メランコリア

メランコリアの国にようこそ。
ここにあるのはわたしの心象スケッチです。

『青春のオフサイド』(徳間書店)

2015-09-26 17:33:03 | 
『青春のオフサイド』(徳間書店)
ロバート・ウェストール/著 小野寺健/訳

「作家別」カテゴリーにも追加しました。

とうとうロバート・ウェストールの翻訳本のラストになってしまった。ずっと読まずにとっておいたんだけど。
充分分かっていたことだけど、ウェストールは読み始めたら止まらない。
ラグビーのことは分からないけれども、ラストの盛り上がり、意外性は笑えて、痛快!

ウェストールは、第二次世界大戦前後を舞台にした内容が特徴だけれども、
本書は、10代の青年と、歳の離れた女性教師との恋愛ものという、初めて読むロマンスもの。

階級社会が厳しく分かれ、教育方針も現代の日本では考えられない陰湿さ、暴力などの中での歳の差恋愛は、ドラマのようには進まない。

監督生の青年は純情で、時に残酷にもなれるが、教師とのスキャンダルは、当時は村八分的、
職を失うだけでなく、人生そのものを地獄にしてしまうほどの重みを持つ。

でも、2人の間には、単なる恋愛小説を越えた特別さがあって、
ウェストールは、学生時代の男子の微妙な心理、ガラス細工のような人間関係、
それを超えた真実の愛を、どうにかして同じ世代の若者たちに伝えようと
趣向を凝らしているのが、繊細な心理描写からにじみ出ているのを感じる。

これまでの、ハラハラドキドキと吸い込まれていくスリルものとはまったく別物。
そこかしこに真実を伝える素晴らしい文章やセリフが散りばめられていて、
青年の一人称で語られる口調ながら、ここまで表現豊かな翻訳は、訳者の力量に感服。


あらすじ(ネタバレ注意
空爆で校舎が壊滅状態になったのを喜ぶ生徒たち。古い校舎は、彼らにとって牢獄でしかなかった。
上品な学校に移動してからは、教師の体罰も減った。

「ぼく」(後半になってやっと名前が分かる。ロバート・アトキンソン)は、
10歳の時に、グラウンドの監督教師エマを知る。

「デブ」と言われて傷ついた少年時代から、それがすべて筋肉に代わり、
ラグビーチームに入ってからは、主要なグループの一員となる。
その頃にはエマのことなどすっかり忘れていた。



エマと再会したのは、グラマースクール。17歳の時。
しかし、エマは、以前の溌剌さは消え、すっかり変わってしまい、他のペンギンのような姿のおばさん教師らに混ざっていた。
歴史教師フレッド・リグリーと付き合っているという噂もあったが、好きではないようだった。

修学旅行で「ローマン・ウォール」に行くことになり、ロビーはぶ厚い本を3巻も夢中で読んで、教師の誤りを正して英雄となる。
エマはすっかり感心し、自分のクラスに来るよう勧める。
エマの母は、ロビーの祖母と同級生で、エマが家でロビーを褒めちぎっていることを知って、なにか特別な感情を抱き始める。



1週間滞在する修学旅行での引率は、エマとフレッドら。
仲間はみな急にGFができて、ロビーは、学校1の人気者ジャック・ドーソンとの距離が縮んで喜ぶ。
ロビーは、皆と退屈なバスに乗るより、1人で長い行程を自転車で走りきる挑戦をして、見事に成功させた。


p.52
愛というのは単純ではない。いつでも鼻先であしらわれ、からかわれ、報いられることのない愛というのは。
ワトソンがシャーロック・ホームズに抱いたような愛のことだが。


p.60
これこそ、仲間たちには理解できない感覚なのだった。
彼らはぼくたちを、暗闇の中で体をまさぐりあうことだけが望みの、いやらしいヤツとしか思わない。
愛とは王と女王とニューファウンドランドの世界なのだということが、わからないのだ。


p.62
女の子の間にも僕たちとまったく変わらない永遠の友情が存在することを知った。
彼女たちは気味が悪いくらい、僕たちに似ていた。
学校の廊下で僕たちが傍若無人に押しのけて通っていた、おとなしいヒツジの群れとは大違いだし、
まして、僕たちが空想する従順そのものの乙女とも大違いだった。



この旅行の最後の日、監督生ウィリフが転んで鎖骨を折るという大惨事が起こる。
教師を探すロビー。皆、生徒をおいてパブに行ったという。
友人の競技用自転車でよろけながら、必死に公衆電話までたどり着き、医師を呼び、エマを呼んだ。

フレッドは医師に自分が呼んだと嘘をつく。
教師が監督を怠って飲みに入っている間に、万一、生徒が死にでもしたら、全員解雇だけじゃなく、免許剥奪となるところだった。

ロビーは、祖母からエマが時々悲しい顔をするワケを聞く。
英国軍人(爆撃パイロット)のレジーと婚約していたが、撃墜死してからまったく立ち直ってないという。
だが、2人とも「あと10歳若かったら・・・」と想い合っていることを知る。

ウィリフの見舞いに行くと、そこは労働者階級の町で、シングルマザーの貧困生活。
母親は、校長らを裁判で訴えてやる!といきまいていた。ロビーは、エマを守るため

「証拠もなく訴えると名誉既存になりますよ。裁判や弁護士にはお金がかかります。
 学校にはお金がたくさんありますからね。表沙汰にしないことです。
 ウィリフの卒業も危うくなれば、仕事にも就けなくなる」と脅す。



イジメられっ子のウィリアム・ウィルソンは、ジャックやロビーらのいるグループに入りたくて、
どんなに暴力や中傷を受けても、つきまとうのを止めなかった代償に、ロープで吊るされる遊び相手にされる。

ある時は恐怖でズボンに漏らしたほどで、ロビーは、最初の1回は遊びのつもりで参加したが、降ろしてやり、
その後も吊るされるたび降ろしていたら、仲間だと思われ、逆に頭に来る。

だが、このままではエスカレートして、ウィルソンが狂ってしまうのではと心配になり、エマに相談しに自宅を初めて訪ねる。
そこは、成金のウィットリーベイとは真逆の、上流クラスの世界テニソン・テラスという場所(この辺の違いの説明がまた絶妙

エマはロビーが来ると慌てて身なりを整え、エマの母も「元気づけてあげてね」と協力を惜しまない様子。父は戦死。


p.94
やがて、彼女が戻ってきた。早変わりの名人だ! 口紅を塗りなおして、ハイヒールを履いていた。
そのせいで脚は長く、曲線がひきたって見えた。
女性に対するハイヒールのこういう効用には、僕も前から気がついていた。女の体型全体を変えてしまうのだ・・・。


p.98
女は、心の動き次第であんなにも変わるのだ。
だから女は、夜はしぼんで朝になるとまた開く花みたいに、いかにもかよわく見える。
野郎の外見はいつだって同じだ。本当に病気になるか、狂ってしまうまでは。



ウィルソンの話をすると、仲間外れにされたくないために表沙汰にしたくないというロビーの思いを正すエマ。
しかし、2人でうまい計画を立てる。

ウィルソンが襲われる時を見計らって、ロビーはエマに本を返しに行き、偶然、事件を見たフリで注意した。
しかし、意地の悪い教師メリーのおかげで作戦はバレて、校長室に呼ばれる。
校長はエマとロビーの仲を疑うが、ここでもエマを守るために、
ふとエマの母が「在郷軍人会」に入っていることを話すと、途端に校長の態度は一変する。


p.112
ぼくたちはそれぞれ暖炉の両側に座って話しはじめる。
原子爆弾から、僕らのラグビーチームのことまで、あらゆるこの世の間違っていると思うことについて。



ロビーがラテン語の成績がひどく悪いことを理由にして、エマに教わるという口実で自宅に通うようになる。


p.113
「あなたは世の中を変えたいと言いながら、自分の評判を気にしてるのね。
 あなたははじめる前から負けてるのよ、人の思惑を気にしてるようじゃ」


p.114
「他人の思惑ばかり気にしていたらどうなるか、教えてあげるわ。
 あなたは大学へ入って、いずれなんとなく教職に就いて、そのうち誰か女の子に出会って結婚するの。
 すると奥さんは、子どもを欲しがる。あなたは毎年毎年同じことを教えつづけている。

 すると、やがて子どもたちが大人になって孫を産んでくれる。
 そして40年勤続のあと、退職して庭いじりでもしているうちに、細長い箱に入れられて家から運び出されることになるのよ。
 いよいよ死ぬときが来ると、あなたは自分のまわりを見まわして、あれだけの時間はどこへ行っちゃったんだろう、と不思議に思うわ。
 あたしには分かってるの。さんざんそういう人を見てきたから」


ここでエマがかけたレコードが♪ワルキューレ
その他にも♪ラフマニノフの2番 などが出てくる。

2人は勉強後、いろんな話をして、激弱なラグビーチームをどうするかという話題になり、
サッカーチームのジョン・ボウズが優秀だと分かるが、労働者階級だということで当惑するロビー。

彼を誘うと、日曜は教会に行き、その後は安息日だからスポーツはダメだという。
月曜の放課後は、新聞配達と宿題がある(生活費のためなのかな
でも、サッカー部の彼がラグビーボールに興味を示したことは確かだった。



エマの父の部屋にアップライトピアノがあることに気づき、♪月光 を弾いたが、途中でやめて号泣するエマ。
それは婚約者が前線に発つ時、最後に弾いた曲だった。


p.132
「あなたはたえず幸せでいたい? 豚小屋の豚みたいに?」
「もちろん。僕は人に使ってほしいんです。マッチ箱みたいに」


p.136
大きな傷が口を空けていれば、誰だって塞いであげたくなるじゃないか。この世に、そんな穴はあってはいけないのだ。
だからそのとき、ぼくは彼女にキスをした。

まるで巨大な感情の塊が僕から彼女へどっと流れこみ、おなじ大きさの塊が彼女からぼくにも流れこんできたみたいだった。
何かとても温かく、空白を満たしてくれるようなものが。

それはとても寒い朝、本当に腹をすかせているときの熱くて美味しい一杯のスープで、ぼくはとてもがつがつしていた。
彼女も、とてもがつがつしていた。お互いの飢餓感が、いっそう飢えをつのらせた。こんな気持ちは生まれて初めてだった。
(なんてステキなキスシーンで涙が出る



しかし、3日後、エマから手紙が来て、これからは忙しくなるから勉強を教えられないと書かれていた。
ロビーの生活は一変する。一気に成長し、気持ちのやり場がなく歩き回る姿など『ゾマーさん』みたいだ。
エマと仲の良い教師ウィニー・アントロバスが授業で誤りを認めなかったことを指摘して笑い者にしたりもした。

ロビーは、父親がうなるほどの金持ちだという噂のジョイス・アダムソンと付き合い始める。
ジョイスはロビーが好きで、地味で無口だが、映画を観てから、キスをしても止めなかった。
ある夜、2人がデートしていると、犬の散歩をしていたエマに見られる。

その後、またエマの自宅に行き、当時、女優ラナ・ターナーが着て「セーター・ガール」などと呼ばれて流行っていた
体にピッタリのセーターを着ているエマ。母は出かけているという。
(この頃はまだ衣類は配給制なんだな

エマに誘惑されるがまま、胸に触ったことでロビーはぶたれて、エマは自分が悪いのだと泣いて謝る。
2人は、いつかの思い出の「ローマン・ウォール」に日曜に行く計画を立てる。



p.177
「ここであなたに棄てられてもいいわ。今なら、幸せに死ねそうだから」(なんだか死ぬ話ばかりで怖い


p.181
教師っていうのは芝居をしているのと同じなのよ。
 はじめっから終わりまで、たえず舞台に立っているのよ、下手なコメディアンみたいに。
 違うのは、しじゅう笑ってはもらえないし、終わっても拍手もしてもらえないということだけ。
 あたしは、『ハリス先生』を演じなくてはならない」

突然、大雨が降ってきて、ロビーは慣れているため、2人分のレインコートで仮のテントを作り、
狭い中で話しているうちに、2人は激情のまままたキスをする。
(それを、H.G.ウェルズの『白壁の緑の扉』に例えるって、一体どんな話なんだろう???


p.186
もはや二人ではなく一人になった人間が、静かな呼吸をしているだけなのだから。
そして、この世界には、自分たち以外何もない。この安全な暗黒の他に、世界は存在しないのだ。
そしてあらゆる孤独や、ありとあらゆる汚らわしいものにまみれた肉体の中に閉じこめられて、
死ぬほどうんざりする気持ちとも、永遠に訣別できるのだ・・・


p.187
(女の子を妊娠させた友人の話は惨めすぎる

始終いやらしい話ばかりしていたベニーは、テルマを妊娠させ、大学へ行けないどころか、高校もそれきり。
16歳でリベット工の見習いになり、帰れば、姑の家の一室で、たえず泣き喚く子どもが一人と、
子どもを産んでボロボロになって、カーラーをつけてウロウロしている女房がいる。

彼女は17だというのに、50の母親と対して変わらない、だらしのないデブになっていた。
彼は給料袋を女房に渡すことさえできない。そして、これが一生つづく運命なのだった。
あんなことになるのなら、むしろ一生僧侶でいたかった。
僧侶なら、少なくともかなりの尊敬と、かなりの心の平安を得られるだろうから。


P.189
「先生のせいじゃありません。僕が悪かったんです」
「バカなことを言わないで。あなたは、男に手を出させるのは女だということを知らないの?」



「オクトーバー・ウィーク」になり、会えない時期が続くとエマを束縛したがるロバート。
逆にエマは、もうすぐ卒業という時期で、2人の秘密を守ろうとして、フレッドとのデートの誘いも断らなかった。
ロバートにも、ジョイスと付き合い続けてと頼む(2人で観た映画がマルクスbros.の『カサブランカの一夜』


p.210
「幸せでいましょう。あたしに飽きたときは、すぐにそう言って。いつまでも、友だちでいることはできるでしょう」

「ジョイスとのデートをつづけて。女の子っていうのは目も鼻もとても鋭いものなの」



ロバートの気を紛らわせたのは、ラグビーだった。
上流のガーマ校、ウィットリー・ベイ校に圧勝。

この地域の1位はニューカッスル校、2位はディム・ジュリアン校。
コーチのフォスダイクは、試合を申し込むのも腰を下げて頼み、試合中は相手の味方をして、自分のチームにミスをかぶせたりまでした/驚

ディム・ジュリアン校に勝つには、サッカーチームのやっかい者ジェフ・カロムを引き抜く必要があった。
(エマがかけていたレコードは♪シェーラザード、♪火の鳥(まるでフィギュアのフリープログラム


p.224
ホルスト♪惑星 を聞いて泣くロビー。

「泣いてなんかいないよ。目から水が流れている。男は泣かないものだからさ。僕は7つの時から泣いたことがない。
 “遠い昔に聞いたことのある、もう1つの国がある”という歌詞のせいさ。僕はいつでも、こことは違う国に憧れていた。
 人が互いに気づかいあって、しじゅう殺しあいなんかしない国・・・
 もっといい国があっていいはずなんだ。そしてぼくは見つけたんだ。先生のそばにいればいいんだ」
(涙。ジョンみたい。♪make love not war...


p.224
「ご両親はどうなの。あなたを愛しているじゃないの」
「じゃあどうして母はしょっつがみがみ言うんです? 親父は、あざけるようなことばっかり言うし」


p.225
彼女の笑顔はとても温かく、やさしかった。
ぼくはふと、母さんと父さんもこんな顔をしてくれたいのにと思った。一度か二度でいいから・・・



カロムと監督生バッヂを賭けて、ラグビーをやらせ、結局カロムは途中で倒れてしまうが、ロビーはチームに誘う。
チャーチル「勝利には雅量がなければ」

おかげでディム校にも勝ったが、チームの高価な時計が盗まれたと教師がやってきて、
フォスダイクは、カロムの荷物をみんなの前でさらけ出した挙句、タオルまでとって裸にした。
ロビーらも同じようにして潔白を証明し、時計は相手チームのロッカーから見つかったと言われ、相手の教師からお詫びにお茶に招かれる。

上機嫌のロビーに、ジョンは、「犯人はカロムだよ。見てない間に元に戻したんだろう。これからはもっとよく見張っているよ」と言われる。
校長は、カロムを辞めさせろと言い、キャプテンのジャックは彼は足を怪我したから休場させると面子を保つ。


p.237
「アッカー、おれは時々、おまえは人生をなんでもごまかして渡ろうとしてる気がするんだ。それじゃあいずれ、厄介なことになるぞ」



クリスマスにエマに背景画の模倣をプレゼントするロビー。教師は生徒にプレゼントは禁止されているという。
クリスマス中は3週間、それ以降は進学試験などあるから会えないと言われ、また絶望する。

試験勉強には、ジョイスの友だちマージョリーが加わった。
2人が買い物に行っている間、ロビーはジョイスの母親に誘惑されトイレに逃げる。
それは、娘と2人きりにしても大丈夫かどうかのテストだったと後で分かる。

ニューイヤーパーティに呼ばれて、高校のOBトニー・ベリフォードに元旦の試合に誘われる。
ロビーはジャックを誘い、冗談だろうと思いつつ行ってみると、往年のスター選手らが集まる町のクラブの一軍と知って驚く。
結果は29対29の同点。みんなはまたパブに飲み直しに行く。
(今朝まで酔っ払って、グラウンドに吐くってとんでもないヒーローだな


p.250
大人がバカな子どもみたいな真似をすると、この世の終わりという感じがしてくるものだ。

p.261
エマは僕のことを、いらない時は、大好きな玩具みたいに小さな箱にしまっておけばいいと思っているのだ。




模擬試験は終わり、成績は順調にアップ。
しかし、フレッドとたわむれているエマを見てカッとなったロビーは、パブに呼び出す。


p.275
不満などあるはずがない。それでいて・・・さ、私の居間へいらっしゃい、と、蜘蛛が蝿に言いました、という感じがした。
いいカモだ、というわけだ。子どもの頃に聞いたこの童謡が、たえず頭の中で鳴っていた。



週末に泊まりがけでハイキングに行くと両親を騙して、ロビーは、母が出かけているエマの家に泊まる。
排卵日じゃないことを告げ、ベッドに誘うが、愛犬が吠えて仕方ないので、睡眠薬を飲ませるとぐったりしてしまい、病院に預ける。


p.298
そのとき僕はふと、自分がいつも人生に対してどんなに怒っていたかに気がついた。


家に帰ると、祖母が発作で父母は不在。ついニヤけてしまうロビーにはなにもかもが好都合だった。



バンディ(兄)とロイ(弟)は、リーグとユニオンの違いについて馬鹿にする。
リーグは紳士のスポーツではない。出てもらう選手には金を払わなくてはならない。

p.302
ラグビー・ユニオン:アマチュアチームの連合。各チーム15名。
ラグビー・リーグ:各チーム13名。プロも認められている団体。


ロビーは、2人をチームに入れるため、また賭けをする。金を出すのはいつもトニーだが。
目が悪いコーチは2人を二軍に誘う
ロビーのもとには大学から「B3つならOK」だという通知が来るが、Aクラスの大学も視野に入れている。

エマとロビーは人目を避けて、とうとう肥料工場のクルマの中でまでデートする。
それをよりによってウィリアム・ウィルソンに見られて、「親友になってくれたら誰にも言わない」と弱みを握られる。


p.312
うちの学校の生徒でこのへんに住んでる奴もいない。ここはスラム地域、貧乏人の住むところだから。


すっかり動転したエマを落ち着かせるため、ロビーはまた知恵を働かせる。
1.しばらく会わないこと
2.エマはフレッドとデートすること
3.プロポーズさせて婚約指輪を学校にしてくること

そうすれば、誰もウィルソンのことなど信じない。エマは実は2度プロポーズされて断っていたと話す。

ロビーは、下級生らのヒーローなため、一緒に歩くだけでもウィルソンは鼻が高かった。
次はグループに入れてくれと脅すが、予想通り、仲間は認めず、勘のいいジャックは「何か弱みでも握られてるのか?」と聞いてくる始末。
(ロビーは、つねにイジメられてきたウィルソンの立場も考えることができるところがすごいなあ



ニューカッスル校との試合で、バンディは「自分ら兄弟はプロだから、試合に出すなら金を払え」と要求。
仕方なくカンパすると、今度は抜け目ないカロムも要求してくる。
コーチは、ロビーが勝手に布陣を決めたことに反対するが、カロムは彼の両踵を蹴って、病院送りにする/怖

ニューカッスル校のグラウンドはウィンブルドン並みの整備で、最大級に広い。
これまで40対0で負け続けてきて、それ以上点を取るのは紳士のスポーツではないという暗黙のルールで手加減されてきた。

代理コーチはいい先生で、「3人バスに乗り遅れたが、補欠にいい選手がいます」というと「着替えさせろ」と簡単に騙される。
バンディ、ロイのプロ兄弟、ジョン・ボウズ、カロムのサッカーチームからの引き抜きが功を奏して、
なんとキックオフから1分半ほどで得点が入り、9:0→14:0→22:8→22:18という接戦でハーフタイム。
相手チームは信じられないショックで、チーム内でももめはじめた。


p.344
「いったい、きみはどういう人間なんだ」
ああ、レフェリーよ、その質問に答えられたなら、どんなにいだろう。
そう言うあんたは、答えられるのか? 上品な喋り方をする、中産階級きどり屋のあんたは?


p.346
ふと見れば、チーム仲間は互いに頻繁に体に触れあい、倒れれば手を貸しあって立ち上がり、胸を叩きあっていた。これこそ愛だ。




翌日、生徒はその話題でもちきりなのに、校長は壇上で一切触れず、ロビーを校長室に呼んだ。
相手校から危険なプレイだったと苦情がきて、バンディらのこと、賭けのこと、コーチの負傷のこと(今学期ずっと休職)を話し、
カロムは退学させたが、学年一の成績+監督生のロビーの将来をダメにしたら、
彼の父は教育委員会の議員に知人がいるため(労働党)、自発的に辞めるチャンスをやると言われる。

Aレベルの試験は別の制服で受け、監督生バッヂをついにとりあげられる。
真剣に心配してくれるジョイスから、エマは婚約指輪をしていることを聞く。



p.360
校長というものは「首謀者」を見つけるのが大好きなのだ・・・別の言葉で言えば「スケープゴート」を見つけるのが。
スケープゴート:責任を転嫁するための身代わり。不満や憎悪を他にそらすための身代わり。


ロビーの成績はAが4つ。これは学校で初。報道陣まで来て「なぜ制服を着てないんだ?」と言われ、
校長は写真撮影のためにロビーに制服を着るよう言い、バッヂも返す


*************

ロビー自身のその後は書かないんだね。読者の想像にお任せってわけだ。
ジョイスと別れて、大学で違う恋人を見つけたかもしれないし、
社会人になって、また別の出会いがあって、エマがいつか言っていたみたいに平凡に暮らしたかもしれない。
それもいいけど。


【訳者あとがき抜粋メモ】
この物語の背後には、私たち日本人に分かりにくい英国特有の社会制度(教育制度など)や、心理的特徴、
さらに、全体のもっと大きくて重要な時代的背景があります。

ウェストールはイングランドの最北、ノーサンバーランド州生まれ。
一人息子のために物語を書いたのがきっかけで、40作ほど書き、数々の文学賞を受賞。

彼の情熱の根本には明らかに、形式的・表面的な道徳とか、愚かしい戦争に対する熾烈な怒りが潜んでいます。


冒頭に「著者のメモ」としては、こう書かれている。

“本書の背景として、私の故郷の町と母校を使わざるをえなかったので、
 この中で描かれている会話・行動・考え・希望などはすべて完全なフィクションであることを強調しておきたい。
 すべてはみな夢のようで・・・”



ウィキを見ても、その後新たに翻訳本が出た情報は載っていない。
いつか、全冊読める日が来ますように/祈×5000



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