「日々これせっせとお薬作り」 -製薬会社新米研究員SIUの日常-

新薬の研究に営む毎日・・・のはず。製薬会社研究職の日常をつたない文章でつづります。

『新しい薬をどう創るか――創薬研究の最前線』

2007年07月01日 | 製薬会社な日常
自腹で買った創薬関連本を採点して見ようのコーナー!です。

今回、読んだのは…

『新しい薬をどう創るか――創薬研究の最前線』
京都大学大学院薬学研究科編 講談社ブルーバックス B-1541 2007年4月刊
 1040円


「はじめに」と「おわりに」を読んでみて伝わってくるのは
この本はサイエンスを学ぼうとしている若人たちに薬学の魅力
特に創薬の魅力を伝えようとしている本だということ(…たぶん)

というわけでそこを講評のポイントとします。
薬学部を目指す高校生や進路を迷っている高校生に
とってもお勧めしたい本かというと…
SIUの答えはNoです。理由は2つ。

1.高校生には内容が難しい
2.ストーリー性が乏しい

1.について
サイエンスとしての正確さを重視したためか、
高校生向けとしては内容が難しい。
もちろんこの本の内容を比較的容易に理解できる高校生もいるんでしょうが
少なくともSIUの高校時代なら、いや大学の学部時代でも半分読まずに
投げ出す自信あり_笑(SIUの出来が悪いのももちろんある)

また各章で違う著者が自分の専門について書いているため
各章が始まるために新しく内容を理解する必要が出てくる。
これも理解を難しくしている一因かも…
ただし各分野で正確な最新の情報を得られるというメリットも
あるので教科書的な意味ではいいのかもしれませんね。

2.について
各章がきっちり分かれていることによって正確性は保たれているのかもしれませんが
研究現場の熱やら汗やら情熱とかそうゆう物は伝わってきません。
やっぱり良い意味でも悪い意味でも教科書的。
大学の授業ってこんな感じですよね、きちんとノートを取る人にしか
わからないというか…、はっ!SIUが不真面目な学生だったから
点数が辛いのか?(笑)

あくまで好みですが、一つの薬ができあがるストーリー的なものがあったほうが
若い人たちを引き付けるのではないかと思いながら読みました。
自分がそこに参加するイメージもしやすいし、興味も湧きやすい気もしますが。
もしかしたら企業に在籍した経験のない大学の先生が寄稿されている章も
あるのかもしれません。大学と企業とでは同じ薬に対する研究でも
大きく異なりますしね。
そのような意味ではやはり「ドネペジル」を作った杉本八郎氏の
「日本発 世界が驚いたアルツハイマー病治療薬の開発」は面白かったです。

<まとめ>
もしこの本の目的が若い人たちに薬学に対する興味を増してもらうためなら
正確さは減少させても、実際に働いている人たちの熱が伝わるような
内容のほうが良かったのかなと思います。
もちろんそのような意図で作られた本でなければ、この講評は的外れですので
読み飛ばしてください。

<追記>
高校生・大学生・大学院生の方で製薬会社における創薬の現場を
イメージしたい方には下記の2冊をお勧めします。

新薬創製のためのホームラン打法―国際化時代にあって日本の製薬産業は大リーグで通用するか 山口 勇 (著)
¥ 3,675 新興医学出版社 (2001/07)

創薬物語―貧乏力 (単行本)
伊藤 正春 (著)
¥ 3,150 (税込) 新興医学出版社 (2005/12)

将来的、SIUも本を出せたら、多少は皆さんのお役に立てるかもしれないのに(笑)

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