読書備忘録

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大沢在昌著「帰去来」

2019-09-01 | 大沢在昌

SF風パラレルワールド警察小説。「殺されたのか・・・」。目を開けると、そこは見た目や名前の似た人間が暮らす異次元の「光和26年のアジア連邦・日本共和国・東京市」という戦禍で経済発展が遅れ、犯罪者が跋扈するもう一つの荒廃した世界だった。警視庁捜査一課に抜擢され3年目の志麻由子は、連続殺人犯の囮捜査中に、何者かに首を絞められ気を失う。その世界のもう一人の自分は異例の出世をした“東京市警のエリート警視”だった。さらに、部下だと名乗る男性は、かつて付き合っていたボーイフレンド・里貴にそっくりだった。やがて部下から聞いたもう一人の自分は闇組織からは命を狙われ、警察内部でも汚職警官の摘発など、非情な捜査方法が非難を浴び、孤立無援の存在であることを知る。戸惑いながらも彼女は、“エリート警視・志麻由子”となって捜査を継続するしかその世界で生きる方法がないと悟り・・・。

タイムトリップしたのが戦後の東京を彷彿とさせる、ヒロインの由子は最初弱虫だったが並行世界で強い自分になりきることで情けあり勇敢で理知的でかっこいい人間に変わっていく。レトロでノスタルジーを感じさせる世界。二つの世界に類似点と異質を持たせつつ、しっかりと因果関係を設定し、現実には起こりえないシチュエーションの展開を楽しませてくれる。由子が自分の過去と向き合いつつ元の世界からなぜパラレルへ飛んだかいつもとに戻れるかと興味を持たる展開はハードボイルドながら生き様が描かれ深い絆の物語でもありました。

2019年1月朝日新聞出版刊


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