読書備忘録

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中山七里著「護られなかった者たちへ」

2019-12-12 | な行

生活保護にスポットを当てた社会派ミステリー。仙台市の福祉保健事務所課長・三雲忠勝が、手足や口の自由を奪われた状態の餓死死体で発見された。三雲は公私ともに人格者として知られ怨恨が理由とは考えにくい。一方、物盗りによる犯行の可能性も低く、捜査は暗礁に乗り上げる。三雲の死体発見から遡ること数日、一人の模範囚が出所していた。男は過去に起きたある出来事の関係者を追っている。男の目的は何か?なぜ、三雲はこんな無残な殺され方をしたのか?続いて第二の殺人が起こった。二人の被害者をつなぐ線は何か。担当刑事の県警捜査一課の笘篠誠一郎は、大震災の津波で妻子を失っている。無辜の善人がなぜ死なねばならないのか。重い問いかけに答えはない。罪と罰、正義が交錯した先に導き出されるのは、切なすぎる真実だった。生活保護を必要とする者が予算削減という政策のために保護を受けられず、むしろ罪を犯し刑に服した者の方が厚い保護を受けている実態には疑問に感じる事多し。最後のドン伝返しは途中で予想が付いたのは少し残念。最後の方「護られなかった人たちへ・・・どうか声を上げてください。・・・不埒な者が挙げる声よりも、もっと大きく、もっと図太く」(P379~380)のメッセージには胸が痛む。

20181NHK出版刊


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