻が1回ではすまなかったかもな…ははは…。


ザ・なつやすみバンド『映像』

2018-09-26 20:27:16 | 日本の音楽


アルバムのいい画像が無かったので、画像は先行シングル。

ずっと風邪を引いております。
とはいえ一貫して体調が悪いのではなく、時々良くなるのです。良くなった時に調子に乗って酒を飲み「朝起きてからメチャクチャ寒いし…」状態(注)になって、再び体調を崩しているのです。馬鹿ですね。ちなみに「馬鹿」はサンスクリット語のmoha(無知)を語源とする説があるそうですよ。そんな話はどうでもいいか。



お彼岸を過ぎていよいよ夏も終わったし、今日は9月5日にリリースされた、ザ・なつやすみバンドの4枚目『映像』を。今年は彼らの結成10年目、そのためかジャケットに「10」の影が映っています。さて気合い入れて全曲書いていくぞ~ウオォ~ズバズバズバズバ(謎の効果音)。

M1「風を呼ぶ」
1曲目からアップテンポなのは初めて。Bメロとアウトロのベース、サビのメロディが好きです。サビの雰囲気が若干アニメのOPっぽく感じる、キャラクターが走ったり戦ったりしてそう。
それから「頼りないあいつ」とかいう歌詞、良い。中川さんにそんなことを言われたい人生だった。まあ、いろんな人から罵倒気味に言われてはいるけれど。財布やパスポート落としたりしているからね、ハハハハ。

M2「蜃気楼」
彼らの新境地、といった感じの、ミツメとのコラボ極。空間広がる系音楽です。アジカンの後藤さんも面白い曲だと言ってましたね。ドラムがいろんなところから聞こえる。ブリッジミュートかけて刻んでいるギターが好き。

ザ・なつやすみバンド - 蜃気楼 [TNB×mitsume]


M3「echo (Renew)」
Renew、とあるけど昔のヴァージョンを私は知りません。初期にライブ会場で出してたCDにも、正式にリリースされてるアルバムにも入っていないんだよな。昔のシングルに入っていたのかしら。2nd『パラード』の頃のような、アコギが入って淡々とした、寂しい曲。笛の音が綺麗。

M4「喪のビート」
こちらはMC.sirafu作曲。BPM150程度、ストレートで力強いビートに淡々としたシンセとピアノのコードが乗っていく、後半はメンバー全員で輪唱のようなことをやっています。「喪の」というのは白黒を意味する「mono」とかかっているのでしょうか。相変わらず中川さんの声が素敵。それから2回目のAメロのベースの入りも格好いい。本作ではかなり好きな一曲。

M5「Future Heads」
フィーチャリング、エンジョイミュージッククラブ。ホーンが奏でるメロディ、カッティングギターが切ないオサレ曲、いかにも最近の音楽って感じ。シチュエーションとしては昔付き合っていた女性と映画館で再開した、というもの。背後の子ラースではところどころ「かこ、みらい」「すき、きらい」と韻を踏んでいる。タイトルのFuture Headsというのはイギリスのバンドと関係があるのかしら、昔聴いてたBGMの話をしているし。この曲もMC.sirafu作。

M6「S.S.W (Renew)」
こちらは2nd『パラード』の6曲目からの再録。以前のバージョンではシンセの音がメインだったけれど、本作ではトロンボーン、フルート、パーカッションが入っている。最近のライブではずっとこの編成でやっている気がします。「毎日が夏休みだったらいいのになー」という歌は、パラードverの方がもっとわくわくする口調というか、子どもっぽく聴こえていたのだけれど、本作だと大人が投げやりになって(?)というか、諦めながら口ずさんでいる、そんな風に聴こえるのです。

M7「夏休み(終) (Renew)」
空気公団の山崎ゆかり氏がゲストヴォーカル。意外にも山崎さんの声に合う、教育テレビで流れそう。やはり名曲。この曲を聴くためだけでもCD買う価値があるのではないか。チェロが美しいし、トランペットとの掛け合いもよい。

M8「ミュージカル」
こちらもみんなの歌枠。純粋にいい曲、って感じ。このアルバム最後の盛り上がりか。

M9「絵になる最初」
途中からテンポがアップする。なんだか後期キリンジっぽい曲だな~と思ったのは私だけでしょうか。テンポの変化は面白いけれど、あまり印象に残らない曲。アウトロで思い出したかのように打ち込みが入っている。

M10「バンドやろうぜ!」
タイトルからそっぽを向くように、落ち着いたトーン。やはり締めくくりは、バンドを組んで10年経ったことを総括する曲。でも「バンドだ~イェイイェイ!!」みたいな雰囲気ではなく、「まあ、人集まって、色々やってきたんですよ…」と遠い目で語るというか、そんな曲です。ビックリマークがついているのにテンションが低い、でも綺麗な曲。その辺はキリンジの「CHANT!!」や「Music!!!!!!!」とも似ています。どんだけビックリしとんねん。ちなみにこの!の数はテストで出るので覚えておくように。


全体的な印象
率直に言って10曲しか入っていないのが悲しい(前作は12曲入り)。多ければいいわけじゃないけど、ミスチルの『I love you』を聴いた時と似ていて、既存曲が多い印象。10曲のうち3曲がRenewだし、1曲はシングルで先行リリースされていたし。
それでも彼らがこのタイミングで本作を出したのは、ある種の走馬燈的な、今までやってきたことの「まとめ」の意味を持つからなのでしょうか。1st『TNB』を出して間もない頃、下北沢で空気公団と2マンやっていたし、最近は色んな人とコラボしてます。活動するなかで沢山の人と知り合って、みんなで音楽を奏でたい。そういう1枚を作りたかったのかな。好意的に解釈すれば、ですが。

アルバムのまとまりを考えるとやはり前作に軍配が上がる気がする。新しい局面に踏み出し、色々やりたいことがあって、まだまとまり切っていない、そんな印象を受ける作品。もちろんM1、M8みたいなシンプルでいい曲もあるんだけれどね。それと、前作よりMC.sirafuの作曲が増えた気がします。邪推かもしれないけれど、バンド内の人間関係というか、力関係も少しずつ変わってきたのかな、なんて。
それから。本作はサポートありき、の音楽になっている気もしていて。もちろん初期からヴァイオリンが入ることもあったけれど、前作までは「4人で再現できる曲」の割合が高かったと思うけれど、今作は普段のライブの時にサポートが入ることをあらかじめ想定されて作られている感じが強くて。それはそれで、ちょっと寂しくもあるかな。4人が奏でるバンドサウンドが好きだったものだから。だってザ・なつやすみ「バンド」なんだもの。そんな彼らは今後どうなっていくのだろう。今ちょうど過渡期に来ているのかもな、なんて思ったりしてるわけです。



昔の空耳 その0285


空耳アワー参照。これはビースティ・ボーイズの曲だったか。もっとも好きな空耳のひとつ。「マジ痛ぇなこの!あっこうなるよね…」とか「雑誌洗って、穴に埋めてェェ!!」の穴に埋めるシリーズ、「みりん!!?ぽいな!!ぽいな!!!」とか「愛してんだろ?愛してんだろ?」の何故か脱いでるシリーズも好き。

NUMBER GIRL『NUM-HEAVYMETALLIC』

2018-09-01 23:21:53 | 日本の音楽


9月になったのでブログを更新します。
平均気温が下がり、過ごしやすい日が増えてきました。ふと思い出したかのように暑い日が顔を覗かせることもありますが、季節は着実に秋に向かっています。今年も夏が終わる。それはそれで少しさみしいな、という下らん孤独主義者の戯言は置いといて。


この時期に聴きたい1枚、ということで本日はナンバーガールの最後のスタジオアルバム、『NUM-HEAVYMETALLIC(ナムヘヴィメタリック)』を。タイトルの「NUM(南無)」というは、もしかしたらNUMBER GIRLのNUMとかけているのかな。

簡単に彼らの紹介。福岡市博多区からやってまいりました、4人組ロックバンド。1995年結成、4枚のアルバムを出して2002年に札幌のライブで解散。メンバーは今でもなんらかの形で音楽を続けています。
ヴォーカル向井秀徳の聞き取りにくい歌、「冷凍都市」「性的」「はいから」「少女」「酩酊」といった歌詞から繰り広げられる独特の世界観、田渕ひさ子の肉を削ぐ鋭いギター、アヒトイナザワのやかましいドラム、中尾憲太郎n歳(nには任意の年齢を代入)の、なんていうか、まぁ比較的まともなベース、そういった魅力あふれるバンドです。正直言って聴きどころしかない。


本作は日本民謡のメロディやらダブの要素を取り入れており、今までの一直線な感じの曲たちとは作風が異なる気がする。リリースされた直後は賛否両論あったのではないかな。でも聴いているうちにのめり込んでいく、そんな一枚です。

私見ですが、色んな評価を読んでいると彼らはサウンド面を評価されることが多いように思います。でも実は歌詞も魅力的なのです。とてもエディパルというか、原初的なエディプスコンプレックスのなかで感じる「疎外感」、それに伴う「憤り」、自分にはどうにもできない「無力感」が漂っている。
歌っている「俺」「制服の少女」を見て眩暈を催したり、いかんともしがたいフラストレーションを抱えて酩酊したりふらふら彷徨ったり。そして無垢な少女たちは「誰か」の手によって汚されていく、一人ぼっちの俺。そういった孤独はもう貪るほどに味わい尽くした、だけどどこかで感じる寂しさ。そのような妄想的な世界を描くのが、この向井秀徳という男がすごく上手です、最高。童貞くさいと言えばそれまでなんだけど、なかなか狙ってできることではないよな。


そんなわけで好きな曲紹介
M2 INUZINI
NUMBER GIRL - INUZINI (ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2002) LIVE


やっぱりロックンロールやね。映像はライブ盤のもの。アコースティックギターが隣人を怒らせ内容証明をいただくに至る歌です、私も上の住人に送りたい、お気持ち表明したい。夜の営みの音がうるさいの、週何回やるんだよ。それはさておき。途中のギターフレーズは前作の「URBAN GUITAR SAYONARA」をいじって使っています。ドラムのンタンタンタタタ、ンタンタンタタタというリズムが好き。PIXIES聞いて葛飾北斎!


M3 NUM-AMI-DABUTZ
Number Girl - Num-Ami-Dabutz


とても好きな曲、先行シングル。鋭いギターから始まります。昔このタイトルをもじって携帯のアドレスに入れてたな。
「南無阿弥陀仏」というタイトルに反して歌詞はかなり危うい。「真昼間にひっつきまくった男女の生殖器官はもうどうもこうもならん」「視姦される女たちが自意識まきちらし 恥さらし しかし取り澄ましてパンツ濡らし」「餓鬼はガンジャ吹かし」と、極極(きわきわ)のラインを攻めています。だけどこういった歌詞で描かれる世界も、ある意味では真実なのだよなと思う。南無阿弥陀仏。

M9 性的少女
Number Girl - 性的少女 (Live from SAPPORO OMOIDE IN MY HEAD)


こちらもライブver、SAPPOROのOMOIDE Liveから。中尾憲太郎28歳の重たいベースから始まる曲、和風なギターフレーズが好き。出だしから「村の神社の境内でヤったあの娘は街に出て」と、タイトルが表すように非常にセクシャルでありながらも、「性的少女の見た夢は 真っ赤な烏を食らう夢」と、ちょっとグロテスクな歌詞が出てきます。「歩いて知り合いはいない 街ん中誰も知らない」「知らない誰かの吸いがらだけが 灰皿の上に山の様」というのも、なんだか妙に怖い。性的な関係が孕む孤独をうまく表していると思う。

しかしバイオレンスな歌詞のなかに、ひゅっと紛れ込んでくる切ないフレーズ。「季節と季節の変わり目 恋をする少女だったこともあった」とか「俺は俺に似合ってた」とか。そういった歌詞も本当に素敵だな、と思う。
最後の曲「黒目がちな少女」で「色々な人がいるもんだ」と歌っているのも面白い。ヴーン、という具合の太いギターの音をバックに、今までは「俺」「少女」「少女を汚す誰か」といった3者関係のなかで悶々と、鬱屈とするのを繰り返していたのだけれど、ここで少し世界が広がったようにも読み取れる。見渡すと本当に色々な人がいる、そういったことに気づいた瞬間。ちょっと好意的に解釈し過ぎかしらん。


この作品を初めて聴いたのは高校生の時でした。近所のCDショップを探してもなかなか置いてなくて、注文して取り寄せて繰り返し聴き、鬱屈としている私の思春期を激しく揺さぶったものでした。今思うとどうしてあんなに思い詰めていたのか不思議なくらいです。
今でも時々聴き返していて、特にこの季節に聴きたくなります。それはそれで苦しいことも思い出させるけど、やはりあの頃の思い出というのは、小学生の時にもらったマラソン大会の賞状のように「苦しいけどこんなに頑張ったんだよ、あれは嘘じゃないんだよ」と語りかけてくる気がします。それをどう生かすかは、今の自分次第なのですが。