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読書備忘録

私が読んだ本等の日々の
忘れない為の備忘録です

「北風の吹く夜には」

2012-04-21 | た行
ドイツで150万部突破!世界37カ国で翻訳された恋愛小説。
それは一通の間違いメールから始まった。
エミ・ロートナーは、雑誌「ライク」の定期購読を解約しようとメールを送る。返信がないのに激怒した彼女が送った3通目のメール「もう払わないから!」に、雑誌とは一字違いのレオ・ライケ氏から返信があったことから二人のメール交換が始まる。
メールのやりとりを通して二人はお互いに興味をもち始め、メールは次第に情熱的に。そしてある日、ついに出会う約束をするのだが……。理想の夫と暮らすエミと美しい婚約者を持つレオ。
会わないことで感情が高まっていく男女を描く、大人のせつないロマンス小説。
ドイツ人らしい理屈ポイ面や言い回しなど気になるところはあるが二人の行末がどうなるのかとミステリーの面もあって楽しく読めた。二人のmailだけで構成された小説が新鮮でした。
やっぱり逢いたいけど逢わない文字だけの間柄の男女って想像がいくらでも膨らんで妄想して・・・現実の男と女より始末が悪いのでしょうね。
ダニエル・グラッタウアー(著)若松宣子【訳】 原題「Gut gegen Nordwind」ドイツ書籍賞ノミネート作品

2012年3月三修社刊
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拓未 司著「 恋の病は食前に」

2012-03-31 | た行
「一目ぼれしやすい」厄介な男。「変人」料理評論家草刈春男が主人公の連作短編5つ。
これが最後の恋だと思ったのに・・・ひと目ぼれ、猛アタック、玉砕を重ねて42年。この草刈、担当の雑誌編集者にとっては傲慢で扱いにくい上に、あいついで引き起こす騒動で原稿が遅れるやらでてんてこ舞。
取材で訪れた店員の女性、同窓会で久しぶりに会った同級生、風俗デリヘルの女、パン屋のパン職人など。
その恋愛のカギとなるのが、横手焼きそば、姫路おでん、厚木シロコロホルモン、宮崎の肉巻きおにぎり、名古屋のイタリアンスパといったB級グルメを絡めてのラブストリーなのだ。
取って付けた様な料理と女の関連、ほろりとする場面もあるがイマイチ。
2011年5月 朝日新聞出版刊
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高嶋哲夫「首都感染」

2012-03-21 | た行
パンデミックを扱った近未来小説。20××年、中国でサッカー・ワールドカップが開催中、熱狂するスタジアムから遠く離れた雲南省で、致死率60%のH5N1型強毒性新型インフルエンザが出現。
中国当局による必死の封じ込めも破綻し、恐怖のウイルスがワールドカップの観客の中の感染者を通じてジェット機に運ばれ世界中に、そして日本へと広がった。
インフルエンザ・パンデミック阻止のため、政府対策本部のアドバイザー・元WHOの瀬戸崎優司は空港での検疫を徹底、空港封鎖など対策をとるが、ついに都内にも患者が発生。厚労相の提案に総理の瀬戸崎は経済関係閣僚の反対を押し切り空前絶後の“東京封鎖作戦”を決断した。
いささか設定や人間関係に都合のいい出来すぎの感が気になる。福島原発事故当時の官邸の右往左往ぶりなどを降り返ると現実はもっと厳しいような悲観感が強い。
しかし近い将来有り得る可能性のシュミレーション知識として読むにはいい本です。映画化も可能な内容です。
『死は誰にでも平等に訪れる。少し違うとすれば、早いか遅いか、苦しむか苦しまないかの違い程度だ。』(P301)

2010年12月 講談社刊
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拓未司著「紅葉する夏の出来事」

2012-03-18 | た行
志望高校への受験の失敗で両親との確執が深まり、不良仲間と付き合いはじめる高一の悠馬。
脱サラして始めたラーメン屋で失敗、借金が脹らみ転落の道を歩みはじめた元エリート・サラリーマンの伊東。
そして、全身を真っ赤に染めゴミ屋敷に暮らす痴呆症の老婆レッドばばあ(RB)。
ある日、彼らが暮らす街で高校生による両親殺傷事件が起こる・・・
どうしようもない現実を生きる3人の運命がゴミ屋敷で交錯し、夏の“紅葉”はやがて激しく乱れ散るのだった。
悠馬と伊東の交互の視点で展開されるのだが時系列に従って書かれていないのは後半ドンデン返しの為か?
格安水道修理屋の実態がリアル。料理の場面はあまりないが読後感はいい。
『変ったけど変えれなかった・・・表面上は変っても、根本的なところは変らない。・・・本気で過去の自分と決別したかったら・・・事実を事実として全て受け入れるというか、反対に残らず吐き出してしまうとか』(P285)

2010年8月 宝島社刊
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田南透著「翼をください」

2012-03-10 | た行
表向きは石元陽菜は愛らしい笑顔で人気の女子大生なのだが、彼女に好意を寄せる男たちは、気を惹くために重大な『秘密』をつい打ち明けてしまっていた。
実は陽菜の本性は、男をいいように操って己の利益をはかろうとする、極めて自己中な男を翻弄する女。
裏切られた怒りはやがて殺意となり、『ストーカー』はゼミ旅行の目的地である閉ざされた嵐の孤島で計画を実行する。
そして惨劇が起きた。ゼミの同級生たち、そして彼女のストーカー、この中に犯人が・・・皆其々怪しい・・・
動機は一体犯人は女か男か?誰なのか 。
錯綜する家族や人間関係、愛憎の縺れの果てに起きた閉鎖空間の殺人事件。
人間関係の交錯、裏側、ドロドロした内面描写が続く。
余りにも人が死にすぎる、犯人のトリックや意外性もどこかで読んだストーリー。
犯人探しのミステリーでもあるが、後半意外な展開で終る愛憎劇に読後感はたいへん悪いです。
2012年1月東京創元社刊
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拓未司著「ボトムレス」

2012-02-11 | た行
グルメミステリー群像小説。死ぬほど旨い料理が食べられる噂のある「ホール」というレストラン。そのレストランのメニューには「死ぬほど旨い料理」は載っておらず、ふらふらと現れる老ウエイターが噂を否定します。そして「当店にございますのは、食べると、死ぬかもしれない料理でございます」と・・・・。
辛口批評が好評なグルメ評論家。腕には自信があるものの客の入りが今ひとつの店のシェフ。フードファイターとして自立したいフリーター。ネタ探しに必死の週刊誌の編集者。ロハスにこだわる主婦とOL。ひとり、またひとりとその噂に翻弄されやってくる。
それは目にしたものを狂わせる禁断の料理。
噂の料理に魅せられた人々の底なしの欲望が交錯する。人々を嘲笑うかのように増幅していく噂。真相に辿り着いた先に待っているもの、それは、快楽か?希望か?死か?。
食の価値観を揺さぶる奇妙な世界への入り口がいま開く・・・。
「お客様に相応しい料理をお出しするように心がけ、ちょうどよい加減を見極めようと、細心の注意を払って料理を作っています。(P208)
「たとえどんな結果になろうとも、お客様にはご満足いただけるはずでございます。・・・人間は何のために食べるのか。その命題をご理解いただけるようでしたら、たいそうな覚悟は必要ございません。」(P250)
「あの料理は、食べる者の食に対する姿勢を問い、審判をくだしている。つまりは、食べる者を裁いているわけです。」(P266)

2011年10月NHK出版刊
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日明恩著「ロード&ゴー」

2012-01-08 | た行
救急救命士は. 重症外傷現場においては生命に関わる損傷の観察・処置のみを行い、 搬送時間の短縮を優先させて、直近の病院への搬送を優先する。これを、 ロード・ アンド・ゴー(Load&Go)と称している
元暴走族の過去を持つ消防隊員生田は東京消防庁に所属する救急隊員だ。救急技術員という、特殊車両を運転する役割だ。生田はつい二か月ほど前に渋谷消防署恵比寿出張所に移動した。それまでは消防車の運転のみだったが、救急車の運転もするようになった。そのために、救急医療のざっとした知識を突貫で仕入れているところだ。いつものように出動を繰り返し、ガソリンを入れてから出張所に戻ろうかという時、道路脇で倒れて血を吐いている人の男が目に入っため慌てて救急車を停め乗せた途端、男はナイフを手に女性救命士を人質にして救急車をジャックされてしまったのだ。悠木と名乗ったその男は、家族を人質に取られたらしく、携帯電話のテレビ機能を使って本当に犯人らしき男と連絡を取りながら何かをしようとしているらしかった。同じ頃、警察とTV局に謎の男から犯行声明が入った。男は、悠木の家族を人質にしていることと、悠木に爆弾を持たせていることを告げ、二億円を要求、救急車に爆弾を持ち込んだらしい何かあったら爆破させる。彼らの要求は、時間内に指定された病院まで辿りつけ、というものだった。一体彼らの目的はなんなのか・・・。救急車の裏事情が一杯書かれていて勉強になる。ミステリーサスペンス調に展開されるが日本の救急医療や救急隊員の現実が主題だ。「鎮火報」「埋み火」でなじみの人物も登場、警察、緊急無線を無断傍受する輩やマスコミTV局内部などが間に挟まり、スピード感ある仕事とは家族とはを問いかける読後感のいいお話でした。
2009年10月  双葉社刊
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大門剛明著「共同正犯」

2012-01-03 | た行
 姫路の夢前川の製鎖工場で、あくどい商法で知られた不動産業者長岡の遺体を偶然発見したでどろ焼き店を営む鳴川は、片思いの工場の社長・翔子の犯行と直観し、死体を移動させてしまう。
やがて自殺に見せかけた殺人事件と疑いの目は工場の持ち主で、被害者への32000万の巨額の連帯保証債務を抱え苦しむ、女社長翔子に向けらる。
しかしベテラン刑事・岩田はこの事件には、共犯者がいると・・・。
この本のテーマは、連帯保証人制度。
ある意味保証人はメリットなどなく、リスクだけを背負うという理不尽な制度で、債権者は、夜逃げしたり、自己破産しようが、連帯保証人から直接、弁済を受けることができる便利な制度だ。
物語の展開は鳴川の視点と、岩田刑事と共に事件の真相を追う池内刑事の視点で語られるのだが、途中池内刑事の兄と工場の因縁や、独自に真犯人を追う鳴川に対し、真犯人を名乗るものから連絡が来たりとややこしい。
登場人物の多くが守ろうとする絶対切れないアンカーチェーン・鎖の絆の和も翔子の魅力が伝わってこない為結末も感動も中途半端だった。
中盤以降謎解きの面白さで引き込まれて読まされた。

2011年7月 角川書店刊
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月原 渉著「 世界が終わる灯 」

2011-11-09 | た行
著者は、2010年、『太陽が死んだ夜』で第20回鮎川哲也賞を受賞。
ニュージーランドを舞台にしたミステリー小説。
ニュージーランドの山間を走るオリエント急行に似た豪華寝台列車。
大学進学前の余暇を利用してジュリアンとバーニィの仲良しの二人は、この列車に乗って旅に出ることにした。
しかし、優雅な旅を楽しんだのもつかの間、乗員が鍵のかかった客室で、凄惨な首なし死体となって発見される。走行中の列車では降りる人も乗る人もいない密室での犯罪。
そして、吹雪の中暗いトンネル内で急停車した列車からは次々と人が消えて、通信機器はすべて破壊され,孤立状態に・・・・。
9名の数少ない乗客と機関士と車掌と乗員。あるいはどこかに潜む何者かの犯行なのか?常軌を逸した状況で起こった不可能犯罪か。・・・
「世界が終わる灯 」とは原爆のこと?動機に1980年代半ばの虹の戦士号爆破事件や環境保護団体と仏情報機関などの歴史が背景にあったりと説明があるが何かしっくりこない。
トリックも犯人も途中で予想がついてしまって意外性がなかった。
2011年9月 東京創元社刊
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土居伸光著 「 光 」

2011-09-24 | た行
テーマ競作「死様」シリーズの1冊です。
親友の次女・瞳からメールアドレスを教えてくれと言われた神田仁志。後日、彼女からメールが届く。父の葬儀の間中なぜ微笑みを絶やさなかったのかと訊かれただ。彼は、妻を亡くしたのちに身に起きたことを明かし、生きるのが楽になったと語る。神田が手に入れたと言う、世の中には「本当の苦しみ」と「本当ではない苦しみ」のあるということ、また手に入れたことによって、生きるのが楽になったという体験談。その四つの、「心のフィルター」の内容を、メールと云う一昔前なら往復書簡だろう形式でやり取りする。
著者の実体験からの想いなのだろう、大きな活字で194ページなので直ぐ読めそうだが内容は濃い。
ちょっと哲学書みたいな小説でしたが、人生の物の見方考え方に役立つのでは。

「どんな苦境に立たされても、夢や希望を捨ててはならない」(P60)
「行動すれば、必ず夢や希望に向かうための新たな情報や環境が現れてくる。」(P76)
「本当の苦しみ、あるいは問題は、すべて自分の中にある。(P94)
「偶然はない。人としての成長に必要なことはすべて必然に起こる。(P128)
「未来の不安に生きない。今を生きる。」(P140)
「被害者意識を持たない」(P147)「自分の考えや価値観を掴まない、囚われない・」(P155)

2011年6月光文社刊
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高野 和明著「ジェノサイド」

2011-09-13 | た行
大虐殺(ジェノサイド)。死んたはずの父親から送られてきた一通のメール。
創薬化学を専攻する大学院生・古賀研人は、親子だからしか解らない思い出をもとにある本の中からその不可解な遺書を手にいれそれを手掛かりに、父の秘密のアパートの一室の私設実験室に辿り着く。
ウイルス学者だった父は、そこで何を研究しようとしていたのか。同じ頃、米軍特殊部隊出身の傭兵、ジョナサン・イエーガーは、難病に冒された息子の治療費を稼ぐため、ある極秘の依頼を引き受けた。暗殺任務と思しき詳細不明の作戦。事前に明かされたのは、「人類全体に奉仕する仕事」ということだけだった。
イエーガーは高額の報酬に釣られて集められた他の三人と暗殺チームを組み、戦争状態にあるコンゴのジャングル地帯に潜入する。
やがて離れた地点の何の結びつきもないと思われたこれらが交錯し一つの接点を持つことに。
ルワンダの大虐殺・南京大虐殺・関東大震災時の朝鮮人大虐殺などを絡めて著者の怒りは人類の愚かな殺戮の品性に迫る。「私は人間という生物が嫌いなんだ。すべての生物種の中で,人間だけが同種間の大量殺戮(ジェノサイド)を行なう唯一の動物だからだ。それがヒトという生き物の定義だよ。人間性とは,残虐性なのさ。」(本文より)
アフリカの部分はリアルなスピード感ある展開で面白かった。
アメリカのネオコン集団の描写はあそこまで酷いのかと心配になった。
何百年後平和な新人類が地球を凌駕したっていいんじゃないか猿の惑星のようにとおもった。
スリル・サスペンス・大冒険と一気読みできる面白さです。

2011年3月 角川書店刊
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拓未 司著「虹色の皿」

2011-05-21 | た行
グリーンから始まり7色の色の各章での連作短編。
一流の料理人を目指して大阪の調理師学校に入学した小西比呂の料理人を目指しての奮闘と成長の青春物語。「皿に盛るのは僕自身」―トップシェフ憧れの本間シェフの言葉が人生を変えた!一流の料理人を目指す比呂。
卒業して、憧れの本間シェフが経営するフレンチレストランに就職出来たのだが、そこでの仕事は想像をはるかに超えたハードな毎日が待っていた。調理学校の恩師梨本教授や同級の洋介をはじめとする三人の個性的な仲間たちとの人間関係や、見た目はタイプだけど性格は苦手な「関西のおばちゃん」風の美女美穂に振り回されながら、仕事に恋に大忙しの比呂がたどりついた「自分らしい料理」とは・・・。
美味しそうな料理の描写や厨房の喧騒さや下働きの苦労など著者の経験からの筆使いはユーモアを交えた展開とあいまって主人公を応援しつつ最後まで面白く読めた。
ミステリーでデビューした著者だがこの路線のほうが面白いような気がする。
是非続編を読んでみたい。
2010年11月角川書店刊
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高殿円著『メサイア 警備局特別公安五係』

2011-02-17 | た行
超軍縮時代に突入し、水面下で熾烈な情報戦が繰り広げられる世界。この作品の舞台は、
皇記●年というパラレルな時代の日本。
殺人権を持たない警察や軍の代わりに暗殺活動をする対スパイ殺人権をもつ特公五係、通称“サクラ”の候補生・16歳の海棠鋭利(かいどうえいり=エッジ)が主人公。
小学校の頃に鋭利の家族を襲った惨劇以来まともな生活から離れて育ち、今は国家公安委員会、特別公安五係、通称サクラの正式な一員になろうとしているのだ。
養成学校、通称「マル校」では寮は相棒と同室になる。
その相棒が、御津見珀(みつみはく=ナニー)で、この相棒こそ「メサイア」と呼ばれ、ひとたびサクラとなって国の捨石となり、相手国に捕まっても誰も助けてはくれないけれどメサイアだけは救出活動をしてもよいという。
この二人が「マル校」の卒業試験を兼ねて極秘に総理大臣の息子の護衛を任されるのだが・・・。折から軍縮の世界会議が東京市で開かれことに。
パラレルな架空の世界の出来事を通して現代日本への批判がところどころ随所で語れストリーが展開される。
ここに登場する組織や世界は今の日本によく似ているが現実のそれとは繋がらないのでリアリティの薄いのが不満だがある意味的を射てるのが面白い。
『どの国の首脳部も、いつ交代するかわからない日本の首脳より、官僚と仲良くするべきだと思っている。』(277P)
『この国では、責任をとる、ということは、なぜか職を辞すことになっているのさ。もしくは、刑務所に入る・・・でも責任の取り方を勘違いしている以上、責任をとる覚悟で物事を為そうというやつも現れない。
なぜなら、・・・だれも責任をとれないのだから。』(319P)
映画『デスノート』の金子修介監督による実写映画化が決まったようです。


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恒川光太郎著「竜が最後に帰る場所」

2011-01-15 | た行
日常から幻想の世界にふと迷い込むストーリー五編の幻想的な作品が入ったホラーファンタジー短編集。
風をとじこめた小瓶を持っていると言う女、マミさんと大学生の僕との電話だけの関係・・・「風を放つ」
DV男に母を殺された息子の復讐劇ながら、子供を虐待するろくでなしを魔法で消してやると言う男が現れたり、
月を舞台にした幻想的な漫画「月猫」がからんで異界に足を踏み入れてしまうという・・・「迷走のオルネラ」
物が集まって別の物に擬装しているという「擬装集合体」が「解放」、すなわちバラバラにすることができる不思議な力を持った男アサノによって解放されて鸚鵡になってしまう・・・・「鸚鵡幻想曲」
パラレルワールドで生きる自分になるため、冬の凍てつく夜の町を「ガイドさん」について歩いていく・・・
『古い記憶に重ねるように新しい記憶を手に入れる。かっては交換不可能であったもの・・・過去と現在・・・を取り替え続ける』(P134)・・・「夜行の冬」
海で生まれた謎の大型鳥類が段々成長し進化していき帰る場所を探す竜たちの美しいファンタジー物語・・・
『どこへ行けばいいの遠い遠い昔から私たち祖先はそこからやってきたの。あなたたちは飛び立たなくてはならないの。
あなたたちには無理でも、あなたたちの遠い子孫がいつかそこに辿り着くでしょう。』竜が最後に帰る場所(P235)・・・「ゴロンド」。
風を、迷いを、闇夜を、鳥を。恒川ワールドの世界へいざなう五編の物語。
2010年9月 講談社刊
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大門 剛明著「告解者」

2011-01-14 | た行
題名の告解とは、カトリック教会においては、洗礼後に犯した自罪を聖職者への告白を通して、
その罪における神からの赦しと和解を得る信仰儀礼。
カトリック教会では大罪を犯した場合また年に一度行うべきものとされている。
(ウィキペディアより)
主人公は元教会の更正施設に補導員(社会福祉士)として勤める29歳の深津さくら。
23年前に2人を殺し、無期判決を受けた男・久保島が仮釈放され、彼女が勤める金沢の更生保護施設に入寮してきた。
凶悪事件を起こしたとは思えぬ誠実な更生ぶりに、次第に心ひかれていくさくら。
市内で殺人事件が発生し、寮生に疑いの目が向けられた。さくらは真相をつきとめるべく奔走するのだが。・・・
重いテーマ、贖罪、そして更生、後半予想通り23年前の事件が鍵をにぎる展開にやがて真相が明らかになりミステリーらしく意外な犯人(一部予想できたが)が出てきてのおきまりの結末にチョット物足りなかった。
「絆ってもんは実際に血がつながってとるし大事に思うがでないぞ。
人と人と、心と心が絆で結ばれることがなくなったら人は人でなくなるんやど」(179P)
「更正ってなんですか?・・・更正ってものはいつも途中。
決して完成なんてしないものなんです。地道な行為の積み重ねの中に更正はあるんです。」
(266P)

2010年9月中央公論社刊
コメント (1)
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