メランコリア

メランコリアの国にようこそ。
ここにあるのはわたしの心象スケッチです。

『キレイ』

2007-04-12 13:15:40 | 演劇・オペラ
『キレイ』@シアターコクーン(2000)
作・演出:松尾スズキ
出演:奥菜恵(ケガレ)、南果歩(ミサ)、古田新太(ダイズ丸)、片桐はいり(カネコキネコ)、
   秋山菜津子(ダイダイカスミ)、阿部サダヲ(ハリコナ(少年))、宮藤官九郎(ジュッテン)、
   松尾スズキ(カネコジョージ)、篠井英介(ハリコナ(青年))ほか

新宿TSUYATAにはなんとっ!演劇のコーナーもあった
2005年に鈴木蘭々がヒロインを務めた再演を観て、その5年前のこのキャストver.の初演を
ずっと観たかったんだよね。
舞台もライヴも本来は一過性のアートだからこその醍醐味を味わうべきなんだろうけど、
たくさんの知恵と力を合わせて苦労して創りあげたものをこうして永遠に形として残すこともまた
当時見逃したファンにとっては有り難いこと。
今まで演った大人の劇も全部DVD化してくれないかなあ!

お馴染みの大人メンバに合わせて、カスミ役が同じ秋山菜津子さんなのがめさ嬉しい!

♪それが本当のわたし 本当のわたしはどうしようもないの
 だからここにいないあなたが好き

 あなたは愛するわたしの不在を
 これが恋なのか(たぶん恋でしょう)
 ここにいないあなたが死ぬほど好き
 わたしも死ぬほどここに居ないから
 
 本当のわたしはそこにいないの

って歌う秋山さんとバイト君のシーンが1番好き。深い。理想と現実のギャップを埋められずに
自分も相手もお互いが騙しつづけている恋愛疑似体験。分かる、分かる

古田新太のダイズ丸もひと味違うw 篠井と南果歩の芝居は急にグレードアップして戸惑うがw
でも、全体的にはやっぱり'05のほうがキャストもしっくりきて、散りばめられたギャグのテンポもよくて、同じストーリーでもより締まってた気がするな。

それにしても何度観ても今作は深い。松尾部長の深淵なる天才マルチ頭脳の中身を一度
ぜんぶぶっちゃけて見てみたいが、きっと理解できないままだろうw

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『浮雲』

2007-04-12 01:04:08 | 映画
『浮雲』(1955)
原作:林芙美子 監督:成瀬巳喜男
出演:高峰秀子、森雅之、中北千枝子、岡田茉莉子、山形勲、加東大介、千石規子ほか

「花のいのちはみじかくて、苦しきことのみ多かりき」

成瀬巳喜男の代表作といわれ、日本映画としても金字塔的今作は、ずっと前に出かけ先の
ビデオショップで見かけて借りていたとばかり思ってたけど、観てなかったみたい
原作者の林芙美子と言えばこないだ観た同監督・同女優の『放浪記』の女性だ。
意志薄弱なプレイボーイに翻弄されて、好きでもない男を遍歴する女の哀しい姿は
自らの体験も重ねているのだろうか。
小説ならもっと細々した時代背景、状況説明や感情の流れを掴めるだろうけれども
2Hの長編映画とはいえ全て汲み取ることが出来ないが、何十回も観るに耐えうる
やはり素晴らしい作品だなあ

なにせ相手が森雅之じゃ、遊ばれて捨てられても文句が言えないくらいステキすぎる!!!
美人と見た瞬間に手を出す早さは並じゃない浮気者で薄情な男役なのに森の憂いを帯びた
ダンディズムには悪人の印象を受けないからフシギ
そんな輩にいつまでもくっついていく女のほうが悪いって言いたくもなるほどw

高峰秀子が可憐な淑女から売春婦、自分を貶めた男の妻にまでとことん堕ちる役も
リアルに演じてお見事としかいいようがない。
情念とも執念とも言えるほどの愛情を持ちながら、相手も自分も冷静かつボロクソに
けなすセリフの数々がときに滑稽に思えるほどw
”最後までいっしょにいたモン勝ち”とでも言いたげなラストの女の表情は恍惚として
むしろ幸せに見えるのとは逆に、今まで虐げてきたのに結局、彼女を唯一心の
拠りどころとしていて、失った存在の大きさにやっと気づいて肩を落とす男の背中が対照的。
でもこの物語で一番の犠牲者が誰かって考えたら、男の妻じゃないかなあ。
ゆき子はなんだかんだゆってもバイタリティ溢れる女性だったけど、奥さんは夫が
海外転勤中も浮気してたのに気づかず(手紙はマメに書いてたみたいだから)
遠恋中が唯一一番幸せだったと思う。

ダンサー志望の岡田茉莉子の妖婦的メイクにも注目大w
商売上手な醜男役をやらせたら右に出る者なしの加東大介も素晴らしい役者さんだ。
都心から人里離れた温泉地の伊香保、ラストは屋久島まで舞台の移り変わりも見どころ。

改めて戦後間もない日本て、ほんとにみんな今日を生き抜くためにはなんでもありの
生活をしてた想像を絶する混乱期だったんだな。

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