砂漠の音楽

本と音楽について淡々と思いをぶつけるブログ。

東京事変「大人」

2019-02-14 10:42:19 | 日本の音楽


むわぃにちむわぁいにち僕らは職場の
デスクに座って いやんなっちゃうよ
ある朝 僕は仕事の合間に
ブログの記事を 書きだしたのさ…(ダメ野郎)


そんなわけでブログ書きます、約1ヶ月ぶり。皆さんお元気ですか?私は元気じゃないです、どうもありがとうございます。えっ、急にそんな大金受け取れません!あっ強引に財布の中にお金を突っ込まないで!!なんとその札束も!!!いわんやスーツケースの中までいただけるんですか!!???これでもう週に6日も働かなくてすむぞ!!!!!!
…とか考えて生きてます、生きるのって楽しいね、ハハハ。


さて今日は東京事変の『大人』。彼らの作品ではこれが最高傑作だと思います。なんと言っても作品のまとまりがすごい。1曲目からラストまでの44分間、ほとんどテンションをキープして聴ける。その理由は、『大人』というタイトルだけあって、シリアスな曲が多いからなのでしょう。
前作『教育』も次作『娯楽』も好きなんだけど、ちょいちょいコミカルな曲が入ってきますよね、「母国情緒」「黒猫道」とか。嫌いじゃないけど、「入水願い」や「金魚の箱」のようなアグレッシブな曲とのギャップがあるので、聴いているときに気持ちを切り替えるのがやや難しいのです。でもこの作品は一貫してシリアス。「修羅場」や「雪国」はもちろん、「透明人間」のギターフレーズやBメロの歌い方は軽快だけれど、歌詞が伝えてくる世界は真剣そのものです。

曲と曲のつながりも良い。特に好きなのはM1「秘密」~M5「修羅場」までの流れ、これはもうほとんど完璧といってもいいくらいだし、M7「歌舞伎」~M8「ブラックアウト」も、アルバムのハイライトに向けて盛り上がっていく感じがあって好きです。その後「黄昏泣き」で一度トーンダウンして、屈指の名曲「透明人間」と続く。どうですかこれ。名盤ですよ奥さん。お宅にもおひとついかがです?
もちろんほとんどの曲が好きなんだけど、いくつか選んでさっくり紹介。

M3「化粧直し」
お洒落コードを使ったりトライアングルが鳴ったり、ボサノバ調のお口直し的な曲。でも「あなたに会って孤独を知った だけど失った今 私は初めて本当の一人」というサビのフレーズやメロディが好き、流れるような鍵盤もいい味出してる。後半ブレイクビーツっぽくなるのも格好良い。

東京事變 化粧直し



M9「ブラックアウト」
停電の意味もあるんだけれど、おそらく飲酒しすぎて意識や記憶が消失する現象のことを指すのだろう。そう思うととても身近に感じる、おや何故だろう。
「素面になってしまいそう」「もっと酔って居たい」と歌われていて、やけっぱちというか、破滅的な感じの曲。やはりこういう歌を歌わせたら椎名林檎って本当にうまいなと思う。サビの進行が一気にラテンというかサウダーデを感じるノリになって、歌詞は破壊的なのに曲調がポップ、でもうまく馴染んでいるのがすごい。そういえば前作の「お祭り騒ぎ」もサビはラテン系でしたね。アウトロのチェンバロっぽい音が好きなんだけど、ハンドクラップは蛇足だと思う。亀田さん好きだよな、ハンドクラップ入れるの。

Tokyo Jihen - Blackout (Domestic Virgin Line)



M11「透明人間」
4枚目の「能動的三分間」と並ぶ、事変の最高傑作といってもいいのではないか。最近何かのCMに使われてるみたいですね。サビのベースラインが好き。事変で弾いていて楽しい曲第2位(私調べ。1位は『娯楽』の「キラーチューン」)
サビのピアノはきらきらしてるし、全体的にドラムとベースの絡みがすごく良いし、ギターは何やってるかよくわかんないし。聴いていて耳が喜ぶ。耳が欣喜雀躍して歓天喜地した挙句に跳梁跋扈する。嘘です。
それから。なんと言っても歌詞が素晴らしい。正確なところはわからないが、勝手にいじめとか、仲間外れにされている人の歌だと解釈している。なんだか希望をもらえる不思議な歌詞。いくつか共感できるところがあって、例えば2回目のAメロ

何かを悪いというのはとても難しい
僕には簡単じゃないことだよ


何気ないこのフレーズがとても好き。シンプルな歌詞なのになぜかぐっときます。実際、何かを本当に悪いと思ったり、心の底から憎んだりすることって難しいですよね。感情的になることもあるけど、少し時間を置いたり、相手の立場も考えたりすると、真剣に憎むのって本当に難しい。もちろん憎んでしまった方が、仮想敵を作ってしまった方が楽だけど。それでいいのかなっていう。
この歌の「僕」が、心根の優しい透き通った人間であることを表しているように思う。できれば自分もそういう人間でありたい、そう思わせる曲です。

Tokyo Jihen - 透明人間 (Invisible Man) from 'Adult' (2006)



最後の曲の「手紙」も好きです。「血管」のことを「けつかん」と言っていて、ん?と思うけど。

大人になった私たちは今すぐ答えが欲しいよね

という歌詞も素敵だし、実際その通りだなと思う。でも現実にはすぐ答えの出ない問題ってたくさんあるし、あれこれ迷うのってとても大事です。私はそれを「無駄」とは言い捨てられない。でも世の中はスピーディに、効率的になり、無駄のないものがどんどん求められる世界になっているわけで。そんなこと言い出したら我々が生きてるのなんて全部無駄だと思うけどね。数億年後には地球はまるごと太陽に飲み込まれるのだし。無駄無駄無駄ァァ(燃えるゴミは月・水・金)。
利益を求める戦略としては大事だと思うけど、それはあくまでビジネスモデルであって、そのモデルを拡充して自分の生き方に当てはめていったら本末転倒になりません?という気もする。あれ、そう思うとなんで週に6日も働いているんだろう???自我がブラックアウトしそう????

話を戻します。紹介した曲以外にも「喧嘩上等」のドラムのスティック叩くところとか、「修羅場」のハイハットのリズムとか、ちょいちょい歌メロにベース、鍵盤、ギターがユニゾンする演出とか、このアルバムの好きなところを挙げていくと限がないです。今聴いても色褪せない名盤だと思う。椎名林檎の歌い方も全体的に情感がこもっていて良い、「修羅場」とか「雪国」とか殺されそうな感じすらするもの。


何かを「悪い」というのは難しいけど、「良い」「美しい」というのはもう少し簡単なんですよね。そういう言葉を使って生きていきたい。そしてこのアルバムは本当に「良い」です。久しぶりに聴いたらやっぱり感動して欣喜雀躍して(ry