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読書備忘録

私が読んだ本等の日々の
忘れない為の備忘録です

堂場瞬一著「小さき王たち 第2部泥流」

2022-10-10 | 堂場瞬一
政治と報道をめぐる三部作第2部。父親と同じ新聞の世界に飛び込んだ新潟支局の新米記者・高樹和希のもとに、鈴木と名乗る謎の男から投資詐欺、選挙資金不正疑惑のタレコミがあり、初めてのスクープの予感に和希は沸き立ち、和希の父で今は社会部長の治郎もとにも同様の情報が入り部下を動かして共に取材を進める。時は、バブル崩壊、阪神淡路大震災と米国での同時テロを経て、時代が激しく揺れ動いていた1996年12月。新聞がインターネットに負けるわけがないと思われていた頃。しかし、その背後には、25年前に贈収賄事件で治郎と敵対し、以来マスコミの支配を目論む今は民自党の国会議員となった・田岡総司とその秘書で息子の稔の影がチラついていた。田岡の高樹への恨みが四半世紀も胸に抱き続け、怨念の中で生きてきたことに驚き。高樹が息子の和希に「一人の人間が生涯を懸けて対決していかないといけない課題」といい。新聞社内部の社会部と政治部の立ち位置の違いや争いも面白い。新聞を軸としたマスメディアが政治に取り込まれて行く過程がリアルに描かれている。後半ネタ元の意図、鈴木とは誰だがあきらかになる。孫世代2021年代の第3部「激流」に期待。
2022年7月角川春樹事務所刊

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堂場瞬一著「小さき王たち 第一部激流」

2022-09-27 | 堂場瞬一
現代日本の政治と報道をめぐる大河政治小説三部作。政治家と新聞記者が日本を変えられた時代―。高度経済成長下、日本の都市政策に転換期が訪れていた1971年12月。衆議院選挙目前に、新潟支局赴任中の若き新聞記者・高樹治郎は、幼馴染みの田岡総司と再会する。田岡は新潟選出の与党政調会長を父に持ち、今はその秘書として地元の選挙応援に来ていた。彼らはそれぞれの仕事で上を目指そうと誓い合う。だが、選挙に勝つために清濁併せ呑む覚悟の田岡と、不正を許さずスクープを狙う高樹、友人だった二人の道は大きく分かれようとしていた。金権選挙、選挙違反までしても当選してしまえば国民の代表としての国会議員。そんな国会議員は信用や信頼できない。ましてや不正に関与した者を罰することもできない裏事情などあり得ないと思う、だが選挙のたびに囁かれる噂話に焦燥感を持つのはいつもあること。さらに、取り締まる側の人間を買収したり、捜査に圧力をかけたりするそんな世界が描かれているのだ。続編に期待したい。
7月に『第二部:泥流』・・・予約中。10月に『第三部:激流』刊行予定。
2022年4月早川書房刊   

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堂場瞬一著「沈黙の終わり」(上・下)

2022-09-15 | 堂場瞬一
千葉県野田市の江戸川沿いで7歳の女児の遺体が発見された。東日新聞柏支局の定年控えたベテラン記者・松島慶太は早速取材に乗り出す。そのニュースを聞いた埼玉支局の古山孝弘は、埼玉でも4年前に8歳の女児の行方不明事件があったことを思い出す。調べてみると、その現場は吉川市で、今回の野田の事件と江戸川を挟んですぐ近くだった。古山と松島が協力して両県の類似の事件を洗うと、江戸川近くで33年間に7件の女児殺害もしくは行方不明事件が起きていたことが判明、しかもそのすべてが未解決。不審に思ったふたりは過去の事件を取材するが、両県警はなぜか妙に冷たい。さらには取材への圧力ともとれる言葉まで飛び出してくる。古山は本社へ転勤間近、松島は手術後の仕事に復帰したばかりで、思い通りには動けないなかで真相を探っていく。やがて兎に角記事にして投げかけて、古山は東京へ転勤。ここまでが上巻。下巻は自殺した野田警察署長の手紙と、圧力をかけられ辞めた、元警察官僚の女性覆面作家の証言、そして、ついに現れた巨大なる黒幕・・・・。新鋭とベテラン、ふたりの新聞記者の矜持は、最悪の殺人事件の真相を暴ける闇に葬られた迷宮入り事件を、記者魂溢れるふたりが掘り返していくサスペンス。なぜ捜査の矛先が鈍ったのか。なぜ取材に圧力がかかるのか。背後にあるものに忖度することなく突き進むベテランと新鋭のふたりが、血の通った人間としてリアルに描かれ、スリリングな事件の行方がミステリーとして展開される。が、話はそこにとどまらない。物語は今の新聞社に内在する問題にも深く切り込んでいく。
「新聞が斜陽産業と言われ久しい。90年代にインターネットが普及し始めてから、紙のメディアの需要減る一方だ。・・・部数の低下は広告収入の低下に繋がり財政的に追い込まれている。・・・ニュースなんかネットで読めばいいと多くの人が言うが、そのニュースのほとんどが新聞やテレビの提供なのだ。」(上P216)「新聞記者は、取材対象を追いかけ、ただネタをもらうだけの存在だと揶揄する人がいる。取材対象に完全にコントロールされ、正義感も何もないのだろう、と実際、権力がマスコミをコントロールするのは珍しくも難しくもない。」(下P159)「今更、新聞の信頼を取り戻すのは難しいかもしれない。俺は、一番の原因は、権力に対する真っ当な批判がなくなったことじゃないかと思うんです」(P///)
「惰性で新聞記者の仕事をするな。・・・シビアな取材をして、社会悪を抉り出す仕事を続けていかないと、本当に新聞は駄目になる。(下P281)
自らも新聞記者だった著者による、今の新聞メディアへの警鐘であり、批判であり、著者の思いである。物語が組織の中から協力者や内部告発者が現れる展開は、良心と矜持が残っている人を特に描きたかった著者の思いからだろう。
長編だが一気に面白く読めた。
2021年4月角川春樹事務所刊

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堂場瞬一著「0 ZERO」

2022-05-14 | 堂場瞬一
白表紙に黒字で1文字題名の「0ゼロ」。なんだ、この本はという期待はあったのだがまさかの処女作盗作疑惑ミステリー・・・。「凄い原稿がある」ベストセラー作家が死の間際に残した一言より始まった原稿捜索。作家古谷悠は、自分の師と仰ぐ同郷の偉大な作家の岩佐が亡くなり出版社・礼山社の編集者仲本美知から、評伝を書く依頼を受ける。岩佐の遺品整理をやるかたわら人生を辿っていくうちに、未発表の原稿があることが分かってきたが、それはどうやら岩佐の人生の暗部に繋がりかねないものだった・・・。終盤の学生運動を背景にした挿入中編小説「屈曲の海」は面白かった。そんな6~70年時代だったのかあの時代は、哀れなNとK。「スタート地点―――ゼロ地点から間違っていたのだ。間違ったままスタートさせてしまった人生に何の意味があったのだろう。その後は全て“虚構” だと思っていなかったか?」(P348)
2022年2月河出書房新社刊

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堂場瞬一著「メビウス1974」

2022-03-27 | 堂場瞬一
1974年10月14日―「日本の夢が終わった日」。長嶋茂雄引退試合と、三井物産爆破事件が同時に起きたその日、過激派狼グループの次代の「エース」だった・下山英二が突然、失踪した。42年後学生運動の元闘士らしき主人公下山が過去の自分に清算を図るべく静岡から42年ぶりに上京するところから始まる・・・。当時共にシンパとして資金援助していた当時の仲間たち、下山を追う元公安刑事、下山が恋し愛した女、下山と決別した弟。もう二度と会うはずのなかった男女が、42年ぶりに再会した時、最後に見たものは、絶望か?希望か?・・・読んでいて主人公の考え方や行動にイライラしながら感情移入出来ず読み進めた。展開はゆっくりだ、最後のどんでん返しに仕掛けは感じたが、それはひっくり返したことより、さらにイライラを加速させるためのものでしかなかったのだが残念。「Gは永遠に不滅です」と長島が引退した日2022年の今からなら48年前自分は何をしていただろうとその後の自分の人生と重ねわせて読んだのだが・・・。阪神淡路・東日本大震災、オウム事件、米同時テロ、大きな出来事があまりにも多すぎた感のほうがあるかも。
2016年10月河出書房新社

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堂場瞬一著「聖 刻」

2022-03-24 | 堂場瞬一
主人公は、MGのV8を愛車にする身長165cmの合気道の使い手で加害者と被害者の狭間で苦悩する女性刑事柿谷晶。大物司会者の息子が、元恋人を殺害したと出頭。捜査一課殺人犯捜査第8係の女性刑事・柿谷晶は同僚の井端と取り調べに臨む。だが、被疑者は犯行を自供する一方、動機については口を閉ざす。晶は被疑者の家族に接触するが、家族はネット上の誹謗中傷に悩まされていた。加害者の家族だからといって、責めることは許されるのか。自らも兄が加害者だった苦い記憶が甦る中、家族に張り付き、事件の背景を探る晶。犯罪被害者支援課の村野らと協力しあい、留まることのない加害者家族への悪意と戦いながら捜査を続ける晶だったが、やがて事態は最悪の方向に向かう・・・・。振りかざされる「正義」は、単なる「悪意」の裏返しだ。警察が被害者だけでなく加害者支援という立場で動く展開。ネット社会の歪みを鋭く追及した作品ですが題名の聖刻の意味が最後まで判らなかった。
2021年8月講談社刊

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堂場瞬一著「幻の旗の下に」

2022-01-01 | 堂場瞬一
幻に終わった1940年東京オリンピック。代わりに計画された、新たな国際競技大会。日中戦争の拡大を受け、東京オリンピックの返上が決まった1938年。大日本体育協会は、オリンピックに変わる、紀元二千六百年記念事業として国際大会開催を画策していた。立教大学野球部出身で、末広の秘書を務める石崎保は、体協幹部や陸軍などの政治的な思惑に疑念を抱きながらも、平和の象徴としての代替大会を開催するべく「面従腹背」な面々と交渉を重ねていく。一方、ハワイにある日系人野球チーム「ハワイ朝日」のマネージャー・澤山隆の元に、旧知の石崎から電報が届く。返上された東京オリンピックの代わりとして開かれる「東亜競技大会」に、野球のハワイ代表として参加してくれないか、という招請状だった。その実現と参加に向け、海を越えた友情を信じて奔走する二人に立ちはだかるのは、官僚、政治家、陸軍、チームメイトたちだった。TVの大河ドラマ「オリンピック物語」で描かれていなかった80年前の知られていない歴史を浮かび上らせた感動のドラマです。太平洋戦争前の米国における日系人の緊迫した心理状態がよくわかった小説でした。
2021年10月集英社刊
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堂場瞬一著「赤の呪縛」

2021-12-15 | 堂場瞬一
「父と子の相克」というテーマのミステリー。警察官である息子と、政治である父。銀座の高級クラブで放火事件が発生。オーナーの女性と容疑者の女が命を失った。警視庁捜査一課の刑事・滝上亮司が、捜査を進めると、背後に政治家である父の存在が浮かび上がる。かつて父を憎み、政治家の父に反発して一度落ちぶれたが立ち直り、警視庁の刑事になった過去がある刑事だ。一見、焼身自殺とみられた事件が実は父との関係が深かった女性も巻き添えになったことから捜査を開始する。地元の静岡県で調査をするたびに父の関与が疑われ、周りの人間が父の政治生命を守るために動いていたらしいが具体的な物証は出てこない。父との直接対面でも立証はできなかった。この物語とんでもないドラック「スヴァルバン」という名の薬の副作用の是非が問題だがそれを無視しても政治の世界の忖度が気にかかる展開。破滅するのは、父か、己か。権力と血脈、信頼と裏切りに翻弄された男たちの物語です。赤とは火事の赤、中国か赤とも思ったが血の赤でした。
2021年5月文藝春秋社刊

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堂場瞬一著「帰 還」

2021-10-23 | 堂場瞬一
事故死とされた新聞記者の死の真実を探るサスペンス小説。「なぜ友は死んだのか。」入社して三十年。工場夜景の撮影中に、東日新聞四日市支局の記者、藤岡裕己が水路に転落して溺死。警察は事故死と判断したが、本当なのか。葬儀に出るために同期の3人が四日市に向かったが、彼らは藤岡の死に釈然としないものを感じた。以前、水害の取材で流されそうになって水に恐怖感をもっていた藤岡が、危険な水路の撮影に行くだろうか。事故か、自殺化、他殺か。そもそも、社会部から異動してずっと総務局勤務だったのに、突然、50歳を過ぎてからかつていた四日市支局に異動の希望を出したのも解せない。25年前に四日市支局の園田という記者が自殺したことがあったが、何か関係があるのか。通夜には珍しい男の姿があった。衆院選で当選して、1期で辞めた猪熊一郎だった。同期の死に不信感をもった藤岡とともに新人時代を三重県で過ごした同期三人が、真相究明に乗り出す。気ままな編集委員の松浦恭司、初の女性役員になりそうな高本歩美、何故か出世ルートをはずれ出向中の本郷太郎、それぞれ家族の問題でも悩みを抱えていた。共通の悩みは「新聞離れ」による経営の悪化だ。人は減らされ、経費は使えない。やがて3人はある疑惑にたどり着く。新聞社が置かれた厳しい現状と定年が近いそれぞれの記者人生と、地方特有のムラ社会のつながりを絡ませたミステリー。展開が遅く人間関係の複雑さなど読み難いし、結末の曖昧さも納得のし難い出来。四日市市が舞台だったが唯一の興味だった。2019年4月文藝春秋社刊  

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堂場瞬一著「刑事の枷」

2021-10-20 | 堂場瞬一
警察小説。川崎中央署の交番勤務から刑事課に上がったばかりの若手の村上翼刑事と、署内でも嫌われ者で自分勝手に過去の未解決事件を追っている影山康平刑事のコンビで、過去の事件の真相に迫る展開。同僚の不祥事を内部通告した「裏切り者」として疎外されている影山が、警察に居座り続ける理由――それは、十年前の殺人事件にあった。村上の熱気と葛藤、嫌われ者の刑事・影山の「過去」が交錯する事件の背景に重きが置かれていて題名の「枷」の意味が明かされる。
上意下達の典型ともいえる警察組織の中での組織からの逸脱具合や若手のずうずうしさが気になるし、展開のご都合主義的な部分など気になるが、細かな点を無視して読めばそれなりに村上の成長物語と楽しめまた。
2021年1月角川書店刊

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堂場瞬一著「チームⅢ」

2021-09-27 | 堂場瞬一
駅伝・長距離小説〈チーム〉シリーズ第3弾。スポーツ小説、舞台は東京オリンピック前、スランプに陥ったマラソンのメダル候補日向誠。なんとしても日本選手にメダルを獲らせたい陸連は、引退した日本記録保持者・山城悟に白羽の矢を立てた。山城は、かつて箱根駅伝の学連選抜メンバーとして伝説を作った孤高の天才ランナー。現在は広島県大崎上島で、レモン農家を営む実家の手伝いをしている。この山城に日向のコーチをさせようというのだが・・・前半は山城を引っ張り出す迄が語られる。個人コーチと日向の関係が語られる。学連選抜の駅伝チームから受け継がれる面々が、今回も活躍。したがって1から順番に読まないと人間関係の理解が解らない気がする。何のために、走るのかが理解出来た上、限界まで自分を追い込まないと勝てない。マラソンは練習と精神鍛練が、必要不可欠であると。学連選抜で戦ったメンバーが山城をサポートする感動物語でした。「襷はあいつに渡した。いずれあいつも、誰かに襷を渡す。それが、俺たちが生きている世界なんだ」(P352)
2020年3月実業之日本社刊

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堂場瞬一著「大連合」

2021-08-26 | 堂場瞬一
高校野球スポーツ小説。県内ナンバーワン投手・里田を擁する新潟成南高校を悲運が襲う。練習試合後の選手を乗せたバスがまさかの横転事故。里田は軽傷だったが、監督と部員の半数が重傷を負い、夏の予選出場は絶望的と思われた。一方、強豪・鳥屋野高校は監督のパワハラで退部者が続出、廃部の危機に瀕していた。唯一の三年生・キャプテン尾沢を含め、全部員が五人に激減したのだ。予選エントリーまで二週間。尾沢は、中学でバッテリーを組んでいた里田に「連合チーム」を結成して出場しようと、持ちかけるが・・・。甲子園を目指す寄せ集め感のあるチームが数々の困難を乗り越え出来上がっていく過程の物語。協力の得られない伝統校のOB会、応援団、に対してブラスバンド部や名女子スコアラー、テーピングの達人などの協力や応援を得て試合を勝ち進む臨場感あるシーンがあり楽しく読めた。
2021年6月実業之日本社刊
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堂場瞬一著「ダブル・トライ」

2021-04-05 | 堂場瞬一
スポーツ小説。7人制ラグビーと円盤投げの二役をやる選手がいた。
二刀流で東京オリンピック出場を目指す天才アスリートの苦悩と奮闘を描く。2018年、陸上日本選手権。ある選手の活躍が、観客を魅了した。7人制ラグビーの日本代表・神崎真守が「円盤投」の決勝に出場、日本記録に迫る成績を残したのだ。もし「円盤投」で東京オリンピックへの出場を手にすれば、1964年の東京五輪以来の奇跡だ。前代未聞の「二刀流」アスリートの登場に世間は熱狂、神崎は瞬く間にスターダムを駆け上がっていく。一方、新興スポーツ用品メーカー「ゴールドゾーン」の自らもラグビー経験者である岩谷大吾は神崎の才能に着目、彼とのスポンサー契約に向けて動き出す。7人制ラグビーと円盤投げというマイナー競技を題材にスポンサーとの関係や人間関係を描いているがなんか中途半端な感じで生活臭さが描かれておらず深みがなくて『その「トライ」は、歴史を変えるのか。』と訴えてはいるが将来にはいろんな分野いおいて2刀流で活躍する選手が、大リーグで大谷の様に活躍する選手が出てくるかも知れない。
2020年5月講談社刊
 
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堂場瞬一著「ホーム」

2021-02-08 | 堂場瞬一
デビュー作2000年小説すばる新人賞受賞作『8年』の続編。コロナ禍で現時点では延期になっている2020TOKYOのオリンピックゲームの話。20年前、大リーグのニューヨーク・フリーバーズでプレーをしていた藤原雄大。52歳となった今は、マイナーリーグの巡回コーチをしている。ある日藤原は、現役時代のライバルで、大リーグ機構上級副社長であるヘルナンデスの訪問を受けた。東京オリンピックのアメリカ代表監督が亡くなったため、代わりに監督をやってくれないかと打診されたのだ。悩んだ末にその依頼を引き受けた藤原は、戦力補強のため、アメリカと日本の二重国籍を持つ大学生天才スラッガー、芦田をスカウトする。芦田の出身はサンディエゴで、アメリカと日本の二重国籍を持っている。両親はどちらも日本人。長距離打者で、高校野球では甲子園で合計12ホーマー、4割超えの打率を記録しているが、怪我のせいで日本代表には選ばれたことがない。ルール上はアメリカ代表にもなれる。芦田は高校時代の監督に勧められてアメリカ代表入りすることを決める。オリンピックを舞台に、日本国籍と米国国籍を持ちアイデンティティーに悩みながら米国代表になることへの葛藤とチーム内での軋轢等が話の中心。五輪にとって「国籍」とは何か?重要なのは「外見」なのか、「血」なのか、あるいは「その国への忠誠心」か。活躍できる場があるなら、そんなことはどうだっていい、という選手だっているはずだ。日本人だが米チームの監督となった藤原と芦田が主役になり心理描写が考えさせてくれる。
2020年6月集英社刊
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堂場瞬一著「沃野の刑事」

2020-09-10 | 堂場瞬一
「焦土の刑事」・「動乱の刑事」に続く警察大河シリーズ。1970年。大阪万博を控え、高度経済成長で沸き立つ日本。捜査一課と公安一課を対立させたある事件以降、袂を分かった刑事の高峰靖夫と公安の海老沢六郎は、それぞれ理事官に出世し、国と市民を守ってきた。だが、かつてふたりの親友だった週刊誌「東日ウィークリー」編集長小嶋の息子和人の自殺をきっかけに、再び互いの線が交わっていく。単なる自殺と思われたが、各自が独自に調べを進めるうち、日本全土を揺るがす汚職スキャンダルの存在が、徐々に明るみになる。尊重すべきは、国家なのか、それとも名もなき個人なのか。「警察の正義」を巡り、苦悩してきた高峰と海老沢。刑事と公安、定年間近のふたりの警官が、親友の息子の自殺に隠された、最後の事件にいどむ。戦後の混乱、安保闘争、学生運動、疑獄、赤軍派のハイジャック昭和の時代の事件を背景に展開されるが「戦後警察の光と闇を炙り出す」とあるようにはいかずスッキリしない結末だった。
2019年11月講談社刊
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