医療をめぐるニュースは多く,種々雑多です.
そのうち医師不足をめぐる話題について書きます.
そもそも日本の病院は,税金や公費でまかなわれるものは医学教育の為と赤十字も含めて軍隊のための病院しかなかった.その他には結核療養所も含めた伝染病対策としての病院です.庶民のための医療というのは全く民間にまかされていた.つまり医師個人の経営する病院や診療所で対応していたと言うことです.戦後陸軍,海軍,軍属のための病院が国立病院と共済病院となりました.それから地方自治が少し発達したこと,医療が複雑になり医師個人経営の範囲を超えてきたことなどにより,多くは伝染病院を改組して自治体立病院となりました.
その中にあって医師を大学の医局から派遣するという形が取られてきました.派遣される方の医師から見れば,医局が関連しているので,転勤して地位が上昇する可能性と,だんだん遠ざけられスピンアウトする可能性がありました.しかし経営母体は様々ですから,転勤の度にやっとテレビが買えるか買えないかくらいの退職金を支給されました.医師は所得がよいと言われますが,30台くらいではやや高給ですが,40台では銀行など他へ行った友達と給料は逆転します.かつて私が努めていたある公立病院では,薬局長やレントゲンの技師長が課長待遇なのに,50台の医長が係長待遇でした.私は人事委員会へ提訴してあらためさせました.勤務医はサラリーマンの範疇に入るものであるのに,世間では誤解があるようです.まして退職金は勤務期間が細切れなので,他の職員には及びません.
ところが新しい研修医制度が始まり,医局の枠に入る医師が少なくなったものですから,従来のように医師を各病院へ派遣することが困難になったのです.
ひるがえって,警察官や公立学校の教師などが,採算を求められることもなく,身分も一貫しているから,僻地の学校や派出所にも教師や警察官が行くのです.
病院が幾らか収入があるからと行って,救急など明らかな非採算部門まで混ぜこちゃにして,さらに小さい病院や診療所の人事を孤立させたらうまく行くはずがありません.今迄大学の医局が何とか回わしていたものを,難しくさせたのですから,
都道府県などがその中央病院に多数の医師を確保して,都道府県の責任でローテーションでも組んで貰うしか方法はないでしょう.
都会の病院でも予約で月に一度の診察しか受けられないことが多いのですから,無医地区では,週1回の巡回診療で手当てするしかないと思います.あとは道路整備と救急車の運用でまかなうべきです.