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読書備忘録

私が読んだ本等の日々の
忘れない為の備忘録です

中山七里著「鑑定人 氏家京太郎」

2022-09-01 | な行
御子柴礼司シリーズに登場する民間科学捜査センターの氏家氏が主人公。科捜研を12年務めある事情で退職し私費で設立した科学捜査鑑定所氏家鑑定センターの氏家所長は、女子大生3人を惨殺したとされる猟奇殺人犯の弁護士から再鑑定の依頼を受ける。容疑者の男は、2人の殺害は認めるが、もう1人への犯行は否認。相対する警視庁科捜研との火花が散る中、裁判の行く末はというミステリー。法廷でのやり取り、判事と検察官、そして弁護士との調整など知らないことが書かれていて興味深い。科捜研と警察・検察から裁判所まで癒着という事実が悲しい。鑑定業務の詳しさなども良く分かる。氏家氏の信条「自分の仕事は分析であって、裁くことでも罰することでもない」。真犯人が途中で予想が付いたが最後まで読ませるのは流石。
2022年1月双葉社刊

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中山七里著「境界線」

2022-07-30 | な行
社会派ヒューマンミステリー小説。前作『護られなかった者たちへ』から続く「宮城県警シリーズ」第2弾。宮城県警捜査一課を舞台に、東日本大震災による行方不明者と個人情報ビジネスという復興の闇を照らし出していく。震災によって引かれてしまった“境界線”に翻弄される人々の行く末は・・・。
2018年5月某日、気仙沼市南町の海岸で、女性の変死体が発見された。女性の遺留品の身分証から、遺体は宮城県警捜査一課警部・笘篠誠一郎の妻だったことがわかる。笘篠の妻は7年前の東日本大震災で津波によって流され、行方不明のままだった。遺体の様子から、妻と思われる女性はその前夜まで生きていたという。なぜ妻は自分のもとへ戻ってこなかったのか。笘篠はさまざまな疑問を胸に身元確認のため現場へ急行するが、そこで目にしたのはまったくの別人の遺体だった。妻の身元が騙られ、身元が誰かの手によって流出していた。やり場のない怒りを抱えながら捜査を続ける笘篠。その経緯をたどり続けるもなかなか進展がない。そのような中、宮城県警に新たな他殺体発見の一報が入る。果たしてこのふたつの事件の関連性はあるのか。そして、笘篠の妻の身元はなぜ騙られたのか・・・。「生者と死者」「残された者と消えた者」「売る者と買う者」「弧高と群棲」「追われる者と追われない者」の境界。
震災は人の心も倫理も全て流し去ってしまい、人の関係も分断してしまった。悪人と思われた人が悪ではなく、善に生きた人が悲しみのなか堕ちていく様子が切ない。
「誰にでも境界線がある。越えるか、踏みとどまるか」著者・中山七里
2020年12月NHK出版刊

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永瀬準介著「属国の銃弾」

2022-06-23 | な行
1947年夏、占領軍に骨抜きにされた焦土で日本をひっくり返そうとした男たちがいた・・・終戦直後の東京と高度成長期の「2つの東京」を舞台に、男たちが挑んだ「日本復活計画」。戦後史の闇を描くサスペンスドラマ。高度成長期に頭角を現し“今太閤”と呼ばれる政治家・千石宗平(モデルは角栄か)。高等小学校卒で叩き上げの彼を秘書として支える元警視庁刑事・神野晋作。原爆で家族を失った元特攻隊員・来栖龍二、悲劇のレイテ島から生還した天才狙撃手・黒木斗吾とともに計画された“ターゲットC”暗殺計画・歴史から葬り去られたある過去「皇居前某重大事件」を共有していた。戦後の混乱期と高度経済成長期を駆け抜けた二人の闘いは滑稽とは思えない。学歴のない千石が総理にまで駆け抜けるためには金に頼るしかなかった。しかし結局は金に呑み込まれ金満政治家と言われてしまうが、彼らの生き様には確かに矜持があった。戦後日本の闇とロシアのウクライナ侵略であらためて「国の独立とはなにか」を考えさせられた一冊でした。
2022年5月文藝春秋社刊

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長塚京著「アンダードック」

2021-12-28 | な行
大スケールのミステリー活劇ドラマです。舞台は1997年、中国返還前夜の香港。「君の選択肢に『No』はない。『Si(はい)』でなければ『morte(死)』だ」。裏金作りに巻き込まれ全てを失った元官僚の証券マン・古葉慶太は、顧客の大富豪・マッシモから世界を揺るがす計画を託される。それは、国籍もバラバラな“負け犬”仲間たちとチームを組み、中国返還直前の香港の銀行地下に隠された国家機密を奪取するというものだった。敵は大国、狙うは国家機密で計画を狙う米露英中、各国情報機関を敵に回し、¨負け犬たち¨の知略を駆使した反撃が始まった。一方、2018年、主人公・古葉の義理の娘・瑛美が主役の時系列もまた、間隔を置いて挿入されていきます。果たして、その計画とは、20年前の結末は?「負け犬」たちは、国家を背負う情報機関を出し抜いて「負け犬」から這い上がることができるのだろうか?与えられた瑛美の役割とは。「日本」という国家について、『偽りの善からは、時が経つにつれ、いつか必ず本物の悪が生まれる』という作者の憂いと、いつまでたっても成熟した国家として独り立ちすることができない「悪の凡庸さ」のその集合体でもある日本を見つめる作者の重傷感がひしひしと感じ取ることができます。その反面「それぞれに思惑は違うけれど、私は以前から多くの人たちに護られ生きてきた」。と・・・。
仲間割れの話が連続します、誰が味方で誰が敵か裏切りと混乱の中、ドンパチの上やたら殺される登場人物は外人ばかりで巻頭の人物紹介を常に読み返しながらの読了でした。
2020年8月KADOKAWA刊
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中山七里著「ふたたび嗤う淑女」

2021-11-08 | な行
『嗤う淑女』の続編。史上最恐、完全無欠の悪女ミステリー。類い稀な話術で唆し、餌食となった者の人生を狂わせる。「蒲生美智留」が世間を震撼させた凶悪事件から三年。「野々宮恭子」と名乗る美貌の投資アドバイザーが現れた。国会議員・柳井耕一郎の資金団体で事務局長を務める藤沢優美は、恭子の指南を受け、資金の不正運用に手を染めるが・・・ひとのおごり、エゴ、欲におぼれたものを制裁していく相手に応じた最良の陥れ方まだまだ続きそう。野々宮恭子と神崎亜香里ドン伝返しとはそういう事だったのか。
2019年1月実業之日本社刊

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中山七里著「隣はシリアルキラー」

2021-07-31 | な行
工場勤務の神足友哉の悩みは、深夜になると会社の独身寮の隣室から聞こえてくる不気味な物音。何かを切断しているような音が、もしかして死体の解体、時を同じくして、近隣で女性と思われる死体の一部が発見されたという事件を知った神足は、隣人の中国からの実習生の徐浩然が犯人なのではという疑いを持つ。そんなある日の深夜、隣室から何かを梱包するような音に続いて、徐が外出する音が聞こえた。気になった神足はそのあとをつけるが・・・。ミステリーでは怪しいのは犯人ではないとすれば登場人物が少ないので途中から誰か解ってしまうし、犯行の動機も説得力に欠ける、ホラーとしても怖くないのでちょっと不満足な読後感でした。
2020年9月集英社刊

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永瀬準介著「凄 腕」

2021-07-18 | な行
立川市で23歳の半グレが殺された。立川南署の捜査本部は、何の手がかりもないまま1カ月が過ぎ、陣容縮小も検討される始末。念願の刑事となり、本部入りした高木誠之助巡査部長は、毎日雑用を押し付けられ捜査には参加できない。そんな時、本庁組織犯罪対策部から桜井警部補、57歳、定年間近の古たぬきのベテランが投入された。高木はバディーとして選ばれ捜査現場に乗り出すが、桜井に煙に巻かれるばかりだった。やがて桜井の聞き込んできた闇の情報のおかげで事件は急転解決、高木にも本庁捜査一課への転属命令が出た。だが、高木は桜井の凄腕にほれこみ、桜井が隠し持つシーラカンスという闇のネタ元に強い関心をいだき、暴力組織が乱立する日本最大の盛り場・歌舞伎町をかかえる新宿署組対課への異動を希望する。桜井との衝撃の出会いを描いた「凄腕」から、伝説ネタ元の正体がわかる「真相」まで、刑事たちの暗闇を描いた5つの連作短編集。新人警官が、闇社会と戦うための考え方やり方が「闇社会の人間関係や背景を知らなければ、答えにはたどり着けない」と桜井のやり方に傾倒するのだが真相の結末が続編への期待に繋がり面白かった。
2017年5月文藝春秋社刊
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中山七里著「人面瘡探偵」

2021-07-10 | な行
限界集落を舞台に人間の欲と家族の闇をあぶり出すミステリー。「人面瘡とは体に着いた傷などが人の顔のようになり、意思をもって喋ったりするようになった存在。妖怪や奇病の一種とされる。」
相続鑑定士の三津木六兵の右肩には、幼少時に負った傷がもとで人面瘡が寄生している。六兵は頭脳明晰な彼を“ジンさん”と名付け、何でも相談して生きてきた。信州随一の山林王である本城家の当主が亡くなり、六兵は遺産鑑定のため現地に派遣される。二束三文だと思われていた山林にモリブデンが埋まっているかもと価値があると判明した途端、色めき立つ相続人たち一族。まもなく長男が蔵で、次男が水車小屋で、と相続人が次々に不審死を遂げていく。これは遺産の総取りを目論む者の犯行なのでは。ジンさんの指示を受けながら事件を追う六兵がたどり着いたのは、本城家の忌まわしい歴史と因習深い土地の秘密だったのだ・・・。未だ因習が残る山間の分限者一族の住まう屋敷で、急逝した当主の遺産を巡って起こる連続殺人。探偵役が人面瘡という奇抜な設定が面白いが腹話術か奇術のような一人で探偵とワトソン役みたいだった。真犯人も意外性はなかった。2019年11月小学館刊
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西村健著「激震」

2021-06-27 | な行
雑誌著者自身が雑誌記者として奔走した経験をもとにした長編小説。1995年、1月阪神淡路大震災、地下鉄サリン事件、オウムが地下鉄にサリンをまき多数の死傷者が出た。それに続いて警察庁長官が狙撃され,都庁に届いた小包が爆発し職員重症,オウム信者と名乗る者のハイジャック、八王子のスーパーでの3名の女性が虐殺。沖縄では米兵が少女を強姦する事件,と未曾有の災厄が相次いだ一年、当時の首相は村山社会党政権。戦後五十年かけてこの国が築き上げたあらゆる秩序が崩れ去っていく。・・・主人公ヴィジュアル月刊誌「Sight」記者の古毛は、年明け早々に阪神地方を襲った大地震に衝撃を受け、被災地に駆けつけたが、その凄まじい惨状に言葉を失う。神戸では火災被害の激しかった長田地区の焼け跡に佇む若い女と遭遇。夕方の光を背にこちらを振り向いたときの眼はかつて戦場で出会った少年兵とそっくりだった。果たして彼女は何者なのか? この女性を最後まで追い続ける古毛。『「何やってんだろうな、俺達」加納が自嘲ぎみに呟いた。(略)「世間の耳目を引く話題に引っ張り回されて、取材取材に駆け回る。それで終わってみりゃぁ、前に何やってたかも記憶が薄れてる始末だ。(略)世間、てぇお釈迦様の掌で踊らされてる、孫悟空かよ」「元々、報道なんてそんなものだったのかも知れませんけども」古毛は言った。「特におかしくなって来たのが、あのバブルの辺りからだったような気はします」「あれで、日本が溜め込んで来たあれこれの矛盾が一気に噴き出して来た感じだな。戦後、営々と築いて来たこの国の神話が次々と崩壊してる、ってところかな」』(本文より)。読んでいると「1995年の世界」に引き込まれて連れ戻される。そして年の終盤には<ウィンドウズ95>が登場してもいる。「雑誌記者が取材中に見掛けた人物に纏わる事件」という“ミステリー”を軸とし、「揺れた“戦後50年”」を、「その時点から四半世紀」という中で振り返るかのような作品になっている。26年前1995年自分は何をやっていたのかを思い出しながら読んだ。謎の女を追うミステリーとしても面白かった。
2021年2月 講談社刊
写真は夜叉ケ池に咲いていたニッコウキスゲとノアザミ)
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西村健著「目撃」

2021-06-10 | な行
私は殺人事件の「何か」を見てしまったらしい。自分で気がついていないだけで。誰かが私を監視している?
離婚調停中の戸田奈津実は、電気メーターの検針員の仕事をしながら幼稚園に通う幼い娘を一人で育てている。彼女が担当している静かな住宅街でストーカー立てこもり事件に続いて殺人事件が起きてから、背後に誰かの視線を感じるようになった。奈津実から相談を受けた一匹オオカミ刑事の穂積亮右は密かに罠を仕掛ける・・・。大切に守ってきた幼い娘とのかけがえのない日々に忍び寄る不穏な影。掟破りの手法で捜査を進める“見立て屋”の刑事が辿り着いた驚愕の真相とは。読み進むうち途中から犯人の予想がついてしまった。登場人物たちの人間・利害・因果の関係が複雑に絡みあい、相互に影響しあった事件の真相が明らかになる後半は前半中盤の展開の遅さ諄さと異質の様なスピードでよかったが、犯人の動機がイマイチ薄い、ウヤムヤになる決着の曖昧さにも不満に思った。スマートメーターなるシステムが進む検針員の苦労や仕事ぶりは面白かった。発表が電気新聞掲載小説の意味が分かった感じ。
2019年5月 講談社刊

 
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楡周平著「サリエルの命題」

2021-03-06 | な行
題名の「サリエル」とは、医療に通じ、癒す者とされる一方で、一瞥で相手を死に至らしめる強大な魔力、『邪視』の力を持つ堕天使のこと。日本海に浮かぶ孤島で強毒性の新型インフルエンザが発生し、瞬く間に島民全員が死亡した。「サリエル」と名けられたそれはアメリカの極秘の研究データが流出して人工的に作られたという疑いがあり、テロの可能性が囁かれるうちに、本州でさらに変異したウイルスの罹患者が現れる。ワクチンもなく、副作用が懸念される治療薬「トレドール」が政府の判断で緊急製造されるが、感染が拡大しても全国民にはとうてい行き渡らない数しか備蓄されていなかった。刻々と事態が変化していくなか、果たしてパンデミックは回避できるというパニック小説。いま世界中で猛威を振るっている感染症と、その周辺の思惑や陰謀の問題、国民皆保険制度や高齢化少子化、放漫国債発行による財政破綻など、書かれたのは2017年だから今を予見されていたかのように描かれていて面白い。ただ同じ問題を会話により説明するシーンが何度も繰り返されうんざり。問題点を箇条書きにして一回示して上手く会話に取り込めば済むことを繰り返されて何ページも費やされることに疑問を持った。タイムリーな話題と、タブーな話題に切り込んだ作品としては考えさせられた。
2019年6月講談社刊
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中山七里著「月光のスティグマ」

2021-02-24 | な行
阪神淡路大震災と東日本大震災、ふたつの悲劇に翻弄された孤児の命運を描いた恋愛サスペンス。とても美しい一卵性双生児の優衣と麻衣。隣の家の淳平は、同じ年。双児で、見分けがつかないが、淳平だけが、見分けられた。二人は、淳平が好きだった。淳平の兄 省吾も、双子が好きでどちらかを譲れと淳平に迫ったが、阪神大震災で、二つの家族は、淳平と優衣だけが生き残った。「この傷痕にかけて、俺が一生護る。」それから時は流れ特捜部検事となった淳平と、捜査対象の疑惑の政治家是枝孝政の私設秘書を務める優衣。あの夜、誓いを立てた幼なじみは、時を経て謎多き美女へと羽化して現われた。追い追われる立場に置かれつつも、愛欲に溺れゆくふたり。淳平に暗い疑念が膨らんでいく。「優衣か麻衣お前は本当は誰だ?」初恋と自分の職務、さらに家族が初恋相手に殺されたかもしれない現実をどのように確かめ受け入れていくのかがサスペンスミステリーだったが、甘酸っぱい恋愛物語から裏金追及、後半アルジェリア日本大使館テロ事件まで多彩だが詰め込みすぎで読後は残念な失踪感だけが残った。
2014年12月新潮社刊
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中山七里著「テロリストの家」

2021-02-04 | な行
公安部のエリート刑事・幣原勇一郎は、イスラム国関連の極秘捜査から突然外された。間もなく大学院生の息子が、イスラム国のテロリスト募集に志願したことが判明し、陰謀罪の容疑で逮捕される。公安刑事と息子の父親、二つの立場で揺れ動く幣原に対して、妻(由里子)や娘の可奈絵からは息子を売ったと疑われ、組織や世間には身内から犯罪者を出したと非難される。所属する公安警察やマスコミ、妻や娘から様々な仕打ちを受けながら、息子がなぜ志願したのか、世界中から悪とされるテロリスト集団に志願者が絶えないのはなぜなのか。ある日突然世界がひっくり返り、周囲が全て敵となった時。自分だったら、どのような行動がとれるか、正しい選択ができるのか。自分の身に置き換えてみると考えさせられる。後半最後に真実がわかり、びっくりしたがこれはスパイ小説でも警察小説でもない家族小説だ。
2020年8月双葉社刊
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中山七里著「騒がしい楽園」

2020-11-08 | な行
埼玉県の片田舎から都内の幼稚園に赴任してきた幼稚園教諭・神尾舞子。待機児童問題、騒音クレーマー、親同士の確執など、様々な問題を抱える中、幼稚園で飼っていた生き物が何者かに殺される事件が立て続けに発生する。やがて事態は最悪の方向へ・・・
幼稚園の問題点・保育行政の暗部を描きながらの犯人捜しのミステリー。残念ながら途中で犯人も簡単に推測できるし、幼稚園の問題についても結局何も解決もない。犯罪動機も納得が行かなかった。主人公のキャラは良いんだが・・・「たたかう君の唄を」の続編らしいが未読。
2020年1月朝日新聞出版
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中山七里著「カインの傲慢」

2020-09-28 | な行
犬養刑事シリーズ。医療と社会の闇にも迫る警察ミステリー。練馬区の公園で、少年の死体が発見された。調査の結果、少年は中国人だと判明。しかも死体からは臓器が持ち去られていた。捜査一課の犬養隼人は、後輩の高千穂明日香と共に捜査に乗り出す。少年の生家は中国の最貧層の家庭だった。日中の養子縁組を仲介する不審な団体の存在も明らかになるが・・・。その頃、都内では相次いで第2、第3の死体が見つかる。やはり被害者たちは貧困家庭の少年で同じ手術跡が。背後に見え隠れする巨大な陰謀。それに立ち向かう犬養・高千穂たちの執念と臓器移植を待つ娘がいる犬養の葛藤が見どころ。カインは旧約聖書に出てくるアベルを殺めた人類最初の殺人者でエデンから放逐されるが神から不死を約束される。やがて切実な背後関係が明らかなり「違法な臓器売買の検挙は、形を変えた殺人だ・・・」と言い放つ傲慢な首謀者の言葉とともに日本社会の暗部を見事に描いた作品である。子どもの臓器移植な困難な暗部を描くと同時に、貧困者親子の心の暗部=闇をも描いた社会派ミステリーです。
2020年5月KADOKAWA刊
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