読書備忘録

私が読んだ本等の日々の
忘れない為の備忘録です

白石一文著「翼」

2011-09-28 | さ行
テーマ競作「死様」シリーズの1冊です。私的には読んだのは6冊中5冊目になります。
親友の恋人であるが、ほとんど初対面の男から結婚を申し込まれた学生だった田宮里江子。
十年後キャリアウーマンになり、医師になった二人は再会する。彼は彼女の親友と子を成し家庭を持っているものの、当時の気持ちはまったく変わっていなかったそれどころか、確信を深めたと言う。そして誰だって真実の人生を見つけられると言う。
自分の直観を信じて生きたいと願う男と、何に囚われているのか正直になれない女。
二人の行く末を通じて自分自身の死よりも、さらに致命的な死があると説く。
常識と道徳の枠外にあるもの「誰かの不幸を前提にした幸福なんて、この世界に存在できるはずがない」(P158)と女がいい。
彼は「僕たちの人生は誰かを不幸にしないためにあるわけじゃない。 愛する人を幸せにするためにある
のだし、そして、何よりも自分自身を幸福にするためにあるんだ。」(P184)
「最も大事なことは、この人が運命の相手だと決断すること」(P209)
「自分のことを最も深く理解してくれている人間の死は、自分の死と限りなく近いのかもしれませんね」(P99)
「愛のない世界で生きることは、死んでしまうことよりもずっと苦しみに満ちている」(P181)
211ページの物語はけっして軽くない重たい内容です。生きる意味について考えさせられました。


2011年6月光文社刊

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