メランコリア

メランコリアの国にようこそ。
ここにあるのはわたしの心象スケッチです。

『あれはだれの歌 やなせたかし詩とメルヘンの世界』 やなせ たかし/著 瑞雲舎

2021-01-02 14:15:57 | 
「絵本・児童書」カテゴリー内に追加します



SNS かどこかで知った詩が
この本の中にあると分かって借りてみた

最初は四コマ漫画から始まり



 



その次、詩が並び
てのひらを太陽に もやなせさんの作詞だと知ってびっくり






カップルのロマンチックなイラストが何枚か入り






「チリンの鈴」と言う物語があり

他にも本格的な絵画もあったりして
とっても盛り沢山で
やなせさんの才能の豊かさが改めてわかる貴重な一冊

学生時代、『詩とメルヘン』にも
たしか詩を送ったことがあることを思い出した
載らなかったけどw










【内容抜粋メモ】

どこから来たのですか
ミスターボー

どこへ行くのですか
スターボー

あなたはもしかしたら
変な話ですが
僕ではありませんか

生まれた時は一人だったし
死ぬ時もひとりだもの

今ひとりだって寂しくない

いやちょっと寂しい
なぜだろう








端っこの端っこ
青い夜空の

端っこの端っこ
一番端っこに
行ってみたい

端っこの端っこの
もうそこから
何もない

そんな端っこの端っこに
行ってみたいな








悲しみは古い仲間
そこにいるのは悲しみか

霧が深くて見えないけれど
こっちへおいで悲しみよ

僕に涙をわけておくれ


ひとりぼっちの悲しみよ
辛い心でうなだれてるね

仲良くしよう悲しみよ
僕とお前は古い仲間


(ネガティブな悲しみも自分の一部だと
 ちゃんと認めてあげることが大切だと教えてくれている



「えらくなっちゃいけない」

(この詩が読みたかった

   星のいのちにくらべれば
   ぼくたち みんなちっぽけな
   ほんの はかないいきものさ

   お金もちでも えらくない
   えらい人でも えらくない
   みんなだれでも えらくない

   えらくなっちゃいけない
   みっともない

   ひとときだけの このいのち
   きずつきやすい こころなら
   ふゆかいなことはしたくない
   ひげをはやしても えらくない

   えらくなっちゃいけない
   みっともない

   ちいさなちいさなゾウリムシ
   めにもみえないプランクトン
   それらもみんな仲間たち

   名もないひとのその中で
   名もないひとでくらしたい

   みんなだれでもえらくない

   えらくなっちゃいけない
   みっともない





「チリンの鈴」






あるところにとても平和な小さな牧場があった
そこに今年生まれたばかりの子羊が1頭いた

お父さんにもお母さんにも
目の中に入れても痛くないほど可愛がられていた


牧場の北のほうに岩だらけの恐ろしい山があり
全身真っ黒で傷だらけのウオーという狼が住んでいた

あれは何が吠えているの?

狼のウオーが柔らかい羊の肉を食べたいと言って鳴いているんだ
クローバーの葉のほうが美味しいのに


ある夜ウオーはチリンの牧場にやってきた
番犬たちは喉を食い破られ
ウオーは羊たちを皆殺しにしてしまった

チリンは穴の中に隠れていた
チリンの上にはお母さんが体で蓋をしていた
お母さんもお父さんも死んだ

チリンは血まみれのまま叫んだ
どうして僕たちは殺されるんだ
何もしなかったのに


谷間の秘密の隠れ家でウオーは昼寝をしていた
狼にとって食事をするたびに
命をかけなければならないのは辛かった


僕は子羊のチリンだ
あなたが好きだから後をつけてきたのです

お前はバカだな
羊は狼にとってはにぎりめしかサンドイッチみたいなものだ

僕はあなたの弟子になりたい
僕も強い狼になりたい


傷だらけの狼の心に温かいものが流れた
自分以外に誰も信じないで生きていたウオーは
チリンを可愛いと思った


人間の近づけないようなところにいなくては
狼は安心して眠れない
見つかり次第殺される
狼は嫌われ者だ


狼のような強い動物になるため
チリンは毎日稽古をした

卑怯で、ずるくて、悪賢くて
勝つためには手段を選ばない
チリンの武器は鋭い角だった


3年目には羊じゃなかった
全身灰色で、まるで角のある狼のような
凄まじい動物に変身していた

黙ったままその槍のような角で
相手をグサリと突き刺した






僕はむしろ悪党になりたい
惨めでこそこそしている善良なやつより
血まみれの悪党のほうが立派だ


俺は長い間一人だった
しかしお前という仲間ができて、生きる張り合いができた

俺は今でも世界中誰も信じてはいない
しかしお前だけは心の底から信じている


これからもずっと一緒だ
お互いの顔も種類も違うが
死ぬときは一緒と誓おう

誓います


チリンの鈴の音を聞いただけで
どんな動物も震えておののいた


ある日、ウオーはチリンに言った

今なら昔の仲間の羊の牧場だって襲撃できるだろう
久しぶりに羊の牧場を襲おう


ここには4頭のシェパード、6頭のコリー
3頭のセッター種の犬がいる

そしてライフルが3挺
失敗すれば命はない

お前が犬を引きつけて戦っている間に
俺は牧場の中心まで一気に突進する


狼は一度も明るい灯りの下で
ゆっくり食事をしたことはない
これが狼の夜食だ
死ぬか生きるかだ


牧場の近くの草むらから黒い影が躍り上がると
ウオーに飛びかかり、胸に何かが突き刺さった

ウオー、死ね

俺を裏切るのか

僕はこの日が来るのを待っていたんだ
僕のお父さんもお母さんも
お前にやられて死んでしまった


いつか俺はこんな風にして
どこかで野垂れ死にすると思っていた
でも俺をやったのがお前でよかった
俺は喜んでいる



チリンの目から大粒の涙が溢れていた
敵をとったのに僕の心はちっとも晴れない
それどころか今は悲しみでいっぱいだ

(戦争と似ている
 どちらも毎日を一生懸命生きるためにと言う理由で
 殺したくもない相手を殺さざるを得ない時代


いつのまにか僕はウオーを好きになっていたんだ
許してくれウオー
お前が死んで初めて分かった

チリンはウオーの死体を埋めると
泣きながらどこへともなく山を越えて行った


春が来ても、どこにでも死闘はある
小川の流れの中にも
つるバラの茂みにも
タンポポの葉の下にも

何かが生きて
何かが死んでいる



僕は元の羊に帰ろう
牧場で仲間と暮らそう

しかしどこの牧場に行っても受け入れてもらえなかった


僕が君たちを救ったんだぞ

帰りなさい
ここはお前のような血の匂いのするヤクザものの来るところではない


何がヤクザだ
自分で戦うこともしないで
人間や犬に守ってもらっている卑怯者のくせに


チリンが小川に映った自分の影を見て思わず叫んだ

ウオー、お前生きていたのか

それはウオーにそっくりになっていた自分の影だった
狼でもなければ羊でもない
何か得体の知れないぞっとするような生き物だった

自分が世界中でたった一匹の
本当のひとりぼっちになったことに気づいた

チリンの鈴の音は時々聞こえたが
姿を見た者は誰一人いなかった








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