砂漠の音楽

本と音楽について淡々と思いをぶつけるブログ。

オードリーのラジオ番組をよく聞いている話

2020-08-31 16:25:26 | 日記
今日で8月も終わりますね。
このご時世というのもあり、今年は実家に帰りませんでした。
木魚も叩いてないし甲子園を見ながら家族と他愛ない会話もしなかったから、なんだか夏が終わる気がしないな。



最近お笑い芸人のオードリーにはまっています。

きっかけは8月上旬に風邪をひいたとき。
久しぶりに熱を出して、仕事を休んでうんうん寝込んでいました。でも1日くらいでよくなって、職場からは大事をとって数日休んでくれと言われて。しょうがないから暇つぶしにオードリーのラジオをだらだら聞いていたのです。あとは中京テレビでやっている「オードリーさん ぜひ会って欲しい人がいるんです(通称オドぜひ)」というローカル番組をYouTubeで見て、彼らの面白さに気づいたのです。

彼らが売れ始めたのは2008年頃なんですね。
自分は大学生になってからほとんどTVのない生活だったので、彼らの魅力を全然知りませんでした。ピンクのベストを着た変な人と、ぱっと見地味だけど根は陰険なんだろうなぁ、三菱とか憎んでそうだなぁ…みたいな人の組み合わせという認識でした。


でも彼らのオールナイトニッポンを聞くようになって、すごく面白いコンビだなと思うようになって。
まずトーク。冒頭のフリートークが毎回面白いし、雑談しているだけに見せてちゃんとオチまでつけている構成力。深夜ラジオというのもあって、下ネタとかいじりネタとか、結構きわどいラインを攻めることもあるけど、ここは超えちゃいけないっていう見極めもすごい。リスナーが不愉快にならない加減を心得ている感じがして、どんな話でも安心して聞けます。

あとは観察力。ラジオで毎週喋るからってのもあるんでしょうが、いろんなことにアンテナを張って細かいことも笑いのネタにしようとしています。例えばしょうもないマッサージ屋のエピソードとか、エコバッグ買って失敗した話、売れない頃の話、中学高校の思い出、ベランダで弁当を腐らせたこと、箱根の仲井(いっぱつカマス氏)、お笑いに対する思い…いろんなことを掘り起こして、トークとして使えるかたちにしています。
人間生きていればトークの材料になるものはあれこれあるでしょうが、それを毎週笑えるよう、興味を引くように加工して持ってくるのが素直にすごいなと思います。そのぶん疲れるんだろうけど。そりゃ一人でキューバ行ったりモンゴル行ったりしたくなるよな。

なにより若林の陰険さ。これが自分とって一番しっくりくるところです。
ラジオで話す2人は、テレビで見かける彼らのイメージと全然違いました。若林は自意識過剰で陰険で、春日は比較的まっとうというか、まあドケチで変人だけど性格はねじ曲がっていません。ラジオのように若林が奇抜なボケをかまし、春日が独特の口調でつっこむ方が断然面白いです。
ある程度は演出なんだろうけど、若林が率直にイライラしたり文句を言ったりするのが好きです。


ここで少し話が逸れます。怒りの感情について。
怒りの感情に身を任せるのは、一般的には良くないことだと言われています。コンビニでは「もう怒らない」とか「怒りをコントールする」みたいな啓発本がしばしば売られていますね。
仏教では三毒という考えがあり、「貪瞋痴(とんじんち)」といって、欲望を貪ること、怒ること、正しくものを知らない愚かさを表します。これらによって人間は苦しむことになる、という思想です。まあそういう気はするよね。

でも生きてれば怒らなきゃならないときがある。
以前の記事でも少し書いたけど、自分は怒るのが下手です。「自分が我慢すれば」という思いが先立ち、あとからイライラが湧き上がってきて、結果的に余計面倒くさいことになる。婉曲的に怒りが出てきたり、酒に逃げたり遁走したくなったり。そうなるくらいならとっとと怒った方が楽だと、頭ではわかっていてもなかなかできない。人間、簡単には変わらないものです。一時期は鏡に向かって怒る練習をしたこともあったんですけどねぇ…あれはなんやったんやろな…。


だからなのか。
若林のようにあちこち噛みつける人が羨ましいです。彼は気軽に相方の春日や、ディレクターや共演している女子アナ(かの有名な市野瀬アナ)に対して気軽に腹を立て、それをネタにする。エコーの効いた声で「ふざけるなーっ!」と叫んだり、「共演している人のなかで一番嫌いなんだよね」とさらりと言ってのけたり。

もちろん彼はしたたかにラインを見極めています。関係が破綻しない程度に、怒りや苛立ちをうまく笑いに変えている。もはや才能レベルです。その絶妙な見極めは、過去に色々傷ついたり失敗したりした賜物なのかもしれません。だとしたら中高時代の人間関係や、売れない時に相当悩んだのかな、とか邪推してしまいます。それに上でも触れた観察力。この人はどこまでいじっていいのかを、きっと冷静に見定めているのでしょう。根は人見知りらしいし。

そして春日の抜群の包容力。きつめの言葉でいじられてもほとんど許す春日の胸の広さよ。さすがボディビルやってるだけあるわ。そう考えるとすごくいいバランスで成り立っているコンビなんだろうな、と思います。こんなにお笑い芸人にはまったのはラーメンズ以来です。あの2人も天才ナルシシストと小心者の変人という、すごい組み合わせですよね。彼らも大好きだなぁ。


8月も終わりますね。
今年もあっという間に過ぎていく。人生は円環的のようにも思うし、自分がずんずん年を取っていって、周囲が変わっていくのを見ていると、自分だけ同じ場所にぐるぐるとどまっている気もします。
生きるのって大変だよな。こんなに大変ならもっと早く教えてくれよ、と思わなくもないけど、怒りを昇華して残りを生きていきたいと思います。みなさまどうもありがとうございました、気が向いたらオードリーのラジオを聞いてみてください。市野瀬アナとのプロレス、春日がぼけてない話、若林の人見知りの話がオススメです。

「千と千尋の神隠し」を3回見た話

2020-08-07 21:46:01 | 映画

ブログ更新が滞っていました。
あと先週末から今週にかけて風邪を引いていました、不覚。
梅雨があけたと思ったら一気に酷暑になりましたね。とても辛いところです。
ビールを飲みながらフィッシュマンズを聴いて今年の夏を乗り切ろう。やはり「Orange」は名盤だと思うんだ。


さて。
ご存知の方も多いのでしょうが、現在ジブリ作品がいくつか劇場で公開されています。
そんなわけで私もナウシカ、もののけ姫を見ました。「千と千尋の神隠し」にいたっては3回観ました。1つだけ観てないのがあった気がしますが、何だったかちょっと思い出せません。


私はジブリ映画だと「千と千尋」が一番好きです。
今まで一番繰り返し観た映画だと思います。高校生の時はテスト期間によく観ていました。早めに学校が終わるので、家に帰ってレトルトのカレーを食べながらだらだと観て、勉強もサボって。大学生になってからも年1回は観てたし、最近でも年に5回くらい観ることもあるから、たぶん20~30回は観ているはずです。
どうしてこんなに好きなのか、自分でもよくわかりません。はっきりしたテーマがあるわけでもないし、謎のキャラクター(おしら様、おおとりさま、春日さま、頭など)がたくさんでます。それに、どうして湯婆婆は「働きたいものには仕事をやる」という約束をしたのか、銭婆婆の契約印の呪いがいつ解けたのか、なぜ電車は片道なのかなど、物語の最後まで不明な設定も多いし、よくわからないことの多い映画なのです。

でも、この「よくわからなさ」がいい。
解釈に幅があるというか、いろんなふうに考えることができるというか。
それぞれ自分の体験に引きつけて感じやすい、そんな映画だと思うわけです。



たとえば両親は開始しばらくで豚になります、自分はこのシーンがとても好きです。
料理や皿をひっくり返し、店の人から強く叩かれてその場に倒れこむ、醜悪な姿を見せる親豚。
不安や恐ろしさもあるけれど、どこかで興奮します。ぞくぞくします。
ちょっと難しい言葉で表現するならば、両親への脱錯覚、あるいは幻滅ということになるでしょうか。
欲望を貪る両親が罰せられる、という場面です。そのまえに両親に強くがっかりする千尋の姿が描かれるので、もしかしたら彼女の無意識的願望があらわれたもの、と考えることもできるかもしれません。


それから湯屋にたどり着き、釜爺やリンが親切にしてくれる場面。
特に湯屋での契約が済んだあとに、リンから「お前うまくやったなぁ」「お前とろいからさ、心配してたんだ」と言われるシーン。それまでの緊張の連続からふっと肩の力が抜けるような、「ああ自分をこんなに気にかけてくれる人がいるんだな」と泣きそうになりますね。最初冷たかったリンがなんであそこまで親切にしてくれるのか、ちょっと不思議なのですが、世の中捨てたもんじゃないと思えます。



千がカオナシに問いかける場面も好きです。
「あなたはどこからきたの?」
「あなたはきたところに帰った方がいいよ、私が欲しいものは、あなたには絶対出せない」
「おうちはどこなの?おとうさんやおかあさん、いるんでしょ」


ここもぞくぞくします。それまで乱暴狼藉をはたらいていたカオナシが「サビシィ…サビシィ…」と呟き、急に幼子のようになる。これらの質問は誰にも当てはまるもので、人間の本質に問いかけるような台詞です。自分がこんな風に言われたら、なんて答えるだろうな。


そして。
なんと言っても電車の場面。あそこだけ切り取って繰り返し観たいまである。
流れていく風景。特に夕焼けに染まる雲が美しいです。海の中に浮かぶ家、反面ラブホテルみたいなけばけばしい広告。
乗客たちやぽつんと立っている少女の影も意味深です。背後で流れているピアノも好き、ドビュッシーみたいで。


ジブリ映画でサントラを持っているのはこの作品と「もののけ姫」「猫の恩返し」です。
久石譲の音楽いいですよねえ。メインテーマの「One Summer Day」が本当に好きです、昔ピアノで練習していました。
久石さんの音楽にしては普通にハ長調なのが意外ですが。もののけ姫の「アシタカせっき」はフラットが4つくらいついていた憶えがあります、許さんぞ久石譲。


あともう1回くらいは観に行きたいです。でも忙しいし外が暑いしで、なかなか厳しいですね。辛いところです。
欲を言えば紅の豚とか、ポニョも映画館で観たいところ。いつかやってくれないかな。