砂漠の音楽

本と音楽について淡々と思いをぶつけるブログ。

ザ・なつやすみバンド「夏のしおりツアー」

2019-09-25 14:46:32 | 日本の音楽


先日ザ・なつやすみバンドのライブに行ってきたのでその感想を。
場所は六本木、ビルボードライブ東京でした。この会場には初めて行ったけどオシャレ過ぎて網膜が焦げるかと思った、危なかった。2部構成で長丁場でしたが、座ってゆっくり見ていたのでさいわいそこまで疲れませんでした。


1部 TNB!再現ライブ
タイトルの通り、彼らの1作目「TNB!」を再現する、という内容。とはいえ曲順はアルバムと同じでなかったし、アルバムに入っていない曲もいくつかありました。これが実に良い演奏だった。

良かった曲
「せかいの車窓から」 とても好きな曲。「遠くへ行かなきゃなぁ」とか「恋しくなるよ」でのコーラスが素敵。中川さんがMCで「思い出すことが色々あって」というようなことを話していたのが印象的でした。私もそうです、どうもありがとうございます。

「むぎふみ」 キリンジの「台風一過」を彷彿とさせる、民族音楽っぽいドラムから始まる曲。初期の曲だと話していたけれど、機会があればぜひ音源化して欲しいな。一斉に盛り上がっていくのが良かったです。

「サマーゾンビー」 ポップセンス爆発!!という感じの、実にいい曲。つい身体が動いてしまう。リリースはシングルのみでアルバムには未収録。音源では子どもの声が入ってたりベースにシンセがかかってたりしますが、ライブで聴くともう少しストレートで、そのぶんメロディの良さ際立って実によかったです。余談ですが「たとえば街にゾンビーが溢れかえっても大丈夫 ショッピングモールで暮らしましょう」という歌詞は某デッドライジングのパロディなんだろうか笑。

ザ・なつやすみバンド「サマーゾンビー」


前半の感想
いい曲が多い作品なんだなと、あらためて感じました。だからこそ人気が出たのでしょうね。たくさんのライブや製作を重ねて、演奏も上手というか安定感があって、聴いていて本当に心地よく終始にやにやしていました(気持ち悪いですよね、どうもありがとうございます)。
あとはCDに入っていない「むぎふみ」や「さよなら?(またあした?だったか。失念しました…)ジャーニー」もいい曲だったので、いつか音源化されるといいな。


2部 Terminalリリース記念ライブ
こちらは今年リリースされた「Terminal」のリリースライブ、「旅三部作」の1作目のようです。このアルバムはまだブログに書いていないんですが、聴きやすくて心地よいアルバムです。ただちょっと短くて物足りなかったんだな。30分って、この前紹介したToolの1/3のボリュームやん…(Toolが長すぎる、というのももちろんある。Toolが悪い)。
3枚目、4枚目の曲も結構やってくれて嬉しかった、欲を言えばOdysseyも聴きたかったけど。ライブで定番のS.S.Wをやっていなかったのも意外でした。

良かった曲
「ファンタジア」 今回はストリングスでなくギターアレンジでやってましたね。それでもスケールの大きさ、壮大さは損なわれず。こういうアレンジもできるんだな、成長したなぁ(何様)と感じました。2回目のAメロのベースが好き。

「喪のビート」 BPM速いのにコーラスしながら歌う高木さんすごいなと思う。ドラムのチッチキチッチキチッチキチー(?)とハイハット細かく刻む部分と、最後らへんでドラムがメインヴォーカルを担う箇所が好きです、「どこにも行けない エイトビートじゃないからね」の箇所。中川さんはもちろんのこと、ドラムの方もいい声しているんだよな。

「ハレルヤ」 2部最後の曲。「明るい曲やります」って言ってたけど、そこまで底抜けに明るいわけでもないような。どちらかというと自分を奮い立たせるような、優しいけど覚悟に満ちた曲ですよね。最後一度静かになってから転調する箇所が最高でした、現場からは以上です。

「ユリイカ」 アンコール曲。作曲はドラムとベースの人です。「ユリのように イカのように」という歌詞が面白い、いかにもMC.sirafuっぽい。エウレーカ!のことじゃないのかよ。実に楽しそうな演奏でした、やはりライブで聴くと音源とテンションが全然違うんだよな、絶対ライブで聴いた方がいい。
うっ!

全体の感想
パーカッションの人(松田さん)が終始楽しそうで見ていてわくわくしました。あとライブ会場が良い(&値段が高い)のもあって、音がよかった。音の広がりが心地よかった。特にドラム。シンバルの音が優しいながらも爽快感がありました。
後半はMC.sirafuがギターを弾くことが多かったのですが、ときどきギターの音域がヴォーカルとぶつかるところがあり、前半より歌が聞こえにくかったのが少し残念でした。個人的にはもっとぼやっとした、あるいはざらざらした音でもよかったような。それにしてもいいギター使っていたな、リッケンバッカーのように見えたが…。


そんなわけで本当にいいライブでした、いいバンドだなぁ。聴きながらついにやにやしてしまった、いやずっとにやにやしていた。気持ち悪い客で恐縮ですがまた行きたいです。
ここしばらくはこのライブを楽しみに生きていたのだけれど、とても素敵な演奏で、温かい気持ちになれて。でもそれが終わってしまって。今後一体何を楽しみに生きればいいんだ、と絶望しています。Toolの来日を願うしかないのか…。早く来てくれー、間に合わなくなっても知らんぞー!!!!!



関連記事(以前のレビュー)
『ファンタジア』
『映像』

ラジオの思い出

2019-09-20 17:52:34 | 日記
突然ですがラジオが好きです(だからこうして書いているわけですが)。
といってもそこまでヘビーリスナーではなく、音楽に飽きたら聞く程度で。帰り道に野球中継を聞いたり、たまに放送大学の講義なんかも聞いたりしていて、この前の月曜にやっていた「中高年の心理」はとても面白かった。「ブレーメンの音楽隊」を高齢者の問題と捉えたり、ドストエフスキーの『カラマーゾフの兄弟』を虐待の視点から考えたり。なるほどと思うことが多かったです。意外な出会い、思わぬ発見があるから、ラジオが好きなのかもしれない。


ラジオについて思い出すことなど。
実家は山に囲まれた土地で、田舎で、とにかく電波の入りが悪かった。なので窓を開けて外に向かってアンテナを伸ばさないと、はっきり聞こえなかったのです。たぶん今でもそうでしょう。しかも地理的に関東より韓国が近く、東京のラジオ局よりハムニダの方がよく聞こえるということもざらでした。
さらにもう一つ問題があって。山に囲まれた田舎となれば、当然虫が沢山います。「虫ってこの世にこんなに存在するんだな…」と思うくらいに虫がいます。夏に窓を開けようものなら、容赦なく虫がウェルカムトゥザジャングルしてくるのですね。ニーッ!!シャナナナナナニーッ!!

だから家でラジオを聞くのなら、冬限定でした。でも冬に窓を開けたら寒いですよね。厚着して寒い寒いと言いながらラジオを聞いていました。頭おかしい。たぶんどうかしてたんでしょうね、「ここまでしてラジオ聞いている俺カッケェ…」とか思っていたのかもしれません。今思うととてもサムいですね、2つの意味で。
そんなわけで冬場、受験勉強しながらラジオを聞いていました。いやラジオを聞きながら受験勉強をしていました、いえ勉強はそんなにしていませんでした。

ラジオで好きになったアーティストも多かったです。例えばレミオロメン。アルバム1枚目が出た後に「雨上がり」を聞いて、超いいじゃん!と思った記憶があります。あとはLost in timeとかAIR、ラブリーサマーちゃんもラジオで好きになった記憶があります。


よく聞いていた番組は山田久志のラジアンリミテッドでしたが、一番印象に残っているのはジュディマリの番組でした。土曜の夜10時とか11時頃だったかと思います。そのなかでも「エロQ」というコーナーが印象深く、エロっぽいけど実はエロスではないクイズを出題する、という謎の時間がありました。


当時出題された問題をいくつか出してみましょう…と思って思い出したけど、けどあんまりここに書いていい感じではなかったな。
悪いのはジュディマリです、あとクイズを投稿していたリスナー。

面妖な問題が妙なSEを交え妙なテンションで出題されていました。何故今でも覚えているのだろうか、ガッデム。本当にしょうもないんだけど(そんな問題をしっかり記憶している自分はもっとどうしようもないんだけど)、当時は食いつくように聞いていたな、エロスの力は偉大、フロイトは正しい。


大学に入ってから、ラジオをあまり聞かなくなりました。オールナイトニッポンとか聞いているやつを見て「カッケェ…」と思っていたんですが、自分がやると必ず寝落ちしてしまうので、オールナイト系は無理でした。あとはニコニコ動画やYou Tubeが台頭してきたのも大きいかもしれないな。
でもラジオは、あくまで「聞くだけでわかる」ように工夫されているからわかりやすいし、作業しながらなんとなく聞いていている分にはラジオの方が刺激が少なくて、自分にとっては良いですね。動画だと画面が気になっちゃうし。


最近またラジオを聞いていて、なんとなく昔のことを思い出すのです。好きな女の子と昨日やっていたラジオ番組の話をする、みたいな夢のような時間もありました。
…あったかな、いや無かったかもしれないな。

Tool『Fear Inoculum』

2019-09-11 00:21:51 | アメリカの音楽


今作、過去最高です。


Tool、13年ぶりの新譜です。冷静に考えて「13年ぶり」ってなんだよな???浦島太郎かよ。
でもリリースありがとう、本当にありがとう。生きていてよかったと思います、待っている間に私はすっかりおじさんになってしまいましたが。浦島太郎かよ。

なんだか夏休みの宿題を3学期の終わりに出された感覚に近いような。出してほしかったけど、そりゃ出した方がいいけど、「えっ今?」みたいな。嬉しいんだけどね、そりゃあもうブログを書いちゃうくらいに。
このアルバムが出てから、全国津々浦々のToolファンが少しずつこのブログに訪れてくれているようです。Toolの記事にばかりアクセスが集中している。それも嬉しい。来日したらみんな行こうね。
以前のレビューはこちら。

『Lateralus』
『10,000 days』


本作について。
決して派手な変化に満ちた作品ではないです。ずっと激しい曲は最後あたりの「7empest」くらいでしょうか。でも細かいキメとか拍子の変化とか、ベースとドラムの絡みとか。以前は最初から変拍子の曲が多かったですが、今作では1曲のなかでも拍子や曲調の変化が多い。ささやかな工夫で緩急や変化を加え、飽きさせないように凝らしている、じっくり耳を傾けていると音の渦に飲み込まれていく。それから歌メロもギターのソロも、全体的に心地よいフレーズが多い。複雑だけど聴きやすい、そんな作品だと思っています。さすが13年かけただけあるよな…!!(根に持ってます)
曲単位では『Ænima』も『Lateralus』も好きだけど、アルバムを通して聴くなら前作『10,000 days』か本作に軍配が上がるかな、といった印象。

以前の作品から更なる「深さ」を見せつつも、とても聴きやすい作品です。『Lateralus』の頃のように、急にウワッとテンションが上がることもなく、『Ænima』のように謎の留守電が入っていることもなく(笑)。1曲のなかでも、それからアルバムを通してもゆっくり上昇してゆっくり下降していく。これが本当に心地よい。あとメイナードおじさんの歌も上手、聴かせる感じで歌うM4「Invincible」やM6「Desending」、M7「Culling Voices」でゾクゾクします。カリフォルニアでワイン作ってるだけじゃなかったんだね。

強いて本作の難点を挙げるならばその「長さ」。なんと1時間27分あります。さすが13年(ry
なのでちょっとした通勤、通学では聴き終らずに消化不良になること必至。そのままモヤモヤして仕事や学業に支障をきたすこと請け合いです。でも不思議なことに毎日聴いちゃうんだよな、マゾなのかもしれない。


好きな曲
M1 Fear Inoculum
TOOL - Fear Inoculum


いきなりタイトルトラック。過去作の1曲目たちに比べたら地味ですが、どういうわけか癖になる曲です。謎の金属音とタブラ、そこにベースが乗ってくる瞬間が良い。冒頭は普通に4/4なのですが、途中から5/8と6/8が交互に押し寄せてきます。でも自然に聞こえるし格好いい。これぞTool、最高。

M2 Pneuma
TOOL - Pneuma


「Pneuma」という単語はギリシャ語で気流、風とか呼吸、転じて「存在の原理」や「生命」を意味する言葉のようです。そんな言葉を曲のタイトルにする時点で格好良すぎます。

“We born of one breath
One word
We are all one spark
Eyes full of wonder”


こんな具合に呼吸とか言葉の表出とか、そういった言葉が歌詞に出てきます。かなり抽象的な歌詞、でもかっこいい。最初のギターは4/4なのですが、その後のベースの拍子が複雑で数えようと思って何度も挫折しています。歌メロと絡み合うリズム隊。それでいて、不思議にも聴きやすい曲。間奏部では珍しくバスドラが4つ打ちしていますね、そこから盛り上がっていく部分が好き。

M9 7empest
TOOL - 7empest


はい文句なしにかっこいい曲。異論は認めん。
タイトルの「7」というのはどういう意味なんでしょうね。7つの大罪を表しているのか、七曜なのか、聖書に出てくる7つの門や災いなのか。あるいは7番目の太陽系惑である天王星を表しているのか。よくわかりません。よくわからんけど曲が良いってのはわかる(なんじゃそりゃ)。


正直言ってわからない部分が多いです。それも彼らの魅力ですが笑。人間の本性ってなんだ、お前の本質とはなんだ、というような内容の歌詞が多い気がする。上で取りあげたM2とかM9とか、なんとなくですが。まだ歌詞全部に目を通しておりません。
でもひとつはっきりしているのは、とんでもない名盤だということ。是非来日してくれ。東京大阪とかでやるなら両方行きたい、なんなら台湾あたりにも足を延ばしたい。それくらい、このバンドのことを心待ちにしていたので。


新譜が出てから聴くまで、ちょっとした躊躇いもあったのです。期待して、がっかりするような作品だったらどうしよう。今はそんなことを考えた自分が恥ずかしい。このバンドには妥協とか安易な焼き増しとか、そういったものと無縁なのでした。出来ることならば、私もそういった姿勢を見習って生きていきたい、そんな風にも思うのです。