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読書備忘録

私が読んだ本等の日々の
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奥田 英朗著「オリンピックの身代金 」

2009-06-20 | 奥田英朗
昭和39年夏。10月に開催されるオリンピックに向け、先進国に仲間入りすべく世界に恥じない大都市に変貌を遂げつつある首都・東京を舞台に当時の理不尽な格差社会に疑問を抱いた一人の若者が国に挑んだ反逆の狼煙を描いた高度成長期の昭和史ドラマ。
この戦後最大のイベントオリンピックの成功を望まない日本国民は誰一人としていないだろうというそんな気運が高まるなか、警察を狙った爆破事件が発生。
同時に「東京オリンピックを妨害する」という脅迫状が当局に届けられ、やがて警視総監宛てに爆破を止めてほしければ8000万円を払えとの脅迫状が届く。国民の動揺や海外向け対面を重んじてこれらの一連の出来事はマスコミに公表されることなく国民に知らされることがなかった。
公安警察や警視庁の刑事たちが極秘裏に事件を追うと、一人の東大生の存在が捜査線上に浮かぶ。
「昭和」が最もエネルギーに満ち熱った時代、オリンピック直前に沸く60年代の東京の街並みが緻密な時代考証と圧倒的スケールで描写される。
若きテロリストの行動とそれを国家の威信をかけて追う側の警察取り組みが日付のタイムラグを保ちながら交互に展開されるという両者の攻防が、終盤の開会式当日のクライマックスを迎えるに連れて徐々に狭まりついに合致、対峙する物語の構成がとてもスリリング。
「空中ブランコ」や「町長選挙」「ララピポ」「サウスバンド」の作風とは違うのでそれを期待するとガッカリするが著者の「最悪」や「邪魔」の部類に属する作品で、人物描写や細やかな心理描写・人間関係等リアルで緻密な時代背景が書き込まれたサスペンスです。
中国での北京オリンピックの開催前にも表に出ない隠された裏事情がたくさんあったのではないかとフッ~と思った。

2008年11月角川書店刊

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