読書備忘録

私が読んだ本等の日々の
忘れない為の備忘録です

堂場瞬一著「幻の旗の下に」

2022-01-01 | 堂場瞬一
幻に終わった1940年東京オリンピック。代わりに計画された、新たな国際競技大会。日中戦争の拡大を受け、東京オリンピックの返上が決まった1938年。大日本体育協会は、オリンピックに変わる、紀元二千六百年記念事業として国際大会開催を画策していた。立教大学野球部出身で、末広の秘書を務める石崎保は、体協幹部や陸軍などの政治的な思惑に疑念を抱きながらも、平和の象徴としての代替大会を開催するべく「面従腹背」な面々と交渉を重ねていく。一方、ハワイにある日系人野球チーム「ハワイ朝日」のマネージャー・澤山隆の元に、旧知の石崎から電報が届く。返上された東京オリンピックの代わりとして開かれる「東亜競技大会」に、野球のハワイ代表として参加してくれないか、という招請状だった。その実現と参加に向け、海を越えた友情を信じて奔走する二人に立ちはだかるのは、官僚、政治家、陸軍、チームメイトたちだった。TVの大河ドラマ「オリンピック物語」で描かれていなかった80年前の知られていない歴史を浮かび上らせた感動のドラマです。太平洋戦争前の米国における日系人の緊迫した心理状態がよくわかった小説でした。
2021年10月集英社刊
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堂場瞬一著「赤の呪縛」

2021-12-15 | 堂場瞬一
「父と子の相克」というテーマのミステリー。警察官である息子と、政治である父。銀座の高級クラブで放火事件が発生。オーナーの女性と容疑者の女が命を失った。警視庁捜査一課の刑事・滝上亮司が、捜査を進めると、背後に政治家である父の存在が浮かび上がる。かつて父を憎み、政治家の父に反発して一度落ちぶれたが立ち直り、警視庁の刑事になった過去がある刑事だ。一見、焼身自殺とみられた事件が実は父との関係が深かった女性も巻き添えになったことから捜査を開始する。地元の静岡県で調査をするたびに父の関与が疑われ、周りの人間が父の政治生命を守るために動いていたらしいが具体的な物証は出てこない。父との直接対面でも立証はできなかった。この物語とんでもないドラック「スヴァルバン」という名の薬の副作用の是非が問題だがそれを無視しても政治の世界の忖度が気にかかる展開。破滅するのは、父か、己か。権力と血脈、信頼と裏切りに翻弄された男たちの物語です。赤とは火事の赤、中国か赤とも思ったが血の赤でした。
2021年5月文藝春秋社刊

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堂場瞬一著「帰 還」

2021-10-23 | 堂場瞬一
事故死とされた新聞記者の死の真実を探るサスペンス小説。「なぜ友は死んだのか。」入社して三十年。工場夜景の撮影中に、東日新聞四日市支局の記者、藤岡裕己が水路に転落して溺死。警察は事故死と判断したが、本当なのか。葬儀に出るために同期の3人が四日市に向かったが、彼らは藤岡の死に釈然としないものを感じた。以前、水害の取材で流されそうになって水に恐怖感をもっていた藤岡が、危険な水路の撮影に行くだろうか。事故か、自殺化、他殺か。そもそも、社会部から異動してずっと総務局勤務だったのに、突然、50歳を過ぎてからかつていた四日市支局に異動の希望を出したのも解せない。25年前に四日市支局の園田という記者が自殺したことがあったが、何か関係があるのか。通夜には珍しい男の姿があった。衆院選で当選して、1期で辞めた猪熊一郎だった。同期の死に不信感をもった藤岡とともに新人時代を三重県で過ごした同期三人が、真相究明に乗り出す。気ままな編集委員の松浦恭司、初の女性役員になりそうな高本歩美、何故か出世ルートをはずれ出向中の本郷太郎、それぞれ家族の問題でも悩みを抱えていた。共通の悩みは「新聞離れ」による経営の悪化だ。人は減らされ、経費は使えない。やがて3人はある疑惑にたどり着く。新聞社が置かれた厳しい現状と定年が近いそれぞれの記者人生と、地方特有のムラ社会のつながりを絡ませたミステリー。展開が遅く人間関係の複雑さなど読み難いし、結末の曖昧さも納得のし難い出来。四日市市が舞台だったが唯一の興味だった。2019年4月文藝春秋社刊  

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堂場瞬一著「刑事の枷」

2021-10-20 | 堂場瞬一
警察小説。川崎中央署の交番勤務から刑事課に上がったばかりの若手の村上翼刑事と、署内でも嫌われ者で自分勝手に過去の未解決事件を追っている影山康平刑事のコンビで、過去の事件の真相に迫る展開。同僚の不祥事を内部通告した「裏切り者」として疎外されている影山が、警察に居座り続ける理由――それは、十年前の殺人事件にあった。村上の熱気と葛藤、嫌われ者の刑事・影山の「過去」が交錯する事件の背景に重きが置かれていて題名の「枷」の意味が明かされる。
上意下達の典型ともいえる警察組織の中での組織からの逸脱具合や若手のずうずうしさが気になるし、展開のご都合主義的な部分など気になるが、細かな点を無視して読めばそれなりに村上の成長物語と楽しめまた。
2021年1月角川書店刊

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堂場瞬一著「チームⅢ」

2021-09-27 | 堂場瞬一
駅伝・長距離小説〈チーム〉シリーズ第3弾。スポーツ小説、舞台は東京オリンピック前、スランプに陥ったマラソンのメダル候補日向誠。なんとしても日本選手にメダルを獲らせたい陸連は、引退した日本記録保持者・山城悟に白羽の矢を立てた。山城は、かつて箱根駅伝の学連選抜メンバーとして伝説を作った孤高の天才ランナー。現在は広島県大崎上島で、レモン農家を営む実家の手伝いをしている。この山城に日向のコーチをさせようというのだが・・・前半は山城を引っ張り出す迄が語られる。個人コーチと日向の関係が語られる。学連選抜の駅伝チームから受け継がれる面々が、今回も活躍。したがって1から順番に読まないと人間関係の理解が解らない気がする。何のために、走るのかが理解出来た上、限界まで自分を追い込まないと勝てない。マラソンは練習と精神鍛練が、必要不可欠であると。学連選抜で戦ったメンバーが山城をサポートする感動物語でした。「襷はあいつに渡した。いずれあいつも、誰かに襷を渡す。それが、俺たちが生きている世界なんだ」(P352)
2020年3月実業之日本社刊

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堂場瞬一著「大連合」

2021-08-26 | 堂場瞬一
高校野球スポーツ小説。県内ナンバーワン投手・里田を擁する新潟成南高校を悲運が襲う。練習試合後の選手を乗せたバスがまさかの横転事故。里田は軽傷だったが、監督と部員の半数が重傷を負い、夏の予選出場は絶望的と思われた。一方、強豪・鳥屋野高校は監督のパワハラで退部者が続出、廃部の危機に瀕していた。唯一の三年生・キャプテン尾沢を含め、全部員が五人に激減したのだ。予選エントリーまで二週間。尾沢は、中学でバッテリーを組んでいた里田に「連合チーム」を結成して出場しようと、持ちかけるが・・・。甲子園を目指す寄せ集め感のあるチームが数々の困難を乗り越え出来上がっていく過程の物語。協力の得られない伝統校のOB会、応援団、に対してブラスバンド部や名女子スコアラー、テーピングの達人などの協力や応援を得て試合を勝ち進む臨場感あるシーンがあり楽しく読めた。
2021年6月実業之日本社刊
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堂場瞬一著「ダブル・トライ」

2021-04-05 | 堂場瞬一
スポーツ小説。7人制ラグビーと円盤投げの二役をやる選手がいた。
二刀流で東京オリンピック出場を目指す天才アスリートの苦悩と奮闘を描く。2018年、陸上日本選手権。ある選手の活躍が、観客を魅了した。7人制ラグビーの日本代表・神崎真守が「円盤投」の決勝に出場、日本記録に迫る成績を残したのだ。もし「円盤投」で東京オリンピックへの出場を手にすれば、1964年の東京五輪以来の奇跡だ。前代未聞の「二刀流」アスリートの登場に世間は熱狂、神崎は瞬く間にスターダムを駆け上がっていく。一方、新興スポーツ用品メーカー「ゴールドゾーン」の自らもラグビー経験者である岩谷大吾は神崎の才能に着目、彼とのスポンサー契約に向けて動き出す。7人制ラグビーと円盤投げというマイナー競技を題材にスポンサーとの関係や人間関係を描いているがなんか中途半端な感じで生活臭さが描かれておらず深みがなくて『その「トライ」は、歴史を変えるのか。』と訴えてはいるが将来にはいろんな分野いおいて2刀流で活躍する選手が、大リーグで大谷の様に活躍する選手が出てくるかも知れない。
2020年5月講談社刊
 
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堂場瞬一著「ホーム」

2021-02-08 | 堂場瞬一
デビュー作2000年小説すばる新人賞受賞作『8年』の続編。コロナ禍で現時点では延期になっている2020TOKYOのオリンピックゲームの話。20年前、大リーグのニューヨーク・フリーバーズでプレーをしていた藤原雄大。52歳となった今は、マイナーリーグの巡回コーチをしている。ある日藤原は、現役時代のライバルで、大リーグ機構上級副社長であるヘルナンデスの訪問を受けた。東京オリンピックのアメリカ代表監督が亡くなったため、代わりに監督をやってくれないかと打診されたのだ。悩んだ末にその依頼を引き受けた藤原は、戦力補強のため、アメリカと日本の二重国籍を持つ大学生天才スラッガー、芦田をスカウトする。芦田の出身はサンディエゴで、アメリカと日本の二重国籍を持っている。両親はどちらも日本人。長距離打者で、高校野球では甲子園で合計12ホーマー、4割超えの打率を記録しているが、怪我のせいで日本代表には選ばれたことがない。ルール上はアメリカ代表にもなれる。芦田は高校時代の監督に勧められてアメリカ代表入りすることを決める。オリンピックを舞台に、日本国籍と米国国籍を持ちアイデンティティーに悩みながら米国代表になることへの葛藤とチーム内での軋轢等が話の中心。五輪にとって「国籍」とは何か?重要なのは「外見」なのか、「血」なのか、あるいは「その国への忠誠心」か。活躍できる場があるなら、そんなことはどうだっていい、という選手だっているはずだ。日本人だが米チームの監督となった藤原と芦田が主役になり心理描写が考えさせてくれる。
2020年6月集英社刊
コメント (1)
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堂場瞬一著「沃野の刑事」

2020-09-10 | 堂場瞬一
「焦土の刑事」・「動乱の刑事」に続く警察大河シリーズ。1970年。大阪万博を控え、高度経済成長で沸き立つ日本。捜査一課と公安一課を対立させたある事件以降、袂を分かった刑事の高峰靖夫と公安の海老沢六郎は、それぞれ理事官に出世し、国と市民を守ってきた。だが、かつてふたりの親友だった週刊誌「東日ウィークリー」編集長小嶋の息子和人の自殺をきっかけに、再び互いの線が交わっていく。単なる自殺と思われたが、各自が独自に調べを進めるうち、日本全土を揺るがす汚職スキャンダルの存在が、徐々に明るみになる。尊重すべきは、国家なのか、それとも名もなき個人なのか。「警察の正義」を巡り、苦悩してきた高峰と海老沢。刑事と公安、定年間近のふたりの警官が、親友の息子の自殺に隠された、最後の事件にいどむ。戦後の混乱、安保闘争、学生運動、疑獄、赤軍派のハイジャック昭和の時代の事件を背景に展開されるが「戦後警察の光と闇を炙り出す」とあるようにはいかずスッキリしない結末だった。
2019年11月講談社刊
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堂場瞬一著「空の声」

2020-07-03 | 堂場瞬一
主人公は終戦時の玉音放送まで担当した戦前戦後のNHKアナウンサー和田信賢氏。戦後初の日本が参加することになったヘルシンキオリンピック(1952年)のアナウンサーに選ばれて派遣されるも、長年の無理がたたって心身ともにボロボロの状態だった。現地から「日本」を鼓舞する中継を懸命に続けるも、次第に目も見えなくなり・・・。人気番組「話の泉」の名物司会者で無頼派の人気アナウンサーだったそうだが、残念ながらオリンピック中継のための長期出張の出発から客死までの闘病記。主人公は出発時から健康不安を訴え、現地では歩行すら困難な状態へと至り、十分な仕事もできないまま帰路のパリで病死する。水泳のメダリスト古橋選手や同僚だった徳川夢声などがその人柄など語るのだが消化不良に感じた。史実をもとにしたフィクション。
2020年4月文藝春秋社刊
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堂場瞬一著「インタビューズ」

2020-06-09 | 堂場瞬一
「平成」だけがテーマのインタビュー集。渋谷の巨大交差点で、偶然にあつめたインタビューという設定で、30年間様々な100名のインタビュー集。どのインタビューも今年こんな事件がありましたというような出来事集でもあるが、当時の自分の身に起きた出来事と比べたり思い出したりと1989年から2019年の平成の30年間自分にとって平成という時代は何だったのか考えてみるのもいいかも。最後のページには「本書はフィクションです」の断り書きがあるのでノンフィクションではないのだろう。落ちがあるインタビューや偶然親子だったり過去にも聞いた2回目のインタビューも有ったりと実際は300名ほどインタビューしたとある。ストーリーがないし、それぞれの出来事抜き出しているだけで、何を伝えたいのか不明で残念な本でもあるが、読み人の評価に委ねるとあるので期待しないで読むといいかも。
2020年1月河出書房新社刊
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堂場瞬一著「決断の刻」

2019-11-25 | 堂場瞬一

ラグビーワールドカップ日本開催で馴染みのスポーツになりつつあるラグビーを絡めた警察ミステリー小説。日兼コンサルティング会社という男の社員が死体で発見された。その社では一人の女性社員が行方不明となっている。ほぼ時を同じくして同社の海外贈賄事件を内偵していた吉岡刑事が姿を消していた。実は所轄署の刑事課長原と同社今川社長とは、かつて過去に内部告発者として警察に協力した当時の刑事という形の信頼関係を築いていた。しかも二人には共に元ラガーマンとしてラグビーという固い絆もあった。しかし今、部下の失踪について調べる原刑事課長は署長への道を探り、今川社長は本社役員の座を狙っていた。殺人事件と失踪事件を追ううちに次第に事件の本質へと迫る展開。

企業が昔から慣例的に行ってきた贈賄の事実を知った今川は自己の保身と正義感による会社の建て直しかで揺れる。二人のせめぎあいが続くなか、二人にとっての正義とはに悩む。男たちそれぞれに決断の刻が迫る。謎解きはある程度予想が付くので立場の違う二人の正義に対する考え方と決断が見もの。『ラグビーは最も危険で乱暴なスポーツであるが故に、選手は紳士的でなければならない。・・・常に自らの「誇り」と相手に対する「敬意」を持っている必要がある』(P345

20197月東京創元社刊  

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堂場瞬一「ザ・ウォール」

2019-10-19 | 堂場瞬一

野球小説。低迷にあえぐかつての名門プロ野球チーム「スターズ」は本拠地を副都心・新宿の新球場に移転し、開幕を迎えた。周囲に高層ビルがそびえ立つ形状で“ザ・ウォール”の異名をとる野球場スターズ・パークには、大リーグ好きオーナーの沖の意向が盛り込まれている。選手、勝利よりも黒字経営をモットーに施設やサービスの魅力で観客増を目論むオーナー。狭くて打者有利の球場に四苦八苦しつつ、堅実な采配で臨む樋口監督。オーナーと監督の「ズレ」は両者間に軋轢が生じ、序盤は苦戦が続いたチームの成績は、後半戦に入ると徐々に上向き始め・・・。

ファンが求める「面白い野球」とは。「理想のボール・パーク」とは。球場が主役の野球小説。監督やオーナー以外にもエース投手・移籍してきた投手、捕手・新人・ベテラン、ヘッドコーチ・GMそれぞれの立場の思いや思惑の違いが面白い。

20192PHP研究所刊

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堂場瞬一著「白いジオラマ」

2019-08-17 | 堂場瞬一

半ひきこもり青年と祖父が主人公。元刑事で、現在は神奈川県小田原市鴨宮で「防犯アドバイザー」を務める麻生和馬。元引きこもりで父親のいる東京から拉致されるように引きとられた孫・新城将。「二万円やるから、俺のバイトを引き受けろ。張り込みだ」。無茶振りされた孫は、ある老女の“捜査”ならぬ“調査”を開始するが、ある日からその姿見えなくなる。そして、暗い顔で子ども食堂に通うネグレストされた母子家庭の少女怜奈も行方不明になる。昔の肩書や人脈を生かし、行方不明となった高齢者や、女子中学生の家出といったご近所のトラブルに首を突っ込んでいく。

そこから見えてきたのは、独居老人やネグレクトなど、現代の家族が抱える問題。熱血漢の麻生と、現代っ子である将の視点を対比し、問題が立体的に浮かび上がる展開はさすが。将と麻生は、ともに家族関係で苦しんだ過去を持つ。それが調査の熱量や、調べる相手への優しさにもつながっている。派手な事件は起こらないが、家族のあり方を考えさせられた。

201810月中央公論新社刊  

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堂場瞬一著「宴の前」

2019-07-15 | 堂場瞬一

現職知事の後継者が、選挙告示前に急死。後継候補を巡る争いに、突然名乗りを上げたオリンピックメダリスト、地元フィクサーや現職知事のスキャンダルを追う地元「民報」記者の思惑が交錯する。これまで四期連続当選してきた現職県知事・安川美智夫(76)は、今期限りでの引退を決める。後任については副知事の白井に任せるということで内々に話がまとまっていた。しかし、選挙告示の2ヶ月前に白井が急死し、次期知事候補は白紙に戻る。一方その頃、地元出身でオリンピックメダリストの中司涼子(42)が、突如知事選への出馬を表明、公約に「冬季オリンピックの招致」を掲げ、一気に有力候補に躍り出る。混沌とした様相はさらに加速し、与党、現職知事、地方紙が候補者選びを行うが二転三転することに。

隠された利権、過度な忖度、県民性の謎。圧倒的な権力を持つ「地方の王様」を決める熾烈な争いの内幕を描いた選挙小説で宴前=選挙前のドタバタ内幕劇は面白かった。政治家の言う「現段階では・・・」はよく聞く言葉で当てにならないことが良く分かった。選挙には必ずよく考えて投票する必要性を感じた。

20189月集英社刊

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