goodシネマ 全集
⑮ 映画『第三の男』
イギリス人作家グレアム・グリーンのオリジナル脚本を名匠キャロル・リードが映画化したフィルムノワール。
第2次大戦終戦直後、米英仏ソの四カ国による分割統治下にあったウィーンに親友ハリー・ライムを訪ねてきたアメリカ人作家のホリー。
だが、ハリーの家に着くと守衛からハリーは交通事故で死亡したと告げられる。
腑に落ちないホリーはウィーン中の関係者をあたり、真相究明に奔走するが……。
出演はジョセフ・コットン、アリダ・バリ、そして謎の男ハリー・ライムにオーソン・ウェルズ。
カンヌ国際映画祭でグランプリを受賞。
1949年製作で、日本では52年に劇場公開。
第三の男 The Third Man
ウィーン市街でロケーションされた撮影の素晴らしさには目を見張る。
特に夜景シーンにおける「光と影」のバランスは特筆すべきであり、モノクロ作品の金字塔として評価されるのもなるほど頷ける。
圧巻は地下水道での追跡劇。俳優たちの吐く息の白さが冷え冷えとした空気をリアルに伝え、
「イタリアは、戦争や虐殺が絶えないボルジア家圧政のわずか30年間でミケランジェロやレオナルドダヴィンチ、そう、ルネサンスを生み出した。
しかし、スイスはどうだ。民主主義と平和の500年の慈愛に満ちた歴史は一体何をもたらしたのか。鳩時計だ。」
ハリーの葬儀を終えたアンナがホリーの前を無言で通り過ぎるラストシーンはまるで写実派の画家が描いた絵のように美しく切ない
『第三の男(イギリス・アメリカ1949)』 より「ラストシーン」
この作品でご紹介すべき点はいくつもあります。
冒頭のチターの名曲/ハリー・ライムの登場シーン/
劇中で吐かれる名セリフ/枯葉散る中のラストシーンなどは多くの人が取り上げていますが、
個人的には、例の観覧車の中でウェルズがちらりちらりと見せる「殺気を帯びた眼光」も挙げておきたいと思います。
第二次世界大戦直後のウィーンを舞台にして、あくどく金儲けに走った闇屋ハリー・ライム(オーソン・ウェルズ)が
自動車事故で死にますが、その経緯にはなにかしら釈然としないものが残ります。