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『永遠平和のために』カント
「永遠平和のために」が書かれた18世紀のヨーロッパでは、国家間の紛争が頻発。
民衆たちが戦争を忌避し平和を希求する一方で、国家間のエゴが対立しあい、一部権力者たちによる軍備拡張や戦費の増大がとめどなく進んでいました。
巨大な歴史の流れの中では、戦争を回避し、恒久平和を実現することは不可能なのかという絶望感も漂っていました。
そんな中、「国家」の在り方や「政治と道徳」の在り方に新たな光をあて、人々がさらされている戦争の脅威に立ち向かったのがカントの「永遠平和のために」です。
そこには、「常備軍の廃止」「諸国家の民主化」「平和のための連合創設」など、恒久平和を実現するためのシステム構築やアイデアが数多く盛り込まれており、
単なる理想論を超えたカントの深い洞察がうかがわれます。
それは、時代を超えた卓見であり、後に「国際連盟」や「国際連合」の理念を策定する際にも、大いに参考にされたといわれています。
哲学研究者、萱野稔人さんは、民族間、宗教観の対立が激化し、テロや紛争が絶えない現代にこそ「永遠平和のために」を読み直す価値があるといいます。
カントの平和論には、「戦争と経済の関係」「難民問題との向き合い方」「人間の本性に根ざした法や制度のあり方」等、
現代人が直面せざるを得ない問題を考える上で、重要なヒントが数多くちりばめられているというのです。
カント