三酔人の独り言

ルポライター・星徹のブログです。歴史認識と国内政治に関わる問題を中心に。他のテーマについても。

G7〝先進民主主義国〟のご都合主義

2024-06-16 13:53:55 | 国際政治
 イタリアで行なわれた主要7か国(G7/米・英・日・仏・独・伊・カナダ)首脳会談は、2024.6.14に首脳声明を採択し、翌日に閉幕した。

 声明では、①経済や安全保障面での中国への懸念、②ロシア支援国への牽制とウクライナ支援、③人工知能(AI)問題、④経済安全保障問題、⑤ガザ地区での即時停戦と人道支援の必要性──などが記された。

 G7という先進「民主主義国」が立派な声明を出し、世界の平和と安定に資する役割を先導するなら、喜ばしいことだろう。だが、米国を中心とするG7諸国に信頼を寄せる国や人々は、世界の中でますます少なくなっているのではないか。

 この首脳声明では、「民主的原則と自由な社会、普遍的人権、社会の進歩、多国間主義と法の支配の尊重に対する共通の信念を表明する」と、改めて崇高な理想が掲げられた〔*「朝日新聞」2024.6.16朝刊(下司佳代子)参照〕。

 同記事は続けて、次のように述べている。
「イスラエルは甚だしい人道危機や民間人の殺傷を引き起こしてきた。そのイスラエルを支持し続ける米国などの姿勢に、グローバルサウス(新興国、途上国)の多くの国々が共鳴していない。ロシアを批判しながら中東での人権侵害は事実上容認する「二重基準」だというロシアの主張が一定の説得力をもって受け止められている。」

 少し抑制的な表現だが、至極真っ当な記事だ。首脳声明で掲げられた普遍的人権なる理念は、美しい言葉だが、イスラエルの暴虐を事実上「許して」いる現状を考えると、空々しく聞こえる。

 G7諸国は、個別には様々な問題を抱えながらも、「言論・報道の自由」「自由な選挙」「三権分立」といった形式的な民主主義を基本的に尊重している(はずだ)。これら諸国は「民主主義国」と一定の評価を受け、「だから良い国なんだ」と誇ってきたはずだ。私も、そうした「良い点」を誇って当然であるし、そうした制度が世界中に広まってほしい、と願っている。

 だが当ブログで繰り返し述べてきたように、G7諸国は、国際立憲民主主義という観点から見れば、「真の民主主義国」とは全く言えない。もちろん、その「否定度」には強弱があるのだ。

当ブログ2023.11.25「「民主主義国」は国際的に立憲民主的か?」
同2024.1.8「ロシアの独裁体制と西側諸国の「半民主制」」


 特にその「否定度」が強いのは米国であり、「イスラエル支援・支持」のありようは「真の民主主義」とは対極にある、と言っても過言ではない。また、現在のドイツ政府の姿勢もかなり深刻なものだ〔*国民の反発が強いのは救いだが〕。

 本来であれば、上記のような形式民主主義が世界中に広まることで、内容としての「真の民主主義」が徐々にでも形作られるべきなのだ。それなのに、形式民主主義を唱える「先進諸国」は、せっかくの利点に泥を塗る行為を推し進めている。特に、「米国の病」は深刻であり、日本はそうした「重病大国」に追随し、しかも思考停止に陥っているのだ。以下を参照されたい。

当ブログ2023.12.30「日本は米国と心中するのか?」
同2024.4.20「「朝日」社説から考える「日本を含むG7の不正義」」
同2024.6.2「そろりと「米国離れ」を進め、日本の独自外交を」


 私は、ロシアのような集権国家・全体主義国家が世界で影響力を強め、さらに類似国家が増えるような事態を、懸念している。そうした事態を回避するためにも、「自国内での形式民主主義」を大切にする諸国が国際立憲民主主義を重視することで、世界中の国々や人々から支持されるようになってほしい、と思うのだ。

*最後の段落で、一部の語句を補った。(2024.6.17)
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