砂漠の音楽

本と音楽について淡々と思いをぶつけるブログ。

「千と千尋の神隠し」を3回見た話

2020-08-07 21:46:01 | 映画

ブログ更新が滞っていました。
あと先週末から今週にかけて風邪を引いていました、不覚。
梅雨があけたと思ったら一気に酷暑になりましたね。とても辛いところです。
ビールを飲みながらフィッシュマンズを聴いて今年の夏を乗り切ろう。やはり「Orange」は名盤だと思うんだ。


さて。
ご存知の方も多いのでしょうが、現在ジブリ作品がいくつか劇場で公開されています。
そんなわけで私もナウシカ、もののけ姫を見ました。「千と千尋の神隠し」にいたっては3回観ました。1つだけ観てないのがあった気がしますが、何だったかちょっと思い出せません。


私はジブリ映画だと「千と千尋」が一番好きです。
今まで一番繰り返し観た映画だと思います。高校生の時はテスト期間によく観ていました。早めに学校が終わるので、家に帰ってレトルトのカレーを食べながらだらだと観て、勉強もサボって。大学生になってからも年1回は観てたし、最近でも年に5回くらい観ることもあるから、たぶん20~30回は観ているはずです。
どうしてこんなに好きなのか、自分でもよくわかりません。はっきりしたテーマがあるわけでもないし、謎のキャラクター(おしら様、おおとりさま、春日さま、頭など)がたくさんでます。それに、どうして湯婆婆は「働きたいものには仕事をやる」という約束をしたのか、銭婆婆の契約印の呪いがいつ解けたのか、なぜ電車は片道なのかなど、物語の最後まで不明な設定も多いし、よくわからないことの多い映画なのです。

でも、この「よくわからなさ」がいい。
解釈に幅があるというか、いろんなふうに考えることができるというか。
それぞれ自分の体験に引きつけて感じやすい、そんな映画だと思うわけです。



たとえば両親は開始しばらくで豚になります、自分はこのシーンがとても好きです。
料理や皿をひっくり返し、店の人から強く叩かれてその場に倒れこむ、醜悪な姿を見せる親豚。
不安や恐ろしさもあるけれど、どこかで興奮します。ぞくぞくします。
ちょっと難しい言葉で表現するならば、両親への脱錯覚、あるいは幻滅ということになるでしょうか。
欲望を貪る両親が罰せられる、という場面です。そのまえに両親に強くがっかりする千尋の姿が描かれるので、もしかしたら彼女の無意識的願望があらわれたもの、と考えることもできるかもしれません。


それから湯屋にたどり着き、釜爺やリンが親切にしてくれる場面。
特に湯屋での契約が済んだあとに、リンから「お前うまくやったなぁ」「お前とろいからさ、心配してたんだ」と言われるシーン。それまでの緊張の連続からふっと肩の力が抜けるような、「ああ自分をこんなに気にかけてくれる人がいるんだな」と泣きそうになりますね。最初冷たかったリンがなんであそこまで親切にしてくれるのか、ちょっと不思議なのですが、世の中捨てたもんじゃないと思えます。



千がカオナシに問いかける場面も好きです。
「あなたはどこからきたの?」
「あなたはきたところに帰った方がいいよ、私が欲しいものは、あなたには絶対出せない」
「おうちはどこなの?おとうさんやおかあさん、いるんでしょ」


ここもぞくぞくします。それまで乱暴狼藉をはたらいていたカオナシが「サビシィ…サビシィ…」と呟き、急に幼子のようになる。これらの質問は誰にも当てはまるもので、人間の本質に問いかけるような台詞です。自分がこんな風に言われたら、なんて答えるだろうな。


そして。
なんと言っても電車の場面。あそこだけ切り取って繰り返し観たいまである。
流れていく風景。特に夕焼けに染まる雲が美しいです。海の中に浮かぶ家、反面ラブホテルみたいなけばけばしい広告。
乗客たちやぽつんと立っている少女の影も意味深です。背後で流れているピアノも好き、ドビュッシーみたいで。


ジブリ映画でサントラを持っているのはこの作品と「もののけ姫」「猫の恩返し」です。
久石譲の音楽いいですよねえ。メインテーマの「One Summer Day」が本当に好きです、昔ピアノで練習していました。
久石さんの音楽にしては普通にハ長調なのが意外ですが。もののけ姫の「アシタカせっき」はフラットが4つくらいついていた憶えがあります、許さんぞ久石譲。


あともう1回くらいは観に行きたいです。でも忙しいし外が暑いしで、なかなか厳しいですね。辛いところです。
欲を言えば紅の豚とか、ポニョも映画館で観たいところ。いつかやってくれないかな。