半ひきこもり青年と祖父が主人公。元刑事で、現在は神奈川県小田原市鴨宮で「防犯アドバイザー」を務める麻生和馬。元引きこもりで父親のいる東京から拉致されるように引きとられた孫・新城将。「二万円やるから、俺のバイトを引き受けろ。張り込みだ」。無茶振りされた孫は、ある老女の“捜査”ならぬ“調査”を開始するが、ある日からその姿見えなくなる。そして、暗い顔で子ども食堂に通うネグレストされた母子家庭の少女怜奈も行方不明になる。昔の肩書や人脈を生かし、行方不明となった高齢者や、女子中学生の家出といったご近所のトラブルに首を突っ込んでいく。
そこから見えてきたのは、独居老人やネグレクトなど、現代の家族が抱える問題。熱血漢の麻生と、現代っ子である将の視点を対比し、問題が立体的に浮かび上がる展開はさすが。将と麻生は、ともに家族関係で苦しんだ過去を持つ。それが調査の熱量や、調べる相手への優しさにもつながっている。派手な事件は起こらないが、家族のあり方を考えさせられた。
2018年10月中央公論新社刊
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