メランコリア

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『小型武器よさらば 戦いにかり出される児童兵士たち』(小学館)

2013-09-26 18:05:20 | 
『小型武器よさらば 戦いにかり出される児童兵士たち』(小学館)
柳瀬房子/文 難民を助ける会/監修

紛争理由は、宗教の違い、民族対立、民族解放独立運動、領有権問題、反政府活動が多いんだな。
戦争のやり方を法で規制することなどできるのか?


【内容抜粋メモ】

国連本部には銃身をねじ曲げたオブジェがある。日本から贈られた「平和の鐘」も有名。
国連の旗は、北極点を中心とした世界地図を、平和の象徴であるオリーブの枝で囲んだもの。
いまでも武力紛争は絶えず、戦争で亡くなるヒトの90%は小型武器によるといわれる。
アナン事務総長は、「小型武器は、もうひとつの大量破壊兵器」だと言った。


小型武器は、地雷も含めると世界に5~6億あると推測される。うち1億個が自動小銃。
毎年50万人が死傷。その7割が女性と子ども。
いちばん多く使われているのは、旧ソ連製のAK47(カラシニコフ)。3kgと軽く、子どもでも扱える。



アフリカでは10歳未満の子どもも戦争に狩り出される。
家族への食糧配給を止めるなどと命令で脅され、恐怖心を軽減するため麻薬を用いることもある。
孤児の施設から大勢連れ去られることもある。

ヒトを殺したり、傷つけたりした子どもは、生涯心の傷(トラウマ)を抱え、精神障害を起こすことも多い。

国連は2001年に会議を開き、許可製造業者には製造記録保存、国名等の刻印を含む「行動計画」が合意された。


●アフガニスタン
タリバン政権はなくなったが、一部のヒトが山に立てこもったり、別の軍事グループが対立し、ときどき戦闘している状況。
法律・警察がきちんとしていないと、いざという時は自分で自分を守るしかないと考えて、みな武器を手放さない。
世界の麻薬の80%がここのケシから作られている(アヘン)。それで武器を買っている。


●シエラレオネ
終戦後も小型武器による死傷事故は絶えない。
平和を祝って空に向けて撃った弾が落ちてきて怪我をするヒトもいる。
90年代には、産出するダイヤモンドの利益、部族間の争いがからんで軍事クーデターが次々起こった。

1949年のジュネーブ条約をはじめ国際人道法で、戦争中も非戦闘員は殺してはいけない、
捕虜は人道的に扱い、終戦後は釈放しなくてはいけないと決めた。
(戦争に法が適用できるのか?!

国連開発計画(UNDP)の発表では、シエラレオネは世界でもっとも貧しくて住みにくい国だと言われた。
日本は9位、シエラレオネは最下位。
地雷や小型武器の回収が行われないと平和ももろくなる。



世界で起きた過去、現在の紛争地図


●カンボジア
1991年に終戦したが、地雷で大勢の子どもが死傷している。
村のヒトが隠し持つ銃を警察に渡す代わりに、井戸のポンプを日本が寄贈


回収した銃は「小型武器破壊式典」にて灯油をかけて燃やしたり、フン・セン首相みずからブルドーザーで押し潰した。
特定非営利活動法人紛争予防センター(JCCP)が活動している。

アメリカで小型武器の回収に応じたヒトに100ドルを渡して効果をあげたが、カンボジアでは失敗した。
手製の銃を新たに作って持ってきたり、銃を奪い合って死傷者が出たり、隣国から不法輸入したりという事態になった。



カンボジアでも銃を不法所持すると刑罰の対象になる法ができた。
銃を提出した町村に優先的に学校を建てたり、橋をかけた。
財団法人日本国際協力システムが「日本小型武器対策支援チーム」を立ち上げた。


●スイス、アメリカ
スイス、アメリカでは、多くの家庭に銃がある(スイス 意外だ

スイスの武器管理は厳しい。男性は20~42歳までの間、延べ300日軍に入隊し、訓練を受ける義務があり、
兵役が終了するまで自宅に銃と弾薬24発を常備する決まりがある(妙な決まりだ

1999年、コロラド州のコロンバイン高校で、銃の乱射により13人が亡くなった→映画『ボーリング・フォー・コロンバイン』で観た
全米ライフル協会(NRA)は「ヒトを殺すのはヒトであり銃ではない」として銃規制を阻止している。会員360万人、有力な政治団体となっている。
アメリカで小型武器は推定2億個、所有者は7000万人、1999年に小型武器で亡くなったヒトは28,874人。

スイスは「武装永世中立国」、コスタリカは世界で最初の「非武装永世中立国」(スイスのイメージ変わったな
2002年、ドキュメンタリー映画『軍隊をすてた国』が上映された。
パナマも1990年に軍隊を廃止した。

「獣や鳥を撃つ猟銃やクレイ射撃のように許可を受けたヒトだけが持てるようにしなくてはならない」って書いてあるけど、
狩猟用の銃だって止めればいいのに・・・


終戦後には、徹底した武器回収が必須
第2に世界大戦で使われた小型武器が、60年たった今も途上国で使いまわされている。
手入れさえすれば100年もつと言われている。
江戸時代の火縄銃でさえ今でも使えるものがたくさんある。

95カ国の計600以上の企業が年間630万個の小型武器を生産し、
世界で40~60億ドルもの取引額にのぼると見られる。


●小銃の種類

<64式小銃>
「陸上自衛隊の主力火器は国産で」の掛け声のもと、日本人の体格に合わせて設計(そんな掛け声要らない

<89式小銃>
1989年制式化。他国に輸出しないため1丁40万円と高価で、自衛隊でも換装は進んでいない。

<AK-47>
カラシニコフ氏が発明。
大量生産・大量流通により全世界に普及した。

<AK-74>
1970年頃から急速にAK-47から換装が進む。

<M-16A2>
米陸軍の制式銃。雨に弱いなどベトナム戦争中の教訓を受けてM-16を改良。


●小銃の価格
小火器は1丁2~3万円から数万円。
AKシリーズは、5000円程度。


●武器のながれ
2005年ベトナム戦争が終わった後、約2万丁の小型武器がキューバに引き渡され、
さらにエルサルバドルのゲリラ、FMLN(ファラブンド・マルティ民族解放同盟)の手に渡ったと言われる。
南米のゲリラや、麻薬生産地を守ろうとする組織犯罪集団に引き継がれ、新たな紛争を呼ぶことにもなる。

「国連軍備登録制度」
武器に通し番号をつけ、移転状況を管理する考え。

日本は2001年、自衛隊の装備等を中心に1億5100万ドル(約165億円)相当の小型武器を輸入し、
金額で世界第1位の小型武器輸入国だった。


●国旗に描かれた武器

<サウジアラビアの国旗>
イスラム諸国は、『コーラン』のもっとも大事な言葉「アラーのほかに神はなし。マハンマドはアラーの預言者なり」から、
「コーランか、しからずんば死か」という印象を与える。
ほかにも、オマーン、アフガニスタン、いずれもイスラム信仰の強い決意が剣にこめられたデザイン。

アンゴラの内戦では、政府軍は石油、反政府軍はダイヤモンドの売却で得た利益を小型武器の調達にあてた。
国際ダイヤモンド製造者協会が、反政府勢力によるダイヤモンドの不正取引を止めるため、
ダイヤモンドの国際電子登録制度を採用した結果、認証を受けていないダイヤモンドの輸出が禁止され、
武器を買い、軍事力を維持する資金が不足して停戦になった。

武器は本来、国民と国土を守るためのもので、その決意を国旗で示している。
勝手な行動をおさえるためには、公的な強制力が必要。




子ども兵士が増えた原因
1.小銃が軽くなった。
2.扱いが簡単になった。
3.戦争が長引き、生活の手段がなくなった。
4.子どもは大人の言うことにすぐ従い、夢中で任務に尽くしがち。
5.地理を知らないから逃げることが少ない。など
すさんだ精神状況から終戦後の社会復帰(DDR)が難しくなる。




●対人地雷の問題点
・戦闘員、非戦闘員の区別なしに殺傷する。
・戦後もいつまでも危険。
・爆破による手足の損傷、失明など、回復不能な障害を与える。
・洪水、地すべり等で地雷が流出し、平時に非戦闘地域に被害をもたらす。など
→地雷の撤去だけでなく、地雷回避、安全教育を行うことが必要。

主な材料は、金属製、木製、陶磁器製→樹脂製、プラスチック製になったため、金属探知機で探すのがとても難しい。
1つひとつ、爆発しないよう注意して掘り出す、危険で、たいへんな時間とお金がかかる。

1997年、ICBL(地雷禁止国際キャンペーン)が対人地雷禁止条約を推進した。

地雷の現状
・地雷生産国は50カ国以上→米中露など15カ国に減った。
・過去に5200万個以上が廃棄された。
・78カ国が2億~2億5000万個を保有。
・2002年には11,700人の死傷者を出した。うち軍関係者は15%、大半は民間人。



地雷被害を受けた国々


絵本『地雷ではなく花をください』
純益はカンボジア、アフガニスタンの地雷撤去、教育、奨学金給付、生活支援などにあてられている。


●地雷ゼロをめざす
海岸線が長いため地雷がないと充分な国土防衛が出来ないなどという理由から、
日本は、地雷禁止条約の締結に消極的、反対態度だった。
2003年までに自衛隊が保有していた100万個の地雷を廃棄する義務を負った(そんなに持ってるって軍備じゃん
新旭町を中心に爆破処理を進め、日本は研究・訓練用の約1万個を残し「地雷ゼロ」となった(いやいやゼロじゃないし


●武器削減に成功した国、日本
1543年、火縄銃が伝わり、16C後半には、日本は世界でいちばん多くの鉄砲を保有するようになった
1588年、豊臣秀吉が「刀狩り」を行った。京都に大仏殿を建立するためと言ったが、本音は「百姓一揆」を抑えるため。
江戸時代には、国内が安定し、武士が「飛び道具」を卑怯なものとする古来の考え方に戻った。
「出女入り鉄砲」(江戸から地方に出る女と、江戸に入る鉄砲)を箱根の関所で厳しく取り締まった(銃と女性を一緒にしないでおくれ
明治政府による1876年の「廃刀令」の公布により、武士という階級は名実ともに消えた。

第二次世界大戦敗戦後は、「菊のご紋章」の入った銃を手放し、それまで戦っていたアメリカ、イギリス、中国軍に引き渡した。
最近は、周辺諸国との密貿易が増え、暴力団などが武器を不法所持して死傷者を出す事件があとをたたない。


ただ「銃を捨てよう」と叫ぶだけではなくならない。
政治、経済、教育、宗教などが総合的に関わり、小型武器の徹底した管理、削減を進めることが必要。


【猪口さんによるあとがき抜粋メモ】
小型武器の犠牲者の8割が女性と子ども。
子どもが武器を持つ兵士にさせられた国は30カ国にものぼる。
紛争後の治安維持を著しく困難にし、国家と社会の復興・再生を遅らせてきた。

日本政府は主導的に小型武器問題に取り組んできた。
「行動計画」にもとづく第1回小型武器中間会合が開催された。

「行動計画」の特徴
1.国連などによるグローバル・レベル(地球規模での)取り組み
2.リージョナルな(地域規模での)取り組み
3.ナショナルな(国家単位での)取り組み


●「全会一致方式」で決定する。
準備段階からこの方式で調整し、各国の実施への自発的な意欲を引き出すのがねらい。
全加盟国が小型武器のトレーシング(非合法流通への転落防止のための追跡)に関して、
法的拘束力のある文書採択の可能性も含む交渉に入った。

2004年「小型武器ナイロビ議定書」が採択された。
ルワンダ、エチオピアなど、内戦と小型武器被害がもっとも深刻な国が、もっとも早く国連の動きに呼応した。


小型武器問題に取り組む団体のサイト
「難民を助ける会」(AAR)
「日本紛争予防センター」(JCCP)
「日本国際協力システム」(JICS)
など


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