三酔人の独り言

ルポライター・星徹のブログです。歴史認識と国内政治に関わる問題を中心に。他のテーマについても。

ロシアは悪、ならば、米国は善か?

2022-07-31 09:47:25 | 国際政治
 ロシアは2022.2.24、ウクライナへの軍事侵攻を開始した。主権国家への侵略行為であり、国際法違反の暴挙だ。その後も軍事攻撃を続け、ウクライナ人民に対し、暴虐の限りを尽くしている。人道と正義に反する、許されない行為だ。

 ロシアによるウクライナへの侵略は、今回新たに始まったのではない。2014年、ロシアは、ウクライナのクリミア半島を力ずくで併合し、現在も居座り続けている。こうした主権国家への侵略行為は、明らかに国際法違反であり、許されるはずがない。だがロシアは、世界中からの批判と「制裁」を嘲笑うかのように、開き直っている。

 この2014年のロシアによる不法・侵略行為に対し、日本を含む諸国が甘い対応に終始したことが、今回(2022年)のウクライナ全面侵略を招いた一因、と言えるのではないか。

この問題に関しては、以下も参照されたい。
 当ブログ2015.3.18《ロシアは現代の「ナチスドイツ」になるのか?》
 当ブログ2022.3.27《シンゾーの素人「内交」がプーチンを増長させた》


 こうしたロシアの暴挙に対し、〈絶対に容認せず、徹底批判する〉〈やり得を許さない〉ことが、重要だ。私は、ウクライナの正義が「形として成就」することを、心から願っている。さらに、ロシアに対抗する国々に対し、「応援したい」とも思っている。

「ロシアに対抗する国々」の筆頭格は、米国だろう。だが、〈待てよ〉という思いが、頭の中を過(よ)ぎる。〈米国は、本当に正義の国なのか? 今まで、何をやってきたのか? そして、現在は……〉と。

 2003年に始まったイラクへの軍事侵攻は? 主権国家への明らかな侵略行為であり、国際法違反ではなかったのか? 〈大量破壊兵器がある〉との虚偽情報に基づき、イラクへ軍事侵攻し、多くのイラク人民を虐殺したではないか。

 国際法を蹂躙し続けるイスラエルへの肩入れも、正義と国際立憲主義に反するのではないか? 米国による支持・支援によって、又は「曖昧対応」「見て見ぬふり」によって、イスラエルによる不正義・不法が、「野放し状態」にされ続けているのではないか?

 パレスチナ自治区ヨルダン川西岸地区などでのイスラエルによる入植活動は、明らかに国際法に違反する行為だ。だが、米国政府は、イスラエルを擁護、あるいは、「軽い苦言」を伴う「実質容認」の姿勢を採り続けてきた。米国政府は、イスラエル政府に乗っ取られ、操縦されているかのようだ。

 トランプ前大統領に至っては、明らかな不法行為であるにも拘(かか)わらず、「イスラエル擁護」あるいは「支持」の言動を繰り返した。トランプ政権は2019.11.18、イスラエルによるパレスチナへの入植活動について、「国際法違反と見なさない」と発表した。あからさまな方針転換だ。この米政府の決定に対し、パレスチナ解放機構(PLO)の交渉担当者は、「国際法を『ジャングル法』に変えてしまう恐れがある」と批判した。〔*WEB「BBC NEWS JAPAN」2019.11.19参照〕
 
 高橋和夫『イランvsトランプ』(ワニブックスPLUS新書/2019年9月)に、以下記述がある。

〈トランプ大統領は、2019年3月にイスラエルのゴラン高原に対する主権を承認した〉(P54)
*ゴラン高原は、シリア領。イスラエルは、第3次中東戦争(1967年)で、シリアから同領土を奪った。国際法上、占領地を併合することは違法行為。

〈国際社会は第二次世界大戦後、武力併合された土地の領有を認めてこなかった。ところが今回、トランプはこの原則を一方的にほごにした。その結果、アメリカはロシアのクリミア編入だけでなく、これから起こる武力併合に対しても物申す資格を失った。理念より内政事情を優先した外交の落とし穴である〉(P57)

 こうした「内政事情を優先した外交」は、日本の安倍晋三政権でも、別の場面で出現している。前掲の当ブログ《シンゾーの素人「内交」がプーチンを増長された》を参照されたい。

 ロシアによる今回(2022年)のウクライナ侵略戦争は、「国際法を『ジャングル法』に変えてしまう恐れ」が、まさに、現実化した実例と言える。

 こうして見れば、米国による一連の言動は、ダブルスタンダードであり、「説得力に欠ける」と言わざるを得ない。〈ロシアの行為は不当で許されないが、イスラエルの行為は正当(又は「不当ではない」「許す」〉なる内容の言説に、論理で説得される人はいないだろう。

 ロシアによるウクライナ侵略は、絶対悪と断言できる。「米国の語る正義」のダブルスタンダードや胡散臭さに拘わらず、この評価自体は揺るがない。

 だが、「米国の正義」なるものに対して、〈絶対の信頼感を持てるか?〉という疑念は、別問題として残り続ける。

 私は、「立憲民主主義、特に、言論・報道の自由の存否」が、〈その国の信頼度を測るうえで最重要〉と考えている。

 その点で、ロシアや中国などの専制主義・集権国家より、米国などの自由民主主義体制の国々のほうを、根源的には信頼している。
*日本は一応、自由民主主義体制グループに入る。だが、〈徐々に専制主義・集権国家に近づきつつある〉と危惧する。特に、安倍晋三政権で、その傾向は一気に強まった。

 ゆえに、本来なら、声高らかに「日本も、米国の正義の側に立つべき」と叫びたいところだ。だが、やはり〈待てよ〉と思ってしまうのだ。

 ロシアのプーチン大統領は、おそらく、〈米国はこれまで、国際法と国際秩序をさんざん無視し、好き勝手にやってきた〉〈ロシアが同じようなことをやって、なぜ悪いんだ〉と思っているだろう。

 他の軍事強国も同じように考え、軍事的能力と意志さえあれば、ロシアと同じような行為に打って出る可能性も、十分にあり得る。

 そうした暴挙を、米国は望むのか? 特に、中国との軍事衝突は、望まないはずだ。そうであるなら、米国は国際ルールの守護神となり、国際立憲主義を体現するリーダーを目指すべきではないか。こうした選択は、道徳面だけの問題ではなく、米国の中長期的な国益にも合致する、と思うのだ。

 この米国問題は、日本にとっても、他人事(ひとごと)ではない。特に米中関係の悪化に際しては、死活的な問題になり得る。

 米国はまず、「イスラエルの後見国」的な立場から、脱却すべきではないか。もしこの方向に進むなら、現在の「イランとの無用な対立」を緩和でき、中国とロシアによる「イラン囲い込み」に楔(くさび)を打ち込めるはずだ。こうした方向性こそが、中東、ひいては世界の安定にもつながり、米国の国益にもつながる、と思うのだ。

 もちろん、こうした方向への転換は、日本の国(民)益にもつながるはずだ。
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