メランコリア

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SF界の巨匠 アーサー・C・クラークSP 『都市と星』@100分 de 名著

2020-04-20 15:32:00 | テレビ・動画配信
アーサー・C・クラークSP 『都市と星』@100分de名著
科学はユートピアをつくれるか?

アーサー・C・クラークスペシャル 第2回 『幼年期の終わり』@100分de名著


高度なコンピューターによって完全管理される究極の都市
そこに一人の特異な人間が生まれ
人類の運命を大きく変えていく

真のユートピアとは何か?
クラークが導き出した答えを読み解きます

『銀河帝国の崩壊』という長編をさらに膨らませた作品


Q:今回の作品の特徴は?
前回ユートピアとは何か?という問題提起が出てきましたが
今回の作品ではそれに対するクラークなりの回答を提示した作品

勝手に未来のことを想像すればいいやという時代から
社会のあり方、本当に幸せな暮らしとは何か?という
大人の階段を一歩上がった作品になっています


【内容抜粋メモ】

はるか未来、地球は荒廃し、砂漠で覆い尽くされていました
人類の安住の地となっていたのはダイアスパーです







そこは人間の生と死が中央コンピューターによって完全管理されている驚異の都市
人の寿命は1000年に延ばされています

肉体が滅ぶ前に、その人間の構成情報「マトリックス」を
メモリーバンクに保存することで
10万年後、新たな肉体をまとって再生
前世の記憶も徐々に取り戻す
まさに不老不死を実現した都市でした







人間の体の構造も変わり、へそ、爪、歯、体毛などが消滅
睡眠もほとんど必要としていません
住民は主にサーガと呼ばれる仮想ゲームに興じ
10億年もの間、閉鎖空間で変化のない生活を続けていました



(こんなに進化してもまだサバイバルゲームみたいなのをやってるんだ↓↓↓
 全然幸せそうじゃないんだけど


ところがそんなタイアスパーに
なぜか前世の記憶が全くない人間アルヴィンが誕生します





朗読
真相は我々には分からない
分かっているのはただ一つ
君は全人類の中でただ一人、過去において生を受けた経験のない人間だということだ

少なくとも10億年間、地球に新たな子どもが生まれたことはない
君は10億年ぶりにこの都市で誕生した最初の子どもなんだよ

アルヴィンと他の住民との決定的な違いは
ダイアスパーの外に出たいという強い思いでした







「人類は他の場所には生きていない」

そう聞かされていたアルヴィンでしたが
ある日、道化師ケドロンの協力を得て、地下に隠された交通網を発見
都市を脱出します





(どれもあらすじを聞いただけで本当に面白いな


アルヴィンはリスと呼ばれる国を見つけました
そこは豊かな自然が溢れる場所
科学に依存せず、動物とともに素朴な暮らしを営む人々がいたのです





「なぜダイアスパーを出たのか?」
と住民の一人セラニスから尋ねられ、アルヴィンはこう答えます


朗読
僕は世界を探検したかった
誰も彼もが都市の外には砂漠しかないと言うけれど
どうしてもそれを自分の目で確かめたかったんです

それが唯一の理由?

違います
唯一の理由というわけじゃない
もっとも今の今まで気づいていなかったんですが
僕は、、、寂しかったんだと思います



光:
これって輪廻転生みたいな話じゃないですか
不老不死ともとれるけれども
肉体が滅びて次の肉体にいくって
電子データだけれども魂が入るみたいな話だから
良い生まれ変わりみたいな

それとめちゃめちゃ新しい感覚の人間の記憶の情報化みたいなのが入ってて
早速夢中になりそうです


ダイアスパーの設定





瀬名:
都市としての実体はあるんですけれども
人と会うにもバーチャルリアリティを通して会ったりとか
欲しい家具があれば仮想現実の世界から出てきたりとか

ずっとみんなサーガという仮想ゲームをしている
今で言うとゲームに何十時間も夢中になっているような
子ども達を想像させたりしますし

これがユートピアなのかディストピアなのか
よくわからないというところから物語が始まります

光:
バーチャルリアリティのゲームとか
ネットワークのゲームとかが世の中にいっぱいある今だと
割と発想しやすいかもしれない
でもクラークってこんな発想をどこからイメージしてきたんですか?

瀬名:
当時、ちょうどサイバネティックスっていう学問分野と言いますか
考え方が台頭してきた

ノーバート・ウィーナーという人が言い始めたことで
人間と機械が電脳空間みたいなもので繋がれて
新しい人類が生まれるかもしれない




「サイボーグ」という言葉も宇宙に人が行く時
生身の人間ではだめだから、機械と融合すれば
宇宙空間に適応できるっていうことで研究が始まっているんです

そういう時代背景を取り込みながら
独自のアイディアや発想を入れ込んだのが設定だと思います

(今はとても科学が進歩した現代社会だって思っていても
 実は相当前からそうした概念があったってことなんだな


アナ:
主人公アルヴィンは『幼年期の終わり』で
外に飛び出したジャンと似ているところがありますか?

瀬名:
ジャンは外の世界を見たいという衝動だけで突き動かされているところもあるのですが
今回のアルヴィンは、他の人と会うことによって
さらなる冒険のきっかけを見つけてくる

冒険そのものよりも、そこへ行くまでの自分の決意とか
周りの人をいかに説得して「行って帰ってきます」って言えるのか
冒険の前後がものすごく手厚く加筆されている

光:
そこ聞きたいです
何度も書き直しているって言うことは
その間に人生の中で何かがあったからですよね

瀬名:
行くまでの描写がすごく丁寧になっていて
だからこそ今回の『都市と星』は名作になっていると思います



科学より精神に重きを置き、テレパシーなどの超能力を持つリスの人々
彼らは老いや死を受け入れる一方で
人同士の結びつきを大切にし
温かなコミュニティを築いていました
(こっちのほうがいいな


朗読
愛情ならダイアスパーでも抱いた事はあった
しかし今アルヴィンは、愛情と同じくらい貴重なものを学び取りつつあった

それなくして、愛情は至高の満ち足りた状態に充足することはなく
不完全な形にとどまらざるを得ない
その何かとは、相手を気遣い、いたわる心だった





アルヴィンはヒルヴァーという若者と冒険に出ます
仮想ゲームとは違い、自分の足で山や森を歩きまわる初めての体験
苦楽を共にする中、2人はやがて生涯の友となっていくのです

旅先では湖に住む地球外生命体を発見します
それは何十億と言う個体が集まる群体生物で
細胞の崩壊と再生を繰り返し、永遠に生き続ける異星人でした
まるでダイアスパーの住民みたいだとゾッとするアルヴィン





一方、群体生物は謎のロボットを従えていました
アルヴィンはそのロボットが
ダイアスパー誕生以前の人類が忘れ去った歴史を知っていると直感
群体生物を説得して連れ出すことに成功します




ところが村に戻ると
「ダイアスパーに帰るなら一切の記憶を消さなければいけない」
と強力な超能力で襲われます

さらになんとかダイアスパーに戻ると
今度は「外界に出て人々を混乱させた」として
都市を統括する評議会の聴聞会にかけられてしまいます




それでもアルヴィンは物怖じすることなく
「ダイアスパーとリスは交流を持つべきだ」と主張しました


朗読
これは大いなる悲劇に思えてならないんです
現存する人類の2つの系統が
なぜこんなにも長い間離れ離れになってきたのでしょう

お互いに相手から学ぶものが何もないと思い込んでいる状況は
どちらも間違っていることの証ではありませんか?




(ダイアスパーの聴聞会の人達ってKKKに似てないか?


しかし人々は価値観の異なる文化を警戒し、地下の交通網を閉鎖
ダイアスパーとリスは断絶してしまいました

そこでアルヴィンは中央コンピューターに頼み
ロボットにかけられたロックを解除
ダイアスパーの砂漠に隠されていた宇宙船を手に入れて再びリスに向かいます







そして指導者達に会い、ダイアスパーと交流するよう説得を試みました

アルヴィンの行動によって流れは変わりました
交通網の閉鎖を解き、双方の幹部同士が接触しはじめたのです

そしてアルヴィンは人類の過去の謎を探るべく
ヒルヴァーと2人で宇宙の冒険に出ることになります



(壮大な物語だな!


光:
なんかいろんなことの比喩が入っていそう
都会と地方とか、デジタルとアナログとか
人工物と自然物とか

いいなと思うのは、自然に触れたせいで
もうロボットはいいやって思う人もいるじゃないですか
自然のほうがすごいんだからって
作風が180度変わっちゃう人もいる

でもこの人は、それも SF 小説に取り込んでる
そこが2つの種族を仲良くさせようっていう感じに思える

片方だけに寄るんじゃなくて、両方ミックスしたほうが
絶対に世界は良くなるっていう感じがグッときますね


瀬名:
地球の中に自分たち1つだけだと思っていた都市だけれども
実は他にも価値観の違う人がいて
そういう人たちとの協力によって
自分たちの過去を探りに宇宙に出て行こうという気持ちがある

ジャンは1人で密航しましたが
今回はバディと一緒に宇宙へ旅立っていく

自分1人の価値観だけで動くんじゃない
ダイアスパーの人を説得し、リスの人を説得し
だからこそ僕らは宇宙へ行くんです
ということをちゃんと主張して出かけていく

光:
「1人で頑張ってなんとかなる」というのも間違いではないけれども
ここにはクラーク自体の心の変化がありそうですね

瀬名:
この時クラークはダイビングにハマりつつあったんです
ロンドンからオーストラリアまで船で旅をした
その途中で書き始めた






グレートバリアリーフでダイビング仲間を作り、2人で海に潜る
その間に書き終えた そこが重要

海に潜ってみたら、目の前にこんな綺麗なサンゴ礁がある
こんなに美しい魚がいる
そしてバディがバックアップしてくれる

そういうのを宇宙に持ってったら
こんな綺麗な光景が見れるんじゃないか
こんなワクワクする冒険ができるんじゃないか
自分の中に具体的にイメージできるようになったんじゃないか

光:
宇宙を書くために生まれてきた人だから
どんなレジャーをしてても、宇宙ってこういうことか!て思うんだ
とても健康的!



7つの太陽と呼ばれる星系を旅したアルヴィンとヒルヴァー





彼らはやがて肉体を持たず精神だけで生きるヴァナモンドという存在に出会います
ヴァナモンドによれば、人類はかつて数々の異星人たちとともに
帝国を繁栄させていましたが

その後、銀河系の彼方へ冒険するものと
勇気がなくて地球に戻るものとに分裂
地球を選んだ人類がダイアスパーを作ったことが判明します





アルヴィン達が地球に戻ると
ダイアスパーとリスの研究者が協力し合い
両者の寿命の差など、平和のための課題が議論されていました




そして、ダイアスパーの住民が持つ
外界に対する恐怖心を克服するための実験が行われ
アルヴィンの教師ジェセラックが成功します







人類が一つにまとまりつつある中
アルヴィンの心境に大きな変化が訪れました


朗読
宇宙にはもう興味はありません
他の様々な文明がまだ銀河系に存続しているとしても
わざわざ見つけに行く価値があるとは思えないんです
しなければならないことは、地球にこそあります
それも山のように

地球が自分の故郷であることを僕ははっきりと自覚しました
もう二度と故郷を離れるつもりはありませんよ

(悟っちゃったよ



アルヴィンは地球を豊かな水の星に戻すことに専念し
もう二度と冒険に出ないと決めました

(そもそもなぜ地球は砂漠になっちゃったんだろうね


そして銀河の彼方に旅立った人類の元へ宇宙船を送り出したのです
アルヴィンはヒルヴァーとジェセラックを連れて
宇宙船でのラストフライトに出かけます
最後に外から見た地球の美しさを目に焼き付けたかったのです





朗読
船は極地の上空にあり、眼下の地球は完璧な半球となって見えていた
ジェセラックとヒルヴァーは、昼と夜を分かつ明暗境界線をみおろした





境界線のうち、真ん中から半分は日の出を
もう半分は日の入りを迎えている
彼らはいま、夜明けの地域と日没の地域を同時に見ているのだ

そこに込められた象徴は、あまりにも完璧であり
あまりにも強烈な印象をもたらすものだった
この瞬間の光景を彼らは生涯忘れはしないだろう



アナ:これまでのクラークとの違いはどこにありますか?

瀬名:
今までは、宇宙に出て行くということが重要視されていたが
今回は故郷に帰ってくるホームカミングの物語になっている

クラークはダイビングの旅に出る途中で
トールキンの『指輪物語』という長い小説を読んでいたことが分かっています
あれこそまさに行きて帰りし物語の典型作品なんですね





特別な使命を受けた英雄が外に出て
イニシエーション(通過儀礼)を果たして故郷に戻ってくる
実はアルヴィンという人は英雄だったんですね

ダイアスパーを10億年前に作った人が
ヤーラン・ゼイという(創始者)伝説の人物だったんですが
いつか自分の血を引くような
外に出て行きたいと思うような人が現れるべきだろうと組み込んでいた

都市のシステムの中に
英雄譚として読めるようになっている

光:
故郷を離れて都会に出ました 戻ってきました
俺は故郷のために働こうという人に
「だったら最初から出なくていいんじゃない?」ていう人もいる
でも力強い意思で出たからこそ故郷の良さが分かる

だからって全部いいってわけでもない
全て明るくキレイだろうということじゃなくて
暗いところ明るいところもあって
そこは時間によってすら変わってしまう

それが共存しているということ
自分はその風景を見て、何か気づいたことがあるから
みんなで見ようよ、ということだと思うんですけど

瀬名 :
今回のテーマの本当のユートピアとは何か?というところに繋がると思う
ダイアスパーって10億年も続いているわけですから
別に変えなくてもいいじゃんという考え方も当然ある
クラークはその方向を取らなかった

つまり本当のユートピアっていうのは
安定しているようだけれども
時々冒険に出ていく英雄がいて

その英雄が持ち帰った物語が
また少しずつ世界を変えていく

それが本当のユートピアの姿なのではないかと思うんです

光:
僕が漠然と思うユートピア像って変化の工程
ぐるぐる回転している状態がユートピアだと思うから

「また同じことを繰り返しているな」と思いながら
螺旋階段みたいなものを少しずつ上がって

一番上から自分の通ったところを見ると
とても美しい人生だったなと思う
それが多分人生なんだろう思うんですね

最後に地球を描写した見ている感じは
とてもそれに似ています

「ほら綺麗だろう みんなが混ざり合っている その全部が綺麗じゃん」
っていうのは心を打たれます


最終回につづく・・・






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